第3話 人気な元カノの困難〜後輩ちゃんを許さない〜
私は白鳥奏。Vtuber白崎ナコミとして、『We Tube』で活動している。実際今も配信中で、今日は毎月恒例の恋愛相談(私が)企画なのだが……。
(どうしようこれ……)
私はリスナーと雑談しながら、配信中に届いた一件のメッセージを開く。送り主は天野雪、中学の頃の後輩で今年の春にうちの高校に入るらしい。容姿は自分でそれなりに可愛いと自負してる私ですら、羨むような子だったのが、いかんせん性格が悪すぎた。人の彼氏を狙うくらいには。
さて、そんな後輩からどのようなメッセージが送られてきたのかと言えば、2000字ほどの『お願い』である。
明らかにメールで送る文字数ではないでしょ。
私はリスナーに一言断りをいれてからミュートにして、その嫌がらせめいた『お願い』を読み始める。
そして、数分後、やっと読み終わったのだが……、私なりに要約した一文がこちら。
『先輩と一緒にVtuberやるので、できるだけ、さりげなーく宣伝してくれませんかね?』
はぁ〜、これだけのことをここまで書ける文才に驚けば良いのか、それとも怒れば良いか……。
まぁ、今は宣伝内容を考えよう。
と、言っても…、どうやって宣伝しよう……。もし、雪一人だったら、別に宣伝する必要はなかったのだが、先輩がいる。この先輩がどの先輩をさしてるか分からないほど私も鈍くない。私の元カレ———
というか、御影Vtuberやるの⁉︎あの御影が⁉︎何に対してもやる気がなさそうなあの御影が⁉︎
うわー、失敗したわ。まさか、御影がやるなんて。私も誘っとけば良かったかな……?
というか、よりによって何で雪なんかと⁉︎確かに顔と声は凄く良いし、人当たりは私以外にはかなり良いから御影が一緒にいて楽しいのも分かるけど!それでも—————!
しかし、私はそこまで心の中で羅列したところで、ある重大な事実に気づく。
……あれ?もしかして、私、雪に勝てるところない?
……いやいや、そんなわけないでしょ。流石にね?そんなわけが……、そんな…わ、けが……。
……………。
よし!この話はやめておこう!わざわざ誰も幸せにならない話なんてしなくても良いにね!
とりあえず、今は宣伝を考えないと。私はそう思い思考をめぐらせるが、何も思いつかない。最終的に面倒臭くなった私は、「もう、適当でいいか」という結論に辿り着く。
……文句を言われたところで知らん。宣伝するだけありがたく思って欲しい。
リスナーからの心配のコメントがちらほら出てきたところでミュートを解除して一言謝罪し、先ほど通り雑談を続ける。
そして、話の区切りがついたところで、まるで今思い出したかのように、「あっ、」と私はつぶやく。
「そういえば、件の元カレVtuberになるらしいよ。名前は……何だったっけな?えっと、あ、そうそう、ジン・ノービルと、メア・ホワイトだって」
・マジで!?
・これは……見るしかねぇ!
・二人?どゆこと?
・二人いるのと性別違うのってどういうこ
と?
「あ、これね。なんか、後輩の女の子に誘われたみたいで、それでやることになったらしいよ。Vtuberになる、って連絡くれたのもその子だったし。」
私はコメントからの質問に対して、さっきもらったことを伏せながら話していく。流石に配信中に連絡してきたのを話すのはあからさますぎるだろう。
・なるほど。
・あー、だからか。
・おや、これは修羅場の予感?
・元カレくんって声かっこいいの?
「ん、声?声はね、すごいかっこいいよ。私の聞いてきた中では一番くらいに良かった。容姿とかは可もなく不可もなくって感じだったんだけど、声は、声だけはすごくかっこよかった。うん、そう。声は良かった!!あ、もちろんそれ以外も好きだったよ?特に性格とか。」
・お、おう…
・もしかして、惚気られてる?
・ナコミさん、オタク出てますよ
・まぁ、声フェチのナコたんがつきあって
たわけだしな
・さりげなくディスられる元カレくんかわ
いそす
そうなんだよねー。声はすごくかっこいいんだよね。好きな理由の4割は声の良さかな、って言えるくらいには。
「まぁ、それはともかくとして、元カレがVtuberなるよ、っていう話でした。あ、あと、後輩ちゃんは許しません。」
はぁぁ、まぁ、こんな感じでいいかな?ちょっとミスっぽいところもあったけどこれで良いでしょ。しっかし、わりと危ない方法な気がするけど大丈夫なのかな……?まぁ、その辺は本人たちに任しとけばいいか。
でも、もし御影たちが人気になったらコラボできるってことだよね?楽しみだなー!雪がいるのは少し問題だけど。まぁ、そこはあとでなんとでもなる。
私は御影と楽しくコラボ配信をできる日を願いつつ、引き続き雑談を続けるのであった。
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