第24話タイラントレックス
「――――ケヴィンさんッ!!」
俺は即座に待機させていた回復魔術を発動させようとするが……弓術士のジョージさんが、ケヴィンさんに短杖を向ける俺の手首を掴む。
「無駄だ。タイラントレックスの攻撃をまともに食らってしまえば、幾ら舶来品を装備していようとも無事ではすまんよ……生死不明の者よりも戦える者を癒せ……戦場では命の価値は戦える者の方が重いのだ」
「――――くッ!」
俺は奥歯をグッと噛み締める。
「せっかく溜めた魔術を無駄に使うなと言っているだけだ。出来るだけ早く倒せばまだ間に合うかもしれない……」
その言葉には「助けたい」と言う思いを感じる。
「爺さん……」
「勘違いするでない。無駄な魔力を消費して攻撃が出来ないなどと言う、本末転倒な事にならぬように指導しただけじゃ」
「
ジョージさんは背中に背負った矢籠から矢を一本引く抜くと、タイラントレックスを見ながら斜に構え左の足をレックス側にして、左右の足を半歩ずつ開き重心を腰の中心辺りにおく、コレを弓道では『同造り』と言う。矢には三枚の羽が付いているこれはライフル銃の
何て速さだ。
ゲームのキャラクターの速度を遜色ないどころかそれよりも早い。これが熟練された老兵の実力か……
そのまま
「【ショックインパクト】!」
老騎士が選択したのは、相手の体制を崩す効果を持った攻撃スキルだった。
「上手い」
俺は思わず感心ししてしまう。
鏑矢ではないため大きな音では無いものの、それに似た
「グギャァァアアアアアアアッ!」
タイラントレックスはさらに大きな鼻先を射られ、首を強制的に逆向きに向かされる。俺は追い打ちに待機させておいた火球を顔面と脚に目掛けて放つ。
雁股は飛んでいる鳥や疾走する獣を射切るのに使用されるやだが、この鏃は違う。ダムダム弾のように潰れている事で衝撃を与える事を目的にしており、例えば腹に当たれば内臓にダメ―ジを、骨に当たれば骨を砕く事を目的にしているため多くの人がイメージする『尖矢』や (三角形で先が尖っている形状の鏃。目標物を射通すために作られ、貫通力の高さで威力を発揮する) 『平根』 (身幅広く扁平で重ねも薄く、両側が刃になっている形状の鏃。射切ることを目的とし、主に狩猟などに用いられる) とは違い貫通する事を目的としていないのだ。
「見たか小僧ワシの三人引きの強弓を! 昔は五人引きを使っておったが年には勝てんわい……それと
昔何かで見た情報だが長弓に分類され威力が低いと言われる和弓でさえも、弦の重さは平安時代30㎏現代弓道で15㎏と重く、五人張りと言われる強弓であれば鉄板を4,5枚は射貫くと言う……これは多くの拳銃で使われている9㎎パラベラム弾と同程度の威力であり、もしかしたらピストルよりも殺傷能力は高いのかもしれない。
実際問題。初期ライフル銃が登場した当初は命中性、速射性、威力、射程共に弓に劣っていたと言われており、最大射程距離は90メートル有効射程は50メートルほどと言われており、現代のバランサーやレーザーサイトが付いた競技用の弓でも国際大会では、28メートル60メートルの二種目に分かれているため、この老兵の凄まじさが分かる。
「今呼ぶよ!
余りの弓の威力に驚いてしまっていたが、爺さんの言葉でやるべきことを思い出せた。俺は悪態を尽き魔力を込めて、警護を任せていたゴーレムを呼び出して前衛の片手剣士のマイクと戦斧使いのヴォーギンの方へゴーレムを動かす。
洋の東西を問わず、弓は特権階級である。貴族や騎士・武士にとっては重要な武器だった。古代ギリシア神話のトロイヤ戦争における決闘では、最初は弓で打ち合い。槍を投げ合い最後に斬りあうと言う形式だった。平安時代の戦争でも、弓で打ち合い最後には近接戦で鎧通しで突き殺すと言う、戦闘形式をしていたので戦国武将。今川義元は『海道一の弓取り』と言う異名で知られている通り、武士にとっては剣術よりも馬術と弓術が重要視されていたと言う証明に他ならない。
それはこの世界でも同じみたいで剣術や槍術よりも馬術……この世界では走竜や走鳥などがいるので、それら全般の訓練が多かったため槍と剣は後回しになったのだが……
鏃に毒でも塗ってあったのか、タイラントレックスの動きが鈍くなる。
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【あとがき】
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