第8話お仕事



 前線都市アリテナは、まだ王国と隣国が一つの国……超大国だった頃から存在する西と東を繋ぐ貿易の中継地点であり、ゲームでは北からのモンスター進行を食い止める。砦としての役割も持つとして登場した都市だった。


「現在アリテナは、商人や冒険者と言った有力者の合議で都市を運営すると言う、合議制議会と言う形態を取っているだから、公爵家の統治を嫌う色がある……まぁ奴らの気持ちも分からなくはないが、王国国民であるのなら王国の法が認める我ら、ロシルド公爵家の統治を受け入れなくてはならい!」


 あーなるほど。アリテナは立地として、王国と皇国両方にいい顔が出来るポジションにいる。琉球王国のように大国と大国の間で風見鶏と言うか、蝙蝠外交をやっていると言ったところだろう……

 王国には「皇国に寝返るぞ!」 と言って譲歩や金を巻き上げ、皇国には「王国から抜けるから金を寄越せ!」 とでも言って甘い汁を吸いながら独立性を確立しているのだろう……目障りだが、潰すには力が大きく惜しいと言う理由だけで、長年生き延びているのだろう。

 そこに最強の個人武力を送り込む事に対して、少し浅はかとは思うが人間など約100年程度で問題の勇者は死ぬので、大きな問題とは考えていないようだ。


「そこであの町に首輪を着けるため、代官とこちらの息のかかった冒険者を送り込もうと思うのだが、生憎と俺は忙しい……愚妹にも冒険者の選定を任せているが何よりも数も欲しい……そこでお前には村々を回り食い詰めた農家の子供達を集めて来て欲しいのだ」


 町の人口がどれぐらいかは知らないが、一気に人口を流入させて町を分断し表面上の統治をしやすくするつもりなのだろう。

 やり口が現代でも問題視されている。静かな侵略サイレントインベーションと呼ばれる半同化政策や、先進国には必ずある〇〇人町と言った手口に近く、古くは紀元前のアレクサンドロス大王の政策に似ている。

 ただし時間をかけずに行うこのような無理やりな浸透政策は、極度の治安悪化が懸念されるので、できれば少数にしたい。

 会社でも集団転勤の方がその集団だけで固まってしまい。元々そこに居たスタッフとの仲が深まりずらいと言う経験がある。

 中世の東方開拓や青年十字軍をやれと言われている訳か……まぁ地獄へご案内って感じか……


「お兄様は、どれほどの移住を考えられているのでしょうか?」


「ほう。目的は冒険者を増やす事ではなく、移住させる事だと気が付いたか……あの女教師が優秀なのだな」


 こうやって褒められると、何となくズルをした気分になる。


「領内全域で行けば、今はまだ食べていけるが……例えば飢饉や災害、戦争が起こる事を想定すれば、食べていく事が出来ない民草がでる……余剰人口などは数万を軽く超えるだろうな。それ故に開墾や新天地に人員を回すしかないのだ」


 なるほど、人を持っていけるだけ持っていきたいと言ったところか。


「それでは税を納める領民が減ってしまいます」


「分かっている。あくまでも領内全域ならばの話だ……現在ロシルド公爵家の領地は、長男家の俺イオンと愚妹のリソーナ、次男家の二人と公爵閣下の五人で領地を五分割して統治している」


 これは俺の記憶にもある。長男家と次男家の所有領地はロシルド公爵の5分の3で、残りの2割は現公爵である閣下一人で所有している。

 領地の1.5割しか持っていない長男家や次男家が反乱を起こそうとも、それを上回る領土と庇護貴族のいる閣下の領地では、文字通り天と地ほどの戦力差がありこうして競わせる事で、意図的に優秀な跡継ぎを作り出しているのだろう。

 まぁ巻き込まれる領民としては、溜まったモノではないだろうが、四半世紀に一度起こる蟲毒にほうり込まれるお兄様たちも、被害者と言えば被害者だ。


「次期当主として選ばれるのは、公爵閣下にとっては孫である我ら4人の嫡子から次期公爵が決定する」


 なるほどこの政策も、アリテナと言う問題のある土地を見事優良物件にしましたよ! と言う実績が欲しいからそういしているのだろう……だからアリテナ行の船で貧乏と描写されているハズの主人公が、船賃を気にせずに新天地アリテナへ旅立っていたのか……


「なるほどより公爵閣下に気に入られた候補者が、次期当主と言う事ですか……」


「その通りだ。お前は閣下には嫌われているが、公爵の尊き青い血を引いている。領民のため、いや。国のために奮起して働いてほしい。期間は約半年だ」


「お兄様のために粉骨砕身身を粉にして、働かせて頂きます」


 前線都市アリテナへ行くのは早くても半年後……つまり俺は半年程度で主人公を守って死ぬ運命を乗り越えなくてはならないのか……


「頼んだぞ」


 こうして俺は、領内の自由通行権と武器・防具を手に入れた事で効率的に、自分自身の強化が出来るようになった。




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【あとがき】


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