第78話 四天王、火のノルレンゴース③

 ノルレンゴースは、僕が叩き落した槍を拾いそして構える。シャルリエーテ様の歌の支援魔法も完了し、僕の準備も完了だ。


「地獄を見せてやる」


 そうノルレンゴースは言い、詠唱を始める。詠唱を聞いてナルメシアさんの顔色が変わる。


「一旦引くわよ」とナルメシアさんは僕たちに指示をだす。


「何故です? 今、逃げてどうするんです!」


パンッ! と軽く僕は頭を叩かれる。


「冷静になって。あれは禁呪。このあたり一帯がマグマに飲み込まれる。距離をとるわよ」

 

と言って走り出す。


 マグマって一体? と思ったけど、ナルメシアさんの後を追う。その数秒後、黒い泉の辺りだろうか? その辺りから大量のマグマが噴き出した。 


 周辺一帯をマグマが覆う。こんなの規格外もいいとこだろう! 天変地異じゃないか。逃げるしかない! 


 僕たちは全力で逃げた。歌の支援魔法のおかげだろうか。追いかけてくるマグマからもなんとか逃げ切ることに成功した僕たち。


 そこで、アッと僕は気付く。


「シャルリエーテ様、強化魔法を両手両足と特に両目に魔力操作してみてください。それができたら、相手をしっかり見てください」


 首をかしげつつも実行してくれるシャルリエーテ様。そこへノルレンゴースが現れる。


 ノルレンゴースは有無を言わさずシャルリエーテ様を攻撃してくるけれど、その攻撃は僕が防ぐ。そしてシャルリエーテ様がカウンターを綺麗に入れる。


「見えますわ!」


とシャルリエーテ様の喜ぶ声が聞こえる。


「分かりました! 歌の支援魔法をお願いします! これからが本当の戦いです。3人でノルレンゴースを倒すんです!」


と僕は気合いを入れる。何事かと不思議そうな顔をしているナルメシアさんに軽く説明した。そして


「ここにいる全員が戦えます! ナルメシアさんの補助に僕たちは回ります。ノルレンゴースを思いっきり攻撃してください。自分の身を守れないメンバーはここにはいません。安心して全力で攻撃してください!」


 周囲のマグマは動きが緩やかになっている。周りを注意しつつの戦いになるだろう。いざとなったら僕がシャルリエーテ様を助ける。その心積りだ。


 ナルメシアさんはノルレンゴースとの間合いを一気に縮めて斬りかかる。僕たちもその攻撃に合わせて別々の個所を狙う。


 二か所を同時に狙い続ければ普通は回避を選ぶことが多い。案の定、ノルレンゴースは回避を選ぶことが増えていった。


 そして僕はその行動パターンを推し量る。ノルレンゴースが選びやすい選択が回避となるなら回避した後どこへ移動するかだ。


 ナルメシアさんは右上から袈裟斬りを仕掛け左から横に薙ぎ払い、後ろへ逃げた相手へ追撃する癖がある。僕はその癖を逆に利用してナルメシアさんから一本取った。


 それなのにナルメシアさんはその癖をなおしたはずのに、あえてノルレンゴースを相手にその動きをしてみせた。そして僕を見て無言で頷く。それを見て僕はナルメシアさんの意図を理解する。


 その後は攻防を繰り返す。僕は無詠唱で魔法を繰り出し、相手の行動の邪魔をしてナルメシアさんの援護に徹する。ナルメシアさんは一撃必殺ともいえる攻撃をどんどん繰り出す。


 シャルリエーテ様だって今は相手の動きが見えるのだ。シャルリエーテ様は攻撃を仕掛け、自分の身も守りなおかつナルメシアさんの援護をしてみせる。


 シャルリエーテ様は歌の支援魔法もしながら立ち回る。シャルリエーテ様が歌を歌っている間はシャルリエーテ様の護衛は僕がする。ほぼ無防備になるからだ。歌っている間は立ち回りがうまくできないし隙だらけになる。


 元々、僕たちがいない方がナルメシアさんは心配することがないのだから、生き生きと攻撃を続けている。ノルレンゴースもやりにくそうだ。


 僕たちは3人がかりで攻撃を同時に続けノルレンゴースの体力を削り続けていたけれども、そろそろ歌の支援魔法が切れるころだ。ナルメシアさんと目と目が合う。


 仕掛けるなら今しかない。そう思った意志が伝わったのかナルメシアさんが癖の通り右上から袈裟切りを仕掛けた。


 それを見て僕は動く。シャルリエーテ様もナルメシアさんの邪魔にならないようにノルレンゴースに攻撃を同時に仕掛ける。


 そしてナルメシアさんは左から剣を横に薙ぎ払う。そうしたらノルレンゴースは必ず後ろへ逃げるのだ。だからこそ、僕はそこを狙いノルレンゴースの首を狙って水平にカラドボルグをぎ払う!


 ザンッ!と音を立ててノルレンゴースの首は吹き飛び、身体はその場に崩れ落ちた。


「お、俺がこんなコ……ゾウ……に」


と言葉を発したノルレンゴースだったけど、首も身体も燃えあがり何も残さず消えてしまった。


僕とシャルリエーテ様とナルメシアさんはそれを見てパンッ! と手を叩きあい勝利を喜びあうのだった。

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