第58話 ヴォラス魔法学校リーダー、タービ戦②

 僕たちの拠点の上からもカガリ先輩を筆頭に攻撃魔法を常にしかける。それに対してしっかりと防御魔法で対応してくるヴォラス魔法学校の生徒たち。


 カガリ先輩に至っては城を飛び出し敵の頭上から攻撃魔法を撃っていた。けれどヴォラス魔法学校はそれでも止まらない。止まってくれない。


 そしてそこへ突進してくる生徒がいた。膠着状態を嫌ったのだろうか。そしてその生徒が力任せに殴る蹴る。殴るたび蹴るたびに、『ドーーーン』と地面が揺れる。拠点がきしむ。耐える。けれど僕たちの拠点は悲鳴を上げている。


 ヒビが入る。僕たちは土魔法で補強し、カクター君がさらに固める。


 そんな抵抗もむなしく、ヒビは大きくなり「ドカーーーン!」という爆発音ともについに大きな穴が開いてしまう。


「おや。ご機嫌よぅ。」 


 そこには背水の陣のユニークスキルの持ち主であるリーダー、タービさんがいた。黒髪黒目の細身の男。狐のような細い目が特徴的で口の端を吊り上げ話かけてきた。


 血まみれで話しかけられてもホラーでしかないんだけどと思いつつ、


「お帰りください!」


と土魔法攻撃をしかけついでに壁をさらに土で覆い、もう一度僕たちは穴をふさぐ。


 みんなで一斉に穴を補修していると「ド――――ン」と大きな音がした。連続して大きな音が響き渡る。今度は別の場所に穴を作られたようだ。


 背水の陣が発動してからどれくらい? 早く効果が切れてくれと祈りながら待つ時間は、遥かに長く感じられた。


 けれどここがタービさん率いるヴォラス魔法学校の生徒とエルバラン魔法学校の生徒の決着をつける最後の戦い。そして分岐点だ。


 こちらは武闘派集団が迎え討つと思いきやシリス先輩が前に出る。そして聖女の固有魔法をみんなにかける。


 さらにツーマンセルごとに各々強化魔法をかける。固有魔法と強化魔法の素早さアップの効果はお互いを打ち消さず両方とも効果がある。普段とは比べ物にならないスピードで動けるようになる! シリス先輩が


「いくわよ! ここが正念場よ、気張りなさい! 3年生の底力みんなに見せるのよ!」


と叫ぶ。


「「「おう!」」」


と代表メンバーのみんなが応え戦闘が始まった。


 最初は僕たちが押されていた。その理由は簡単で。自分たちの動きが早すぎて対応するのにちょっと時間が必要だった。けれど全てが適応すれば、相手の動きは余裕でさばけるといって良いレベルだった。


 確かに攻撃力アップは怖い。攻撃を受ければじり貧になる。素早さのアップの強化魔法を魔力操作して、さらにシリス先輩の固有魔法で速度が跳ね上がっている。


 敵の攻撃を回避しダメージを与え倒す。それでもヴォラス魔法学校の生徒は倒しても復活してくる。


 けれど、そのマジックの種の正体は実はとても簡単だ。昨晩、必死に考えて分かったのはちゃんとルールにのっとっているということだった。


 団子状態で攻め込んでくるのもルールを適用しやすくするための作戦だ。つまりルールと照らし合わせるとこの作戦がみえてくる。


 まずは②のルール。リーダー以外が戦闘不能になった場合ペナルティで3分動けない。3分経ったときバッジを取られてなければ競技に復活できる。


 そして⑩のルール。戦闘不能になり3分のペナルティ後は、体力は回復するが魔力は復活しない。


 そしてこの2つのルールを無理なく適用させるには敵にバッジを奪わせず3分間を耐えればいい。


 だから団子状態で攻めてきたのだ。倒されたら、バッジを取られる前に、倒された味方のすぐ前に出て別のメンバーが攻撃を仕掛ける。


 そして自分たちの後ろで戦闘不能になった仲間を3分間守って復活させればいいのだ。だから僕たちはここからは確実にバッジを奪い取り1ポイントを手に入れ相手を復活できないようにさせる。


 この作戦により状況は完全に逆転した。


「ヴォラス魔法学校のマジックの種はこれで終わりです! この勝負、勝ちにいきますよ!」


と僕は味方を鼓舞する。先輩方やみんなはそれに応えるかのように次々とペナルティ状態にした相手からバッジを奪っていく。攻撃を受けてしまうこともあったがそこはツーマンセル。互いにかばい連携して守りながら攻撃する。


 攻撃を仕掛けられても圧倒的なスピードで動く僕たちは、攻撃された場所にはもういなかった。瞬く間に敵からバッジを奪い最終的にタービさんだけがこの場に残った。


「タービさん、まだ続けますか?」


と僕は問いかけた。


「まだだ! 俺はまだ負けていない! 負けることは許されないんだ。俺の家の名誉、地位、金、全てを守るために!」


 あきらめの悪いところはあるようなので文句の一つも言いたくなった。


「負けたくないからって、たかが学生同士の戦いに伝説級のアーティファクトなんかぽんぽん持ち込まないでくださいよ。反則ですよ? ホントに……タービさんが負けを認めなくてもルール上、敗北を宣言させる必要はないですから。」


と言って僕はタービさんのバッジを瞬時に奪い取る。僕の動きに反応すらできなかったタービさん。

 

 こうして僕たちは優勝を決めたのだった。

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