第34話 引き受けたからには全力で!
カガリ先輩も加えた初めての代表メンバーとの魔法の訓練を迎えた初日。シリス先輩から
「オリタルト君。カガリさんも練習に参加させるように動いてくれたって聞いたわよ? でそれを聞いてみんなと相談したんだけどオリタルト君……プレッシャーを感じてしまうかもしれなくて悪いんだけど……」
なんで沈黙が? と僕は思った。
「オリタルト君、魔法学校対抗戦のリーダーになってくれないかな?」
と手を合わせて拝むようにシリス先輩が頭を下げた。
「ちょっと待ってください。シリス先輩が頭なんてさげないでくださいよ」
僕は
「僕みたいな1年生がリーダーなんてみんなが認める訳がないじゃないですか。本気ですか!?」と言っていると。シリス先輩はペロっと舌をだして
「みんなの承諾は実はもらっているのよ」
と話をしだしたのだ。僕は口をパクパクとさせるだけだった。
「私たち3年も2年のカガリさんのクラスも学年の代表よ? そのクラスを破ってオリタルト君たち1年生が優勝した。それなら1年生のリーダーをしていたオリタルト君たちがリーダーをした方がいいんじゃないかって、みんなと話し合ったの。それで代表メンバーがみんな了承してるのよ。もちろん私もカガリさんもね」
とウィンクしてみせるシリス先輩。
「代表メンバー全員がオリタルト君の魔法の訓練をすることが実現したのは、オリタルト君がカガリさんを説得したからこそ。違う?」
「そ、それは……ハイ。そうですけど」
あれは気になったというか、放っておけない理由があったのでとごにょごにょ言っていると。
「私はオリタルト君に感謝してる。代表メンバー全員が一つのことをするためにまとまった。こんなことは今までなかったのよ。だから私はオリタルト君に期待してる。それじゃダメかしら?」
と上目遣いに頼まれて、反則すれすれのこんな可愛い頼み方されたら、
「分かりました。先輩方にここまでされてしまっては僕だってさすがに断れません」
全てシリス先輩の手のひらの上で踊らされている感じはあるけれど、僕だって魔法学校対抗戦で優勝したい。これは押し付けられたんじゃない。チャンスなんだと覚悟を決めた。
それからシリス先輩からみんなの前で
「オリタルト君に、正式にリーダーを引き受けてもらうことに了承してもらいました。みんな一丸となって優勝を目指しましょう!」
と宣言があり
「一度引き受けたからには全力で頑張ります! みなさんよろしくお願いします!」
と、魔法学校対抗戦で勝つために僕はみんなに協力をお願いするのだった。
◇
という話があり魔法の訓練を開始した日から2,3日経った頃だろうか。
ふと前世のこの時期を思いだしたりしたんだけど、やっぱりこの年代の1~3年って成長の度合いって大きいんだよなぁ。
前世の僕の部活は帰宅部だった。中学や高校を卒業するときに、部活で何かしら続けていた人の成長具合を見たときはびっくりした。
まるで歯が立たないレベルになっていたからだ。その後悔もあって僕は地道な訓練ひたすら続けているっていうのもあった。
みんなも訓練続けてくれるといいんだけどなぁ。
基本はシャルリエーテ様と同じ内容をしてもらう。シャルリエーテ様に追い付くメンバーがでてくれば、シャルリエーテ様もさらに気合が入るだろうし。
身近な競争相手はやっぱりいいものなんだよね。
カガリ先輩、グラシ先輩、シリス先輩はやっぱりずば抜けていた。
リーダー、副リーダーとして頑張ってきたっていうのはやっぱり凄いんだなぁと思った。
みんなには引き続き今までの訓練をしてもらい、魔力量のアップと魔力操作に慣れてもらう目標をたて進めてもらうことにした。
特にシリス先輩の魔力量アップは、回復量と回復魔法の使用回数に直結してしまうので僕たちの生命線に他ならない。
なのでちょっと反復回数はマシマシ気味だ。まだ訓練に参加してもらって2~3日とはいえ、それに不満をもらすこともなく続けてくれているんだからありがたいことだった。
だからといってそれが無理無茶にならないように気を付けてはいるけどね。
さてシャルリエーテ様の訓練の成果だ。
「いつも通り強化魔法をかけてもらって、さらに手足に火の属性魔法を
「なんですの。自信なさげですわね。何か支障がありまして?」
とすでに魔道具に魔法を撃って、100点を叩き出したシャルリエーテ様は言った言葉とは裏腹ににこにこしながら聞いてくる。
これが正直シャルリエーテ様ができるかどうかはちょっと不安だ。
これでできないようなら別の手順、もしくはできるようになる努力が必要ってことになるんだろうなぁ。
これは僕が2年B組のグラシさんの風の守りを突破した方法だ。だからこそ難易度が高い。
「シャルリエーテ様いいですか?今までは強化魔法だけを体の中で移動させ集中させる形で身体能力を強化してきました」
コクコクとうなずくシャルリエーテ様。
「今回は2つの強化魔法を同時に魔力操作で強化できるようになったかどうかが肝です。さらに動けるかどうか? ここが最も難易度が高いです」
「なるほど、それは思ったよりやっかいそうな話ですわね」
難易度が高いとすぐに察してくれたシャルリエーテ様の成長を、僕は内心こっそり喜んだ。
ただの強化魔法を1つ体の一部に集中させるだけで大きな効果をえられる方法が、今まで僕が教えてきた方法論だ。
じゃぁ、その普通の強化魔法を集中させつつ、さらにもう一つ何かに特化した強化魔法、今回は火を体の一部に集中させたとしたら一体どうなるんだろうか?
答えは簡単、爆発的な火力のアップだ。でも同時に2つの強化魔法の魔力操作が必要になってくる。そのうえで動けるか?
だから難易度が高いというわけだ。でも期待もしつつ早速試してもらう。
「これで動くのはちょっと難しいですわね。動いたとたん効果がなくなってしまいますわ」
というのがシャルリエーテ様のお言葉だった。
「なるほど。ということは2つの強化魔法は魔力操作で動かすことはできるけれども、それを維持して動くことができないということですか?」
「そうですわね。その通りですわ」
それならばと僕は考える。足りない点は見えた。あとはその効果を引き出す方法だ。
僕が一番強化魔法で便利だなと思った訓練。これをやらないのは損だと思った体の鍛錬を。
「じゃぁ、これからはツーマンセルの訓練を本格的に進めましょうか」
シャルリエーテ様は首をかしげる。
「魔法の訓練をするんではないんですの?」
「そうなんですけどね。体の鍛錬は魔法の訓練に通じるんです。それを実践しましょう。それにシャルリエーテ様は魔力量が多いから、逆にツーマンセルの訓練は遅れ気味です。もういい時期だと思いますのでそれをついでにやっちゃいましょう!」
と僕は提案するのだった。
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