第30話 3年A組リーダー、シリス戦①

 頭の中で考えていてもしょうがないので現地を見に行った。


 アルダイア大森林は、トミー君が火災を起こしてしまったので近づかないようにとアルステナ先生に言われている。


 現状だと平原はカガリさんたちと戦った場所でいいと思う。


 そこを攻撃魔法をしかける場所に使い、カガリさんたちと戦った時の砦を撤去しておけば見晴らしのいい平原の完成だ。


 そうなると今度は守り側にとって都合のいい場所か。


 ここから近くに崖か山のような場所はなかったと思うんだけどどうだろう。


 ダメかなと思ったが念のため探してみたところ、カガリさんが上級風魔法を使って大破壊をおこしまくった前回の拠点の大地がえぐれていい感じの狭い通路になっていた。


 これならここを拠点にして砦を作っていけばいいだろう。


 この残骸をみると、生きてて勝ててよかったって泣いていたのも分かるとしかいいようがない。ほんとによく逃げずに立ち向かってくれたなぁと思った。


 場所は運よく、よさそうなところが見つかった。


 そうなればあとは相手への対策だ。


 回復魔法で強行突破してくるなら回復魔法の使い手、つまりシリスさんを倒せば勝ちが見える。


 さらにいうならシリスさんはリーダーなので戦闘不能にすれば自動的に僕たちの勝利だ。


 けど、そこはさすがに相手も生命線がシリスさんにあることは分かっているだろうし、守りも堅いだろう。


 平原でどれだけの人数を減らせるか? もしくは相手の魔力量、特にシリスさんの魔力をどれだけ消費させることができたかにかかっているといえるだろう。


 正直、森が使えれば罠をしかけ一人一人仕留めていくこともできそうだというのに、トミー君が火事にしなきゃなぁとため息が出る。


 禁止されているのは相手も同じなのだから文句も言えたものではないのだが、仕方ないとあきらめるか……


 でも罠は別に森に限定されるものじゃないから、どこでも仕掛ければいいかとふと思った。


 そうなるとどこに罠を仕掛けるかが問題だなぁ。


 僕はみんなに


「3年A組が攻めてきたときに、どこにどんな罠を仕掛けるのが効果的だと思う?」


と聞いてみた。すると


「草原に落とし穴とか?」


「それもありだとは思いますけれど、今回は平原よりはカガリさんの破壊の跡地に作るのがいいのではありませんこと? 両脇が切り立った崖ですし狭い通路の方が落とし穴の罠にかけやすいのではなくって?」


「じゃぁ、そこに上から岩を落とそうぜ!」


「なるほど! 足止めにもなって敵も倒せる。逃げ道もふさげればいうことなしって訳だな!」


 古典的な罠だけど、効果が大きいから古典的でもいまだに使われるのだろう。僕は


みんなの成長を喜び、アイデアをありがたく頂戴ちょうだいすることにした。


 回復魔法が使えるメンバーはそう多くない。光属性はその希少性からも上位属性なのだ。いわば戦いの生命線。


 回復できるものが倒れれば、次に倒れるのは自分だ。


 だからこそ回復できる人を守る。前衛が倒れても、シリスさんが回復すればまた攻めてくる。


 シリスさんほど回復魔法を連打できる回復魔法の使い手なんていないのだから。


 僕たちの準備は整った。あとは戦って結果をだすのみだ。


 勝利条件はリーダー、シリスさんの戦闘不能、バッジを奪う、もしくは敗北の意思表示をしてもらう。おそらくこの中のどれかがA組と戦うときの勝利条件だろう。



 決戦当日を迎えた。


 戦闘開始の合図が響き渡る。武闘派集団のA組は、今までの戦いと同じようにこちらの陣地に一直線に向かってきた。


 初手から様子見などせず、守りをある程度残してからの全員での特攻。


 ある意味では予想通り。こちらの作戦の変更はなしだ。


 僕たちは平原で、各自が使える最も得意な攻撃魔法を撃つ準備を始める。


 怒涛どとう砂煙さじんをもうもうとあげながら相手は一直線に突進してくる。さすがに恐怖を感じるクラスメイトもいたけど


「落ち着いて! ぎりぎりまで待つんだ! 作戦通り、大丈夫! 問題ない!」


げきを飛ばす。


 戦いはシリスさんたちが魔法の届く距離にきてからが本番だ!

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