第28話 2年B組リーダー、カガリ戦③

 勝利の瞬間C組はみんな喜んだ。


 特に砦で守っていた生徒やシャルリエーテ様は、ことのほか喜んだ。死ぬかと思いましたわと笑いながら泣いていた。



 僕たちはカガリさんたちが、旗のある拠点から1人を残して移動したのを見て行動を開始した。


 混戦の間に姿を隠し、僕への特攻を仕掛けてくる可能性をつぶすため、カガリさんたちの拠点の旗を奪うためだった。

 

 速やかに移動してあいつを倒して旗を奪い取る。


 そいつが今、目の前にいた。対峙しても動揺しておらず落ち着いているように見えた。

 

 僕たちは問答無用で魔法を打ち込んだ。


 2人で一気に魔法で攻撃すれば大抵の相手は勝てるからだ。


 砂煙が風によって流された後そこにはそいつが立ち平然と風の守りで自分と旗を守っていた。


「俺はグラシというんだ1年坊。いきなり魔法を撃ってくるのはひどいんじゃないか?」


 僕はグラシさんをみてあの魔法を耐えるのか!?と驚かずにはいられなかった。


「ごめんね。僕はオリタルトっていうんだ。でもこれは時間との戦いだからね。B組の残ったメンバー全員に特攻さされている状況で、悠長ゆうちょうに戦っていれば、本陣の旗を取られる可能性があるから。ここでのんびりするわけにはいかない!」


と魔法を立て続けに放つ。


「時間稼ぎに付き合う訳にはいかない!」


「ほう、なかなか分かってるじゃないか」


とグラシさんは感心しているがただ感心させておく訳にはいかない!


 それでも風の守りは堅かった。余裕を持っていられる訳だ。


 度重なる魔法攻撃を受け続けてもなお崩れなかった。


 でも攻撃はしてこなかったけど、多分そういう魔法なのだろう。攻撃できない代わりに絶対に壊れない防壁。


 時間稼ぎが目的だからこその余裕の表情だったのかと、内心やられたと思った。


 僕とカガリさんのファン36号のメリアさんの疲労もたまっていく。


 集中力と魔力量も限度がある。だがここを突破しなければ僕たちの負けだ。


 僕は球体の風の守りを突破するために、魔法と打撃による攻撃を混ぜることにした。


 自分の体に強化魔法をかけ両手両足に炎を宿らせ、ひたすらに殴り続ける。


 僕は殴り続けカガリさんのファン36号のメリアさんには、離れたところから魔法攻撃を撃ち続けるよう頼んだ。


 試験の魔道具よりよっぽど頑丈がんじょうなんじゃないかと思った。


「まだ足りないか」


「何がまだ足りないんだ?」


「この風の守りを突破するのにさ」


「お前にそんなことできるわけがない。させないさ」


とニヤリとグラシさんは笑った。


 中央の拠点から空高く煙幕が上がったのが見えた。その意味を知るファン36号メリアさんは焦った表情を見せた。


 どう叩くか。堅いものを砕くときどうやるのが一番いいか想像してみた。


 雨だれは岩の一点に落ち続け、長い年月をかけて穴を穿うがつ。


 全然痛くもない雨だれが年月をかけて同じ場所に落ち続け、ついには岩の形を変えてしまう。


 だから堅いものを砕くのならば、一点集中が一番いいという結論に僕は落ち着いた。


 結論がいったん出たら迷わない。これが重要だと僕は考えている。


 迷いながら行動することが結果をだすのに一番時間がかかってしまう。


だからこそ拳のあたる部分を一点に集中し、一箇所にひたすら炎をまとった攻撃をし続ける。


「殴り続けても蹴り続けても無駄だ。俺の風の守りは砕けない」


「やってみなくちゃわからない!戦いってそういうものでしょ!」


と渾身の一撃を殴りぬいた。すると風の守りに亀裂きれつが入った。


「馬鹿な。こんなことがあるわけが……」


とグラシさんが焦る。


「絶対にできないなんて証明できた人はいないんですよ!」


とまた渾身こんしんの一撃をかかとの1点で同じ場所に与える。亀裂がさらに大きくなる。


 そしてまた全身の勢いをのせた拳で「砕けろ!」と殴りつけた。


 その拳は風の守りを砕き、グラシさんの顔面にそのまま綺麗に入り、さらに吹っ飛びごろごろと転がりグラシさんは倒昏こんとうした。


 それをみて急いで僕はB組の旗を取り勝利を確定する。


 そして僕たちの勝利の合図がエリア内に響き渡った。



 というのが僕たちの別行動の内容だったとシャルリエーテ様に説明する。


「冷や冷やでしたわ。まったく」


とシャルリエーテ様は言葉はツンツンしているがにこにこと顔は笑っている。


「カガリさんが空を飛べる可能性を考えると、僕はこちらに勝ち目がでてくればでてくるほど、カガリさんたちの特攻もありえると思ったんだよね。実際その可能性はやっぱり高かったみたいでね」


「そうですわね。一発逆転を考えればその作戦は当然でてきますわよね」


「カガリさんは僕が見つからなかったので、僕をB組の残ったメンバー全員で狙い撃ちすることをあきらめて、今回のように旗を取りに行く作戦に変更した。そうでなければ空と地上から全員で僕1人を攻めた方が勝てる確率は高いんだから」


クラスのみんなは、なるほどねとうなずいて話を聞いてくれる。


「僕は隠れて旗を取りに行くことで、その一発逆転のんだ。それが勝因だったんですよ」


と僕は晴れ晴れとした気持ちで作戦がうまくハマったことを喜ぶ。


 そして2年生で優勝したクラスに勝てたことを、素直に全員で喜びを分かち合うのだった。

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