同じ資格試験を12年間12回落ち続けた僕が異世界転生!? 偶然発見した魔法書と魔力操作を使って異世界バトルで成り上がる!
冴木さとし@低浮上
第1章 初めまして異世界
第1話 全ての始まり。
「はぁぁ。落ちた。また1点足りない」
僕は資格試験の解答速報と自分の自己採点の結果をみて大きくため息をついた。足きりラインにひっかかった。今年もダメだったか。もう一度僕はおもいっきりため息をついた。
またダメだった。現在32歳、花の無職。今回で12回目になる不合格だった。1年に1回の法律系の資格試験だったけど、特別興味がある内容でも仕事に魅力を感じたわけでもない。
同じ試験を受け続け落ち続け、他の試験にいくのも今までの努力とお金と時間が無駄になるのがもったいなくて、ずるずると続けてきた結果がこれだった。またダメだったと家に帰り両親に報告するのも気が重かった。両親に養ってもらい来年こそはと頑張る。
それを12年も続けているのだった。
毎年試験内容は改正がありその場合、最悪、解答が真逆になることもありえる。正直12年も続けていると、改正された内容が多すぎてもう訳がわからなくなっていた。そのため過去の知識と混同しその詰めの甘さで間違え、足切りにひっかかり不合格になるという繰り返しだった。
「あと1点足りないくらいなら頑張ればきっと大丈夫よ! ねぇあなた!」
「ああ。そうだな。一度しかない人生だ。やりたいことがあるなら頑張れ!」
と励ましてくれる両親の言葉が
◇
翌日、僕は気分転換にちょっと出かけてくると言い残し外へ出た。下を向いて道路をとぼとぼと歩いていたら、僕は後ろから走ってきた自転車にぶつけられ、車道に弾き出されてしまった。
その後、「キキィーーー‼」というトラックの大きなブレーキ音を最後に、僕は意識を失った。
◇
目を覚ました僕はガバッと上半身を起こした。そして動けたことに
「ここはどこだろう?」
とつぶやいて自分の声を聞いて驚く。自分の声がまったく違う声だったからだ。手をみて体をみてどうなってるんだともう一度自分の手をみる。目に映る手は以前よりどうみても小さくなっていた。そして眼鏡をかけなくても遠くが見える。
だけどハンドミキサーで頭の中をぐるぐるにかき回されるような嫌な感覚があった。頭がおかしくなりそうだと部屋に何かないか見回しているとドアが開いた。それに驚いた僕はのけぞった
「オリタルト! 大丈夫!?」
と腕からでる血を見て近くにあった布で傷を押さえる。
「えっ?」
何が起こったのか分からず戸惑っているとその女性は
「ちょっと血が止まるまで押さえてるわね。オリタルト、そもそもあなたは高熱をだして寝込んでたのよ? 死んじゃうんじゃないかと思った。回復してよかったわ」
と僕の傷をみて痛そうな顔をして話すのだった。でも高熱をだしていた? とかここはどこだろうか? とかこの綺麗な女性は誰? とか僕の頭の中はクエスチョンだらけだ。
「落ち着いてください。あなたは誰? ここはどこですか?」
と僕はその女性に聞いた。本当にびっくりした顔をして
「何言ってるのよ。私はあなたの母親のセレサよ? ここはダントレア大陸、シレニア村でオリタルト、あなたの家よ?」
ダントレア大陸? シレニア村? セレサさんが母親? オリタルトって僕? どういうこと? と考えていると
「難しい顔してどうしたの? 大丈夫?」
と顔を覗き込んで額に手をあててくる。慌ててちょっと後ろに下がろうとしても腕を押さえられているのだから逃げられない。まだ熱があるのかしらね? とぶつぶつ言って手を伸ばしてくる。
セレサさんはそれでもまだ逃げようとする僕に
「逃げたら熱があるかないか分からないでしょ?」
メッと困った顔をする。
「ごめんなさい」
と僕は逃げるのを諦めた。
とはいえどういう状況なんだこれはと自分の最後の記憶を思い返す。後ろからきた自転車にぶつかって車道に弾き出された僕はその時、トラックにはねられて死んだとすると……これは異世界転生!? と思いつく。
いや、待て自分。異世界と決めつけるのはまだ早い。僕はセレサさんの言葉が分かるし僕もしゃべって通じている。日本にいなくても地球上にいる可能性も捨てきれない。
でも金髪の母親? 小さい頃からラノベを読みまくり、オンラインゲームもしまくっていた僕は転生系の物語もよく読んだ。それが自分の身におきるとは考えてもいなかったし、まだまだ疑わしいことだらけな訳なんだけど。とはいえまず落ち着け自分。
「熱は下がったみたいね」
と安心している。そんなセレサさんには悪いんだけど
「あの、実は僕……セレサさんがお母さんという記憶がないんです」
と話した。
「なんですって!?」と大きな声を出した。その声の大きさにびっくりしていると「本当に?」と確認してくるので「はい」と小さく答えると、
「ちょっと待ってなさい。お医者さんを呼んでくるから」
と言い残してセレサさんはバタバタと部屋からでていった。
◇
しばらくしてセレサさんは結構なお年のお医者さんを連れてきた。
「どういうことなんです!?」
とおじいちゃん先生につめよる。
「まぁまぁ。落ち着いてセレサさん。そんなに慌てていてはちゃんとオリタルト君を
とたしなめた。このおじいちゃん先生は
「で、オリタルト君ちょっと熱の様子を
「はい。熱はないと思います」
「ほうほう。しっかりしゃべれるようだ。だいぶよくなったね」
そういって熱を調べ質問をしてくる。
「セレサさんがお母さんという記憶がないとのことじゃったがいつからないんだい?」
僕はどう答えたものかと思ったが、転生といきなり言っても信じてもらえないだろう。ここがまだ異世界かどうか決まったわけじゃない。その可能性があるというだけだ。
「セレサさんがお母さんという記憶も、この家に住んでいた記憶も全部ないんです」
と答えた。するとおじいちゃん先生はふーむと
「どうかね?」
セレサさんは今にも泣きそうになりながら心配そうに見ている。
「さっきの切り傷が怪我する前と同じに、
「他には何かないかね?」
とおじいちゃん先生がとても冷静だったので僕もいかん落ち着けと深呼吸。
「特にはないと思います」
と答える。
「ふむむ。体の異常という訳ではないようじゃ。まるで健康体じゃしの。時間が経てば記憶が戻るかもしれない。まぁ、様子を見るのがよかろうて」
と僕に不安を与えないようにするためだろうか? 穏やかに話すおじいちゃん先生だった。
「セレサさんや。記憶はきっかけがあれば戻るもんじゃ。幸い体は健康なんじゃからなんも心配はすることはない。今はこの子の命があることを喜びなされ。何かあったらすぐに呼んでもらって構わないからの」
といって帰っていった。優しそうなおじいちゃん先生だったけど、れっきとしたお医者さんだ。
おじいちゃん先生は魔法を唱えて杖から光を出して、僕の腕の切り傷を
異世界魔法エルフドワーフ犬耳猫耳モフモフゥ~! と単語を
異世界転生が現実のものに! 僕は人生をやり直すんだーーー!!! と大喜びする思考回路とは別に命の危険もあるかもしれないからなぁと、頭の片隅で考えて本当のことは言わないでこのまま記憶喪失にしておこうと思った。
記憶が戻るきっかけがないのが悪いんだ。それが全ての原因だ。うん、これでいい。
「心配しないで。僕は平気だから。きっかけがあれば記憶は戻るんだし」
とセレサさんに食事時に話すと、
「なんて
と泣き出したのでなだめるのに大変だった。
◇
次の日、僕は魔法についてセレサさんに聞いてみた。今までの僕はそんなことは聞いてこなかったようでびっくりしていたが教えてくれた。
「そうね。世界には火水土風の4属性があってね。この4属性とは別格の存在として光と闇があるの」
「そうなの?」
「ええ。これが基本って私は教えられたのよね」
昔を思い出しながらだろうか? 魔法の話をしているセレサさんが僕の反応を見て興味があるの? といった顔をして
「魔法の話は私は苦手でね。さっぱり頭に入ってこなかったのを思い出すわ。興味があるのはいいことね」
とセレサさんは笑った。
「じゃぁ、魔法を習うにはまずどうしたらいいんです?」
「それはまず元気に動けるようになってからね。食事をとってまずは体力をつけないとね」
とセレサさんは苦手な魔法の話はしたくないようで。はぐらかされた僕はがっかりだったけど、準備された食事を食べるのだった。
◇
それから数日後。
分厚いレンズの眼鏡とぼさぼさ髪だった前世の僕の顔に比べれば、この異世界の金髪で眼鏡のない僕の顔は、イケメンとはいえないだろうけどよく整っていた。
そんなことを満足しているうちに、僕の体調は回復し動けるようになったので、家の中を探索したところ英雄譚を2冊見つけた。印刷技術もないのだろう。手書きの本で丁寧に作ってある。
ところが文字は読めず何が書かれれてるかさっぱり分からなかった。
意識を取り戻してセレサさんとすぐ話ができたのは、あの頭の中がハンドミキサーでぐるぐるにされるような感覚があった時に、この体の本来の持ち主の記憶が混ざったのかなぁと想像した。
亡くなったこの子の記憶はまったくないから確証はないんだけどね。高熱を出して亡くなってしまったこの子の体に僕の魂が入った。その後あの頭の中がぐるぐるする感じのおかげでセレサさんとしゃべれた。そして、現在に至ると考えるのが一番可能性としては高そうなのかなぁと思うわけなんだけど。
いくら考えても分からないものはしょうがないかと割り切った。僕は生きてる! ここは異世界! そして目の前にあるのは異世界の2冊の英雄譚! 読むしかないでしょう。そうでしょう!
早速セレサさんに本の内容を教えてもらいつつ日本語と照らし合わせていく。英雄譚は2冊とも子供向けのようだった。おとぎ話とでもいえばいいのだろうか。本の内容は
『昔、悪い魔王がいました。魔族を従え人間界でやりたい放題。人々はどんどん殺されていきました。魔族は最初は国土の一部だけでしたが国土の3分の2を支配下におきさらに勢力を伸ばそうとしていました。
人間はこのままでは滅亡してしまうというところまで追い詰められました。仲間の力を借りて魔王に戦いを挑みます。ですが倒しきることはできず魔王を封印しました。
魔王は『ここで封印されようとも我は必ず復活しお前らの子孫を必ず
と書かれていた。
「これ、ほんとの話なの?」
とセレサさんに聞くと
「1000年くらい前の話らしいわよ。昔すぎて分からないけどエルフとかドワーフとかにしてみたらそうでもないのかしらね?」
と笑顔を見せる。
セレサさんはおとぎ話だからとあんまり気にしてないようだけど、魔王は封印されたと書いてあり、倒されてないのにどこがめでたいのか全然分からない本だった。
他にも色々な人の話がでてくる。もう一冊の英雄譚も同じ時代の話のようで色んな話が書いてある。その中でも命をなげうって魔王を封印をした人の話が印象的だった。種族は人間、聖女と呼ばれる存在だった。仲間とともに苦難を乗り越え魔王に挑み、勝てないと悟り命と引き換えに封印した。
『もし魔王が復活した場合は倒してほしい。倒せなくてごめんなさい。』
と最期は謝罪の言葉だったと記されていた。
英雄譚にしては英雄自身の言葉はなく魔王と聖女の言葉が残されている物語だった。他の話もそうなのだが、英雄譚なのに英雄のことは書いてないのはなんでなんだろうと思ったので、セレサさんに聞いてみると
「なんでかしらね? 考えたこともなかったわ」
とのことだった。まぁ、おとぎ話だしそんなものかなぁと僕は思ったのだった。
◇
英雄譚の文章と単語で言語の勉強をせっせとしていたがそれにも飽きたある日、僕は家の外にある倉庫に入って色々
「これはたぶん良い器ですね~ちゃんと仕事してますね~」
とか言いつつ特にやることもないので目的も何もなく暇つぶしをしていた。その時何かの鍵のようなものを見つけた。
「これは~きっと~良いものですよ~」
と鼻歌を歌いつつ探索を続けていたらいきなり倉庫の床が抜けた。床が腐っていたらしい。落ちた先は小さな部屋だった。無茶苦茶痛かったけど、そんなことより祭壇のような物があり祭られるように頑丈な箱を見つけた。鍵がかかっていて箱は開かなかった。そこで
「まさかね~あなた~そんなことはないよね~」
とか適当にメロディつけて歌いつつ、さっき見つけた鍵をなんとなく使ってみるとなんとその箱は開いてしまった。その中にちょこんと入っていたのが、僕の異世界生活のこれからに大きな影響を与える1冊の分厚い魔法書だった。
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