書籍でいちばん大事な「価格」の話
本、高くないですか?
若い頃にお金がなくて購入を我慢して、そのまま買えなかった本が数多くあり、今は見かけたらすぐ買うようにしています。
目当ての本を手に取って、値段を見て「うっ」とうめき、会計の際に「ほあぁ……」と漏れてしまいそうな溜息を噛み殺します。
いきなりですが、自らつけたサブタイトルを否定します、西原理恵子先生の『この世でいちばん大事な「カネ」の話』から引用した次第です。
書籍で最も重要なのは、内容です。どれだけ魅力的なストーリーか、共感出来るキャラクターか、心揺さぶられる文章か、装丁や挿絵は相応しいのか、などなど。
しかしまぁ、出版は商売で、出版物は商品です。
読者としては値段に見合った内容なのか、願わくば値段を凌駕する内容だったら嬉しいな、とお金を払うわけです。本に限らず、十円の駄菓子から数千万円の家、法人ともなれば数百億円のビルや、幾らなのか想像がつかない油田だって、原則的には同じです。損をするとわかってお金を出すギャンブルも稀にありますが、それを繰り返していたら破滅だけが待っています。
それで、昨今の書籍価格上昇は、如何でしょう。私の場合、以前は表紙買いをして「失敗したぁ〜」と思ってもいい勝負が出来ましたが、最近はそれが難しく感じてしまいます。
だって、本が高いんだもん……。
しかし本の価値は人それぞれで、感覚によるものなので「カネ返せ」は通用しません。古本屋にでも売ってください、本は天下の回り物です。
さて、これが出版社の立場となれば……私は共同出版した経験はありますが、出版社はもちろん経営経理など、会社のお金の流れには触れたことはありません。同人誌を出していれば小規模ながら出版の流れを体験出来るのでしょうが、その経験もありません。お金の素人なので、これを読んで「違う」と思われた方は、内規や社則や法令に触れない程度でエッセイを書いてください。
商品価格を決めるのは、一部の例外を除けば損益分岐点ではないでしょうか?
一部の例外には、生活インフラがあります。社会的な必要性から価格を決めています、赤字水道局の民営化論争が記憶に新しいのかな。電車賃も省庁が社会的影響を考慮して認可しています、運賃が高いと言われても役所がこれでと決めたのだから、交通各社は文句を言われても困るだけです。
すみません、話を戻します。
これを書籍化したら何冊売れるか、それは常識的な価格で販売をして利益をもたらす数なのか。その中身には書籍化作業やデザイン料、印刷製本流通に必要な代金、そして大事な大事な人件費ももちろん含まれます。
これは一冊おきに勘定するはずもなく、たくさん出版した合算で一冊あたりのコストが決まってくるのでしょう、多分。
そして様々なものの原価が上がっています。材料が手に入らない事態まで起きています。本の値段が上がるのもやむなしですが、読者としては正直しんどい。一冊の価値を求めた末に、買い控えるようになってしまいます。
昨今、電子書籍レーベルが隆盛を極めておりますが、印刷製本流通を電子データに頼れることが出版社側のメリットです。参入のしやすさも背景にあるでしょう。読者も部屋が狭くなるなどの物理的負担がありません。書籍高騰化の救世主にも思えます。
しかし出版の強力なライバルにして、強力な味方もまた栄華の極みにあります。
今、ご覧になっている小説投稿サイトです。
二千字程度で一話にするのが望ましい、字数換算の公募レギュレーションなど独特なセオリーはありますが、ありとあらゆる小説が投稿されて、それを無料で読むことが出来ます。昨日まで無料で読めた小説が、今日には書籍化が決まって値段がつくかも知れません。
昔から続く形式の公募であれば、落選した作品は誰の目にも触れませんでした。ところが、小説投稿サイトならば落選作品は無料のまま、価格がつかず変わらず読めます。
明日、書籍化が決まるかも知れない投稿サイトの小説を、無料だからと見下すのは間違っています。書籍化してもおかしくない小説を無料のうちに読みたいじゃないですか。
冒頭で投げかけた質問を、もう一度します。
本、高くないですか?
共同出版した折、私は些細な願いを叶えました。それは本の低価格化です。
本が薄く小さくなると執筆者の負担額が低くなるのも理由ですが、薄い文庫サイズに決めたため六百円台に収めることが出来ました。
出版社側のコストまでは存じ上げませんが、主流の価格ページ数のコスパが一番いいのでしょうね。薄くて小さくて薄利な上に売れていなくて、ごめんなさい。
大好きな本を元気にし、大好きな本屋さんを元気にするのが私の夢です。長くて厚い物語を否定するつもりは毛頭ありませんが、薄く安く濃い手に取りやすい本を出版させて、弾みをつけたいんです。
十万字の公募レギュレーション、何とかならないかなぁ……。
出版素人のふらふらしたエッセイですので、それは違うと仰られても反論しません。出来ることならエッセイで反論してください。このエッセイを吊し上げにしても構いません。
ただし、無料にしてください。こちらも無料ですので。一文字一円なんて、嫌ですよ。
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