託された王
市井さぎり
第1話 その者
世は遡ること、数百年前、戦国時代真っ只中、草むらから目だけを出し、薄く、かつ、色がしっかりと染み込んでいるがために、全身のらいんが見えにくい布を羽織っている者がいた。身を隠すように、頭から膝まで布を伝わせていた。
「はぁっ、、、はぁっ、、、。ここまで来れば、追手もいないだろう。」
辺りは何も見えず、春の陽気に誘われた虫ばかりが生活をしていた。暗闇に見える白い顔に、汚れのない汗が1、2滴ほどつたった。三分ほど経ち、追手が来ないことを確信し、草むらからそそくさと出て、砂利道の上へ行き、来た道とは反対の方向へと進んでいった。そして、暗闇の中に、はためいている布は消えていった。
「明かりが見えてきた。」
遠くの方でろうそくのように、淡い橙色の光がゆらいでいるのが見えた。近づくにつれ、目が細くなっていった。
「眩しい。これが、民たちの住む街なのか。」
そこら中で、牛の肉や鹿の肉、大きな魚が宙にぶら下がっていた。
「そこの人っ!この肉はいらんかね!」
つい、珍しいものに集中し過ぎ、テントの前まで来てしまっていた。
「あ、、、え、、、お金、ないんです。」
「そうかい!じゃあまた今度な!」
汗が次々と流れ出ているおじさんはそういって、また別の通りすがりの人を、同じ文句で捕まえていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます