第98話 新たな旅路【2】









「滞在中は良くしてくださりありがとうございました。温泉また入りに来ます」

「こちらこそ、君達には感謝しかない。我々を助けてくれて本当にありがとう。どうか道中無事で」



 村長さんに、最後、俺達の滞在中、治療のお礼という事で。寝泊まりする場所や、温泉や食事など無料でもてなしてくれたことに感謝を述べた。

 村長さんはおおらかでとても良い人で、その人柄のおかげか、村中の皆さんがとても良い人たちばかりだった。


 

「お前達! 傷が癒えてきたからといって、薬を塗るのを忘れたりするんじゃないぞ! 最後までしっかり治療するように」

「わかったよ! ヨルの兄ちゃん! 本当にありがとう!」



 ヨルは最後まで怪我人の心配をしていて、本当に責任感があって優しい奴だ。

 ゼンはなんでか、いつの間にか村の子供達から、冒険者であることから尊敬のまなざしで見られていて、大人気になっていた。



「ゼンさん! ぜひまた村へと来てください!」

「俺達またゼンさんの冒険の話聞きたいです!」

「またいずれ、近くをリンタロウと寄った時にまた来るよ」



 やっぱり、S級冒険者というのは皆憧れるものなんだなぁ。

 この世に五人しかいないんだもんな。そりゃそうか。



「じゃあ、皆さん! お元気で!」

「早く良く治すんだぞー!」

「世話になりました」

「こちらこそ」

「皆さん都心部までお気をつけて!」

「本当にありがとうございました!」



 こうして俺達は村を出て、都心部への道を再度歩き始めたのである。



 








 

 都心部までまだまだ道のりがかかるのかと村を出る前に、旅の打ち合わせでゼンに確認した際。ここからもう少し移動した先に大きな町があるらしく、なんと、そこから乗り物に乗って移動するそうだ。

 その名も『新魔法石式魔道列車』。

 最近できた最新式の列車らしく、話を聞く限りでは、日本の新幹線というより、リニアモーターカーに近いようで。                  

確か、前の世界での新しく開発された超電導リニアは磁力で移動しているが、新魔法石式魔道列車は魔法石の力によって動いているらしい。


 何それ、楽しみが過ぎるんだけど。と、その時の俺は宇宙を見た。


 しかも、なんと寝台列車らしく、一泊二日で都心部に着くそうだ。

 これにはヨルも大興奮で、ヨルも今まで住んでいた村から遠くに出るのが今回の旅が初めてだし、もちろんそういった乗り物にも乗ったことないのだ。だから、カリスタに乗るのにも初めは大興奮していたし。


 俺とヨルは興奮冷めないまま歩くので、新魔法石式魔道列車のある町に向かうのは、たぶん今までの旅路の中で一番早かったと思う。


 予定より少し早い、二日の旅路を進み終えた先には。



「へ……これが、列車…………?」

「わぁっ!! 凄いな! リンタロウ! ゼン! こんな大きな乗り物に乗るのかぁ!!!!」

「ヨル、あまり遠くへ行くな、はぐれるぞ」



 大興奮のヨルは、駅に停車しているに大興奮して近づこうと俺達の傍を離れようとするのでゼンがそれを止める。

 

 けど、俺はそんなのそっちのけで唖然としてしまっていた。

 なぜなら、俺が思っていた列車とは形がかけ離れすぎていたからだ。


 列車というか一番前の車両はまるで4階建ての豪華客船のような、しかし、その後ろには2階建ての列車のような車両が数台つながっている、とても大きな水陸両用の列車だったのだ。



「なんだよゼン! こんな水陸両用の船か列車かよくわからん物に乗るとは聞いてないぞ!」

「ん? 言ってなかったか? ここから先、都心部までは海を越えなければいけないからな。陸も海も走れるこれに乗って行くのが一番安全で楽なんだ。カリスタの旅の疲れをとる事もできるしな」

「お前はそう、いつもどこか言葉が足りないんだよ。あと隠す」



『言ったつもりになって言葉が足りないのは申し訳ないから謝るが、別に隠していることはないんだがなぁ』とかなんとか言ってゼンは、とぼけているけど。

 結構、お前が隠しているせいでお前の情報、知らないの多いからな! 俺! 年齢とか! S級冒険者の事とか! いろいろまだ絶対隠しているだろ!!

 

 とまあ、そんなこと心の内で叫ぶしかないんだけれど。本人はあれで本気で隠しているつもりはないらしいし。聞かれなかったから言わなかっただけとか、言ったつもりだったとか、様子を見て後でいうつもりだったっていうやつで、本気で隠しているつもりないらしいし。聞けばほとんど答えてくれるし、俺も気になることは都度聞いて、解決するようになったし。

 でも、なんでか分からないけど、年齢に関してはあいつ本当に毎回『俺、何歳だっけ』ってとぼけるの止めてほしいんだけど。



「さぁ、チケットを用意しよう。まだ朝日が昇ったばかりだ。列車がこちらに来ているタイミングで良かった。列車の部屋が空いていれば、これに乗ってすぐに都心部へ向かうことができる」

「わかった、行こう。ヨルー! 列車のチケット買いに行くぞ! 戻ってこーい!」

「おぉーう!!!」



 人ごみに紛れて見えなくなりそうなヨルにそう声をかけて呼び戻す。


 それにしても、まさかの海も走れる列車とは。

 でたよ、ファンタジー。

 こんな大きな列車に乗って一泊二日。

 これだけ大きな列車だ。中にもいろいろと目新しいものがあるかもしれない。

 少しワクワクとした気持ちを持ちながらチケット売り場へと行き、俺達は無事に今日の分の列車のチケットを購入できてたので、列車に乗船することになったのだ。







  

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