第94話 嵐が過ぎれば【2】











 もしかして、こんなこともできちゃうんじゃね?


 恐る恐る、己の手をお湯が溜まりかけている広い湯船にちゃぷりと浸ける。



「き、君! 何するつもりだね」



 おそらく俺の不審な動きを感じ取ったお医者様が、止めようと声をかけてくるが。

 俺はそれを無視して、実行した。







 ペッカァァアアア!!!






「うぉ! ぶわっは!!」





















「おーい、リンタロウ、聖水出来そうかー?…………って何してんだ?」



 俺達の様子を見に来たヨルが風呂場に入ってきたんだが、お風呂の縁に両手を付けて湯船の中を覗き込んでる俺とお医者様の後姿を見て今の言葉を言った。



「よ、ヨル…………。で…………」

「で?」

「で…………」

「でぇ?」

「できちゃった」

「なにがだよ」



 俺の言葉に鋭くツッコミを入れるヨル。

 いつもであればその立場は俺のはずだが、こればかりはしょうがない。

 俺とお医者様の様子のおかしさにヨルが傍へと寄って来て。



「…………できてるな」

「…………できてるよね」

「これ、リンタロウがやったのか?」

「うん」

「魔力に余力は?」

「全然元気」

「「…………」」



















「風呂場に患者全員連れて来ぉぉぉぉおおおおおおおおおいぃいいぃいいい!!!! ここで全員魔障の毒を落とすぞ!!!!」





















 その後、俺が風呂の中の温泉水を全て聖水に変えても余力があり余っている事を知ったヨルが。聖水へと変わった温泉水のある風呂場へ患者を連れ込み、ぬるめの聖水温泉で患者全員のサシニアの魔草で魔障と言う毒に侵されていたを患部を洗い流し、村の番人さんや他の村人さん達が嵐の中にも関わらずたくさん取ってきてくれた薬草で治療を施していった。

 患者全員となると、人手が足りないので薬草を持ってきてくれた番人さんや、他の村人さん達の力も借りて治療を少しずつ進めていった。


 俺はと言うと。



「リンタロウ! まだ出せるか?」

「まだまだ元気ー」



 風呂の蛇口に魔力を込めて、温度と水質を聖水へと変換させ聖水温泉を出し続ける役割を担っていた。


 これ、俺の口から水出てたらマーライオンだったな…………。


 絶対この世界の人には通じない事なので口には出さず、心の中で止めておく。






 この後、全員の患者の治療を終える頃には嵐も過ぎ去り、朝日が昇りかけていた。




「ふぅ! ひと段落したな!」

「ヨル、お疲れ」

「ゼンもな!」

「流石に疲れたなぁ」

「リンタロウもお疲れ様だな!」



 俺とゼン、ヨルとで病院入り口の外から朝日が昇るのを一息つきながらぼーっと見る。

 前半は俺は聖水作りに徹していたが、その後はヨルやゼン、村の人達と一緒に治療に動き回ったので、さすがに疲れてひと伸びしたところ。








 で、ふいに聞こえてきたのが。



「すまない。ここが病院であっているだろうか」



 である。








 まさかのここにきて都心部の衛生兵様ご登場。


 すみません。

 今、一段落したばかりなので、皆に休息ください…………。









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