第38話 びっくりキラキラ市場【3】
「リーン!」
「次こっち―!」
「はいはい」
「リンにいちゃ、だっこ」
「ほいほい、おいでー」
市場に入ってから、凄くはしゃいでいる双子お兄ちゃんズに疲れは全く見えない。
プティ君はさすがに歩き疲れたのか抱っこをせがまれたので抱きかかえるが、様子を伺うとまだまだ元気そうだ。
そうそう、市場に入ってから驚いた。
やっぱり領主様の息子である子供達の顔は領民に知られているみたいで、この領地の民の人は必ず子供達に挨拶していた。
ベルトラン君に聞くとよく催し物などには子供達も顔を出しているし、農業をする際には他の領民の知恵も借りに子供達の体験学習教室なるものにも参加しているので顔は皆に知られているとの事。
しかしだ。
なんと、俺の事も皆に知られていた。
いや、もちろん俺の顔は見覚えがあるわけではなかった。
そりゃあ、俺はリッシュ家の屋敷から牧草地以外に出たことなかったし、他の領民の方にも出会った事ないので当たり前。
だから子供達の傍に見知らぬ人がただ歩いているだけだと思われそうだが、どうやら異世界から来た異世界人がリッシュ家でお世話になっている事は皆が知っており。ゼンも警備関係である程度の領民に顔見せは済んでいるため、傍に居た見知らぬ人が異世界人である事には領民皆が気づいたのだ。
一番最初はプティ君くらいの小さな子供だった。
「おにいちゃん……いせかいの人?」
「えっ? ……あ、うん。そうだよ」
「わぁ! おかえりなさい! おにいちゃんこれあげる!」
子供はそう言うと、手に持っていた飴玉袋に入っている飴玉を二粒くれたのだ。
俺がお礼を言おうとしたが、その前に飴玉をくれた子供は親御さんらしき人の元へと戻って行ってしまった。
俺は少し呆気にとられたがそれだけで終わらず、その後の他の領民の人の勢いが凄かったのであたふたした。
次から次へと会う領民の方が俺に『お帰り』と言い、何かしらの品を渡してきたり。出店を出している領民の方は食べ物屋であったら商品である食べ物をくれたり、その他の出店でも店に出している品を何かしら渡してきてくれた。
それに便乗して、俺が異世界人と気づいた領民でない商人などの人々もお帰りと言葉をくれたり、何か渡そうとしてくれるので困った困った!
もう制限なくという言葉がぴったりの状況で、皆さんいろんな品をくださるので見かねたセリューさんが皆さんを止めてくれた。
しかも頂いた品、例えば食べ物系以外の物は一度、飛竜停留所の荷物置き場で預かってもらってくる。とセリューさんはそう言って品々を俺の代わりに持って行ってくれているので、現在の傍に居るお目付け役はゼンだけだ。
すぐに食べないといけない頂いた食品類は、子供達とゼンと分けていただくことにした。
もちろん、セリューさんの分も別に確保している。
おかげでパルフェット様に頂いた食事代が浮いた。
セリューさんが市場に居る皆さんを落ち着かせてくれたおかげで、今はすれ違いざまやいろんな出店に顔を出す際にお帰りなど声掛けをくれるくらいだ。
今は遊び系の出店を皆で周っている。
「皆様楽しまれていらっしゃいますか。セリュー、ただいま戻りました」
「「あ! セリュー!」」
「セリューさん! 荷物ありがとうございました!」
「いえいえ、これしきの事。お気になさらないでください」
双子お兄ちゃんズが行きたいと言った出店に寄ろうとしたその時、結構な荷物を任せてしまったので時間がかかったのであろうセリューさんが俺達の元へと戻ってきてくれた。
本当にありがとうございます!
目印や集合場所を決めていたわけではないのに、セリューさんはどうやって俺達を見つけたのか少し疑問が浮かんだのだが。そんなことよりも一仕事してくれたセリューさんに俺はすかさず、セリューさんの分と分けて置いた食べ物をセリューさんに勧めたのだが、仕事中なので後で頂きますと受け取りはしてくれたが後で食べるそう。
ちょっとご飯を食べないのは心配したがさすがは執事だなあと思いもした。
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