第29話 初体験の日々【3】
俺以外の皆は慣れた行事なのか、小さい子供のプティ君までせっせとお手伝いしてどんどん毛を刈っていっていた。
イケメンも俺と同じで初体験のはずなのに一度コツを掴んだらどんどん毛を刈っていっていて、出遅れた俺は四苦八苦しながらも丸一日夕方まで毛を刈って刈って刈って刈りまくったよ。
その後も、魔力操作の特訓の一環と称して主にパルフェット様がいろんなイベントを開いてくれた。
川で水遊びやピクニックなどなど。
前の世界で経験した事ない行事ばかりだった。
初体験ばかりでどうしたらいいか分からないと素直に言うと皆が優しく教えてくれた。
そして、今日はというと。
「さあ! 今日は牛たちに混ざってキャンプでもしようか!」
「「いえーい! キャンプ!」」
「きゃんぷー!」
「キャンプですか。テント何処にしまったっけ」
どうやら昔からリッシュ家の皆々様はイベント大好きらしく、こういう行事は今までにもたくさんしてきたしパルフェット様の急な提案には慣れっこだそうだ。
というか、そういうイベント事のネーミングが前の世界と一緒なのが不思議なんだけどね。
「キャンプか、俺キャンプもした事ないなあ」
「リン! 俺達が教えてやるぞ!」
「教えてやるぞ!」
「プティも! プティも!」
初キャンプはとても充実していた。
こちらの世界でのキャンプでは火をつけたりテントを立てたりなど魔力を使う道具が様々あったのでなかなかの魔力操作の特訓にもなった。
魔力でテントを立てるって何?って思うだろ?
テントが小さな箱に入っていてそれに魔力を注ぐと、あらびっくり、テントが勝手に組み立てられる便利道具だったのだ。
しかも組み立てられたテントの外見は大人が三人くらい入る大きさのテントなのに、中に入ると普通に家の中にいるくらいの広さなのだ。
走り回れるし、なんなら部屋もいくつかあってシャワールームとか暖炉とかも有り、いろいろ設備が整いすぎて俺の中のキャンプのイメージが崩れ去ったよ。
夕方前から始まったキャンプで夕飯を皆で作り食べたあと、今夜は皆とテントの中で雑魚寝することになったのだ。
セリューさんは屋敷で休むらしいけどね。
そして、夜といえば枕投げ。
双子お兄ちゃんズから始まったそれは、イケメンやドゥース様、パルフェット様も巻き込んで壮絶なモノとなった。
「「疲れたー」」
「はいはい。そろそろ寝ようか」
双子お兄ちゃんズはぐったりとし、パルフェット様に掛け布団を掛けてもらっている。
プティ君はちょっと前から疲れ果てて寝ていた。
「……………………俺、本当にこんな経験したことないんですよね」
「そういえば言っていたね。ご家族とも出かけたりあまりしなかったのかい? ご両親のお仕事が忙しかったとか?」
俺の突然の言葉に答えてくれるドゥース様。
「いや……なんというか、俺の両親は居ると言えば居たんですけど。俺、捨てられたようなもので……」
「それは、どういう……?」
あまり人に話す内容でもないが、俺はこの人たちなら話してもいいと思えたのですべて話してしまった。
親の事も、友達がいなかったことも全部。
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