第22話 メタモルフォーゼしたらしい【2】






 世界樹は様々な種族を生み出すだけでなく、その実を食べ子を成せる事でその後の種族の繫栄に必要不可欠な果実になったのだという。


 昔は原木の世界樹一本だけで果実を実らせていたそうなので、果実をめぐって争いがあったりいろいろと問題があったらしい。

 今は原木から挿し木によってその数を増やし、各地に世界樹を広めたことで果実をめぐっての争いはなくなったとか。


 ちなみに果実を実らせるには魔力を注ぐ必要があるとのこと。

 魔力を栄養源に世界樹は実らせるらしい。


 四方八方に世界樹があるとのことなので簡単に果実は手に入りそうなイメージだが。

 果実を悪用されたりしないようにその管理を各地の教会が厳重に行っており、勝手に果実を実らせたり食べられたりしないようになど、いろいろと仕組みがあるらしいのでベルトラン君の言うとおり簡単には手に入らないそうだ。





「それこそ、なんで俺がそんな実の匂いがするのかめちゃくちゃ謎なんだけど」

「そこなんですよねー……」

「リンは不思議人間なのか?」

「人じゃなかったりして!」



 双子お兄ちゃんズの言葉に俺は『またまたー、俺の事揶揄ってー。俺は人間だよ』と笑ったのだが。



「いや、リンタロウは人族じゃないかもしれないぞ?」


「「「「え゛」」」」



 俺に抱き着いていつの間にか眠ってしまったプティ君と爆弾発言したイケメン以外の全員が変な声が出た。


 俺って…………人間、だよね?



「「リンは人じゃない!」」

「この世界には様々な種族がいますが、そんな種族いましたっけ??」

「これは俺の祖国の伝承だからなあ。この国でも聞いたことないか? 一番最初に生まれた種族のことを」

「それはもちろん知ってます! 創世記を勉強した時に必ず出てくる最初の種族ですから」



 それは俺も昨日聞いたぞ。

 それって世界樹に最初に実った果実が、なんか人の形になって生まれた生物だろ?



「ベルトラン君はいろいろと勉強しているようだ。俺はその最初の種族と一匹の竜が、原木である世界樹の周りに作った大国カルバーアの出身でな。国の伝承では、その最初の種族は世界樹の化身とも云われてその身からは世界樹の香りがしたというんだ」

「世界樹の化身であるとは聞いたことありますが、香りの話は初耳です!」



 俺はその世界樹の化身とか香りの事とか全部、初耳だなあ。

 ていうか、ベルトラン君凄い。

 しっかりしたお兄ちゃんだと思ってたけど、勉強熱心なんだ。



「でも最初の種族って、今じゃその存在自体してないって話じゃないんですか? 最初の種族は世界樹の化身と言われるくらいだから生命を司っていて、その身を食べると命が伸びるとか若返るとかいろいろと噂が流れてその影響で絶滅したとか」



 え、何それコワ!

 日本の人魚伝説みたいじゃん。



「今は世間ではそう思われているのがほとんどだが、実際はその身を隠しただけで最初の種族達は存在しているらしい」

「わぁ! では、リンタロウ様は最初の種族ということですか!?」



 とても輝かしい顔をしてベルトラン君が俺を見てくる。



「いやいやいや! そんな期待した目で見られても、俺は生まれてからずっと人間だぞ!?」



 双子お兄ちゃんズは話についていけないせいで、ぽやぁんと口開けて俺たちの様子を見ているのだが、君たち、その顔さっきの俺と一緒だからな。

 カメラがあったらその表情、写真撮るよ。

 そして俺も話についていけないので仲間だね。



「…………そういえば、お話では最初の種族は人族に似た姿をしているけど、その背中には七色の羽根を持つと聞いたことあります。…………リンタロウ様には羽根がありませんねえ」



 もう、それは分かりやすく。

 めっちゃくちゃにベルトラン君は、残念そうにテンションがダダ落ちした。


 別に俺が直接悪いことをしたわけではないのに罪悪感がやばい…………。


 なんかごめんなさい!

 事の発端はイケメンの俺が人族じゃないっていう発言のせいだ!

 子供に期待させるだけさせて違いましたなんて可哀想だろ!



「お前も! 俺が人族じゃないなんていい加減なこと言うなよ!」


「そうは言うけどねリンタロウ。これは言ってなかったんだが、君がこの世界にやってきたときに俺は君が言語を理解できるように魔力を注いだだろう? 俺はその時にもう一つ、君に別の効果のある魔力を注いでいるんだ」

「…………なんだよそれ。隠し事か?」



 俺は自分の身体に何かを勝手にされたのにそれを教えてもらえてなかった事実に、少しどころか結構なショックを受けている。







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