第8話 この世界の創生【1】

 


「なんで、あんた日本語なんだよ! あの時変な言葉喋ってたじゃないか。それに、なんで俺はこんなところに……! だいたいなぁ!」

「まぁ、落ち着け。順を追って説明しよう。――――それが俺の役目であり任務だからな」

「役目……任務?」

「そうだ」



 イケメンはそう言うと、部屋の端にあったコンパクトなデスクに備え付けてある椅子を持ち。そのまま流れるように自然な仕草で椅子を俺の傍に運ぶと、男らしく座った。


 いちいちやることなすことイケメン過ぎて、なんか感覚が麻痺してしまいそうだが、俺はこいつのイケメンオーラには負けないぞ。


 どうやら、こいつは色々と事情を知っている様子だし。

 きちんと説明する気もあるようだ。

 根掘り葉掘り聞いてやる。






「じゃあ、説明してもらおうか」

「いや、その前に自己紹介だな」

「……今それいる?」

「お互いのこと何も知らないんだ。まずは俺のことも知ってもらいたいし、親しくなるにはまずは自己紹介が必要だろう?」

「見ず知らずの奴とはいそうですか。と親しくなるつもりはないんだが」

「俺の名前はゼン。好きなことは旅と冒険で嫌いなことは仕事。年齢は、ヒミツ」



 こいつ、俺の話し聞いちゃいねえ。

 勝手に自己紹介始めやがった。

 というか名前しか言ってねえし、旅と冒険が好きで仕事が嫌いって遊ぶの大好きで働くのが嫌いってことかよ。

 何だこいつ。頭良さそうに見えるけど、ちゃらんぽらんなのかよ。残念イケメンか。

 しかもなんだ、最後の年齢ヒミツって。口元に指を一本添えて言う仕草がこれまた色気が出ててムカツク。



「さ、君の番だ」

「信用ならない奴に、自分の自己紹介するほど軽くはないつもりなんだけど」

「名前は?好きなことや嫌いなことは?あと年齢も」



 …………こいつ!

 あくまで俺が自己紹介するまでは事情を説明するつもりはないらしい。


 腕を組みながら余裕の微笑みを浮かべて、こちらを見てくるイケメンにさらにイラっとする。

 しかも自分の年齢言わなかったくせに俺には要求してきやがった。

 なんて奴だ。



「…………………………はぁ、かなどめ凛太郎。好き嫌いは特にない。今年で十九になる」

「へぇ、十九か。まだ若い年齢だが、君はもう少し幼く見えるな。ちなみにカナドメとリンタロウどっちが名前?」

「凛太郎が名前!……ほら!自己紹介はした!説明をしてもらおうか。それが、《任務》なんだろう?」

「リンタロウは実にせっかちだな。でもそうだな、それが俺の《任務》だ。でも…………、君は賢そうだし薄々感づいているんだろう?」



 イケメンの言葉に思わず、少しドキッとした。

 まるで、さっきまで俺の頭の中に浮かんでた、信じたくはない考えを見透かすような言葉。



「……なんのことだよ」

「うん。君の頭の中に浮かんだ考えは今から俺が言う話と一致しているということ」

「っ…………じゃあ、ここは、この世界は」

「そう」



 あぁ、信じたくない。そんな現実受け入れたくない。

 これから聞くであろう言葉を前に、俺は耳を塞ぎたくなった。

 今まで生きてきて良かったと思ったことは一度もないのに、これ以上どんな辛い試練があるというのだ。


 あぁー……現実逃避したい。



「君が考えているとおり、ここは君がいた世界じゃない。

 君がいた世界の言葉で言うとここは異世界。

 我らが慈愛の神、カリファデュラ様と軍神、フレイヤルド様が創造せし世界」



 聞きたくなかったよ!

 その言葉!

 はい、でました異世界!


 日本では流行っていたらしいので聞きなれた単語。

 そして俺が浮かんでた考えとガッチリ一致した言葉に頭を抱えた。

 イケメンはそんな俺を軽く苦笑いしながら見てきたけど、急に真剣な表情に変えた。



「――――そしてここからが大事な話。

 この世界は本来、君が生まれるべきであった世界だ」

「…………ぇ?」



 どうゆうこと?



「これは決まりでもあるからまずこの世界の始まりから話そう――――」











 イケメンが話し始めた内容はめちゃくちゃ壮大な創生の話だった。







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