第4話 ユニークスキル『能力コピー』

 神力99999!!!


 何だこの数字。こんなの有り得るのか!?


 俺は正直に目の前に浮かんだこの異常な数値のパラメーターを読み上げた。


「神力99999って出てるけど……」


 二人は俺の予想通りに、仰け反るくらいに驚いた。


「何だってーーーー!!!そんな数値有り得るのか!何だよそれ、約10万ってことだろ!?」


 するとネルヴァが難しい顔をして俺を見つめた。


「……いや、おそらくそれは計りきれないという意味であって、実際は10万以上なのでしょう」


「10万以上ーーー!?」


 レイナが、俺の耳がどうにかなってしまいそうなくらいの大声で叫んだ。


 だが俺もその数値が一体どれほどのものか判らず、あらためてネルヴァに問い掛けた。


「その、10万以上っていうのは凄いの?」


 するとネルヴァが、呆れ顔となって俺に言った。


「凄いなんてものじゃない。わたしはこれでも世間から大賢者と言われていますが、その神力の数値は5千ほどです。もっとも魔力の方は1万3千ほどありますが、それでも合わせて2万には満たない。あなたの神力10万以上というのは、途轍もないものですよ」


 次いでレイナが、俺の顔をマジマジと見ながら言った。


「うむ。ちなみにわたしの場合、神力はネルヴァと同じく5千ほど。魔力は千くらいだ。とはいってもわたしは剣聖だからな。攻撃力1万2千以上!俊敏性8千オーバー。てなわけだから神力魔力共にそれくらいで充分なんだ。だが……やはりお前の神力10万以上というのは、途方も無いな……」


 俺は、世に聞こえた剣聖と大賢者からのお褒めの言葉に大いに照れた。


 だがそこで俺はパラメーター表示に続きがあることに気付いた。



 ユニークスキル 『アイテムコピー』『能力コピー』



「ユニークスキルに『能力コピー』っていうのが追加されてるんだけど……」


 レイナたちは思わず互いの顔を見合わせた。


 だがすぐにネルヴァが、俺の方を向いて言った。


「そうですか。『能力コピー』と出ていますか……残念ながらわたしはユニークスキルについては詳しくないもので、『アイテムコピー』も『能力コピー』も、どちらも初耳なんです。ですが……」


 ネルヴァはそこで言葉を句切ると、何やら考え込んだ末、俺に対してある提案をしてきた。


「あなたはいわゆる魔法というものは一つも使えないのでしたね?」


「ああ。なにせ魔力がゼロだったから、魔法を習うことが出来なかったんだ」


「わかりました。ではあなたに向かってこれから魔法を撃ちます」


 俺は驚いて目を剥いた。


「え!?どういうこと?」


「はははは。すみません。驚かせてしまいましたね」


 ネルヴァが、笑いながら俺に謝った。


 俺はまだ意味がわからず、不思議そうな顔をしていたと思う。


 ネルヴァはそんな俺に対し、詳しく説明してくれた。


「おそらくあなたの新しいユニークスキルは、読んで字の如く相手の能力をコピー出来ることなのだと思います。ですからまずは手始めにわたしが弱い魔法を撃ちますから、それをコピーしてみてください」


 ネルヴァの説明は判りやすかった。


 だが、だからといってどうやれば魔法をコピー出来るのかの説明はなかった。


 そのため俺は、そのことを告げた。


「どうやったらコピー出来ると?」


「おそらくですが『アイテムコピー』の時と同様だと思います。『アイテムコピー』の時はどうしてますか?」


「どうって……集中してる。コピーしたいと思いながら」


「なら同じようにしてみてください。きっと上手くいきます」


 事も無げにネルヴァは言うが……。


 俺は不安な気持ちを抱えながらも、大賢者の言うことでもあるし、やってみることとした。


「わかった。やってみるよ」


「そうですか。ではまずは最も弱い魔法を、最も弱い出力で放出します。ですが何せわたしの放つ魔法ですので、一応念のためこの盾を使って弾いてください」


 ネルヴァはそう言うと、背中に背負っていた盾を俺に渡してくれた。


「盾で弾いちゃったら意味ないんじゃ?」


「いえ、弾いても魔法の飛沫のようなものが飛び散りますから、それをほんのわずかでいいので受けてください。そうすれば問題なくコピー出来るかと思います」


「わかった。とりあえずやってみる」


「では少し離れます。盾を構えてくださいね」


 俺は大賢者の放つ魔法の威力というものがどれほどのものか判らないため、かなりへっぴり腰で盾を構えてしまった。


 するとレイナがつかつかと俺の傍まで寄って来て、盾をぐいっと掴んだ。


 そして優しい声で俺に語りかけてくれた。


「わたしが支えておいてやるから、安心するといい」


「ありがとう。助かるよ」


 俺は安心し、盾の影に身体のほとんどを隠した。


 するとネルヴァが、いよいよ準備完了とばかりに右手を前に差し出した。


「ではいきます。よろしいですね?」


 俺は盾の影ながらも、力強くうなずいた。


「ああ。大丈夫。頼むよ」


「わかりました。では」


 ネルヴァがそう言うと、突如その右手が輝きだした。


 そしてさすがは大賢者らしく、通常はするはずの長ったらしい詠唱を省略して、魔法名を告げるのみで発動させたのだった。


「ブリーズ」


 ネルヴァが魔法名を告げるや、途端にその右腕から青い氷の結晶が次々に生み出された。


 氷の結晶は連なるように前に進み、俺に向かって突き進んだ。


 そして俺が構える盾に激しくぶつかったのだった。


「ぐっ!」


 予想通り、大賢者の魔法の威力は絶大だった。


 最弱の魔法を最弱出力でと言ってはいたものの、実際に受けてみると途轍もないエネルギーを感じた。


 だがレイナが力強く握ってくれているからか、盾はびくともせず、見事にネルヴァのブリーズを弾き返していた。


 俺はネルヴァの言う、魔法の飛沫を一つ二つ盾越しに浴びた。


 その瞬間、俺は強く念じたのだった。


 コピーしろと。

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