第2話:アイドルに転生しましたが、無事陰キャになりました
前略。わたしはアイドルになりました。ジュニアアイドルです。かわいいね。
憑依前の彼女はそれはもう陽キャ中の陽キャ。元気はつらつで子供ながらにものすごく努力し、周りからの評価が常に急上昇株! すごいね。わたしなんかじゃ再現できないよ。
ってことで、突然憑依してしまったことで別人のようにコミュ力をなくしたわたしに対して、それはもういろんなことを言われた。
どうしちゃったの? と心配されて、お母さん(知らない人)がちょっと休む? なんて言ってくるぐらいには。
まぁ、疲れたのは間違いない。だってひき肉になった後に転生したから、魂としてはそれはもうひと山登った後の一般人並みにボロボロよ。
休憩して、明日も頑張りましょう。と言われて部屋にイン。
んー、誰の部屋だこれ。わたしの部屋だったわ。
「あー、つっかれた」
ベッドに倒れて、そのまま目を閉じる。
ワンチャン今のが夢で、目が覚めたら天国でゲームしてるような極楽生活になってくれないかなぁ。ダメかなぁ。はー、ギャルゲーしたい。
意識が睡魔によって奪われていく。疲れた。明日は、もっと。ちゃんと……。
できませんでした!!
翌日以降、わたしはずーーーーーーっと引きこもっていました!
何故か?! 理由なんてただひとつ。キラキラしたのとかムリですムリ。わたしは元々は陰キャですよ?
それが転生したから、じゃあ陽キャになれますか? なーんてムリムリカタツムリ!
そもそもこの状況についていけてないんだから、これからどうしたらいいか分からない。
てことで自然と部屋からは出れなくなるし、母親(知らない人)からは別人みたいに思われたよ。どうしたの美鈴ちゃん。ってね!
そもそもわたしは美鈴ちゃんじゃありませんしー! いや、今は美鈴ちゃんなわけですけども。
こんな状況になっても時間というものは流れていくわけでして。
1か月もしたらアイドルとしてのお仕事もぱったりとなくなったし、親に言われてアイドルをやめるかとも言われた。
それはそう。だってこんな脱力しきった子が人様の前に出るだなんておこがましいんだから。
「うん」と答えてから、そのままベッドにイン。それから先は中学校にも行けず、不登校の日々がおおよそ1年。
無事に元のわたしになったのでした!
「……ぶっさいくだな、わたし」
鏡を見て思う。素はかわいいけれど、髪はぐちゃぐちゃだし、目元は隈で腫れているし、笑顔の表情筋は消え失せて、ほっぺたが落ちそうになっている。
うん、わたしだ。転生前の冴えないわたしに戻っちゃった。
「美鈴ちゃん、高校だけど……」
「うん、さすがに行きます」
新しい環境ならば、きっとやっていけるだろう。
だって転生したてで、世界の右も左も分からなかったんだよ? 中学校とかお仕事とか行けませんよそりゃ。
でも高校生になったら、そんな生活も一瞬でおさらばだ。うーん、ディモールト。
ボッチ生活からは卒業できないだろうけど、何かを陰で言われる生活からは卒業できる。
そう、これは卒業式。新しいわたしへの入学式である!
「って言ってもなぁ」
翌日を入学式に控えて、わたしは制服を壁に飾って眺めていた。
あの胡散臭いカミサマが言ってたっけ。ここはわたしが好きだった『ライクオアラブ』の世界だって。
高校生として進学した主人公が悪友の友だちやふわふわ系女子、アイドルの女の子と恋愛していく作品だった。普通のギャルゲーだけど、わたしはその中の委員長が最推しだったんだよなぁ。
クラスのマスコットで人気者で、アイドルのような子。陽キャをそのまま人型にした素敵な女性
ふわっとした雰囲気と、決めるときはしっかりと決める態度。委員長だから責任感強いんだろう。
顔がいいし、性格もいい。マジでいいとこしかない。
いいとこなしのわたしなんかより、この子をヒロインにしてほしいよ。
……うん、この子攻略対象じゃないのよ。なんで?
わたし、この子を攻略したかったのにー!
来月に出る予定だったファンディスク欲しかったなぁ。予約したのにプレイする前に死んじゃうとか何の拷問だよ。
制服をもう一度見る。どっからどう見ても『ライクオアラブ』の制服ですわね。
ゲームの世界、か。
「……会えるのかな、あの子に」
しばらく考えて、ベッドに入った。
「あ、明日だけなら」
周囲の目は怖いけど、それはみんなも同じだ。
勇気を出せわたし。アイドルにはなれなかったけど、わたしはあの子を一目見るために高校生活を始める!
よし。よし! がんばる。だからまず……。緊張で寝れないわたしを寝かせてくれー!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます