第3話
あの日も私は「
もう夕方近くであり、そろそろ帰ろうかな、と思っていた時だ。突然、ザーッと雨が降ってきたのだ。
単なる夕立なのだが、子供の私は驚いてしまった。
「えっ、なんで?」
朝の新聞で見た天気予報では、晴れマークが描かれていたからだ。子供なので新聞なんてテレビ欄と四コマ漫画くらいしか見ないのが普通だが、夏休みの間だけは、宿題の絵日記のために天気も毎日チェックする習慣だった。
なんだか少し裏切られた気分で、それでも天気予報を信じたい気持ちもある。空を見上げると、雲は一部のみであり、青空も覗いていた。
ならば、すぐに雨は
そう思って、私は雨宿りすることにした。「屋根がたくさん重なっている方が効果ありそう」という、いかにも子供っぽい考えから、
しばらくの間そこに佇んで、ザーッという雨音に耳を傾けていた。
すると、後ろからバタバタという足音が聞こえてきて、私は驚いて振り返る。
階段を駆け降りる音だった。どうやら
いつも無人だと思っていたから、まずは珍しいと感じて、なんだか嬉しくなった。雨宿りの仲間がいた、という意識で、塔の入り口を注視していると……。
出てきたのは、二十歳前後の女の人だった。長い黒髪と白いワンピースが印象的だが、服には少し汚れたり破れたりしている部分もある。
「……!」
私と目が合うと、彼女はビクッと怯える様子を見せた。
目元には涙を溜めており、それをゴシゴシこするように手で
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