フェアリー・トーク・ファンタジー♪♪

山岡咲美

第01話「少年とフェアリー」

 ボクはこの森でただ一人の人間だった、フェイいわくボクは神様の贈り物らしい。



「もうなにやってンの! 早くおきなさいヒロ!! 冬が来る前に食べ物を集めないと!!」


「うう、フェイ?」


「フェイじゃないでしょ、早く起きてヒロ」


 ボクの回りを一周飛び、小さな妖精、フェアリーのフェイが大樹の大葉布団を巻いて寝ていたボクのゴムツタを編んで木の骨組みにはったベットの鼻先に降り立ちおかんむりだ。


「もうヒロは赤ちゃんじゃないのよ、自分の食べ物は自分で探さなきゃ!」


 何時もの小言だ、この森にはボクが頼れる人間などいない、ボク自身で何とかしないとどうにもならないのだ。


「わかってるよフェイ、でもまだ木の実もドライフルーツも肉の薫製や魚の干物もある、少しくらい休ませてよ……」


 ボクも決して横着してるわけではない、ボクの住むこの木のウロの家にはウロの入り口に合わせて作った木製の扉がちゃんとついてるし、人間の事に詳しいフェイに教わって一つ一つ作った家具や食器、カマドまであったし、保存のきく食料だってもうすぐ冬を越せる分がたまる、フェイだってそれはわかっている。


「ダメダメダメ!! 食べ物はすぐ底をつくと思ってなきゃ! 冬越しの食料やいざという時の物は手をつけず残しておいて、今日食べる分は今日探さないと!」


 フェイの教えはこの森で、いやこの世界で生きる全ての生き物にとっての正しい答えだ、生き物は常に飢餓に備えなくちゃならない、それは特にか弱い人間種のボクには重要な事だとフェイは小さな頃からボクに何度も何度も言い聞かせてくれた。


「わかった、今起きる……」


「だから二度寝するなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」



***



 「準備OK」


 「ヒロ、忘れ物はない?」


 ボクは膝下ひざしたまである白いワンピースのパジャマから麻の糸を織って作くり、虫除けヨモギの染料で染めた緑の半袖上着と膝丈の短パンに着替え腰のベルトに手製の木のさやに納めたその昔この森で人間が落としていったと言う鋼のナタを指して準備を整えた。


「ホントにうるさいなフェイは、ボクだって食べ物の大切さはわかってるよ、でも良いじゃないか少しくらいゆっくりする日があったって……」


 ボクはプンプンしながら歩きだす、前を飛ぶサバサバとした短い金髪にトンボ羽のフェアリーを見つめながら今日は東の森のフルーツを食べてから北の森の木の実を集めようかと計画を立てる。


「そう言って何時もヒロはおうちゃくするじゃない、食べ物が何時もあるとは限らないのよ! いい、人間は食べ物が無いと死んじゃうのそれは悲しい事なのよ!!」


 今日は機嫌が悪いな「人間は食べ物が無いと死んじゃう」はフェイの口癖だ、フェイは昔人間とパーティーを組んで冒険をしていたらしい、その時何度もパーティーの仲間が飢えと渇きで死んだらしい、たとえこの森がどんなに豊かであってもフェイは食べる事に関しては何度となく注意してくれた、フェイは人間が好きなんだ。


「なあフェイ、わかったから機嫌直してよ、今日は急ぎで食べ物いっぱい集めて日が暮れる前にチェスをしようよ」


 チェスの言葉にフェイの長い耳がピクンと動く、この森にはフェイとチェスを指す者、いや、そもそも人間の娯楽に興味を持つ者などボク以外にいないのだ、ボクもチェスは難しくてあまり得意ではないけれどそれでもフェイはボクと楽しそうにチェスをさしてくれる、フェイは人間達とパーティーを組んでいた頃を思いだしとても楽しそうにしてくれるのだ。


「わかったわ、それと夜になったらまた冒険の話をしてあげるわ」


 少し機嫌が直ったらかな?


「うん、ありがとうフェイ」


 ボクは嬉しそうに笑う。


「いい、今日食べる分のフルーツと保存用の木の実をいっぱいよ!!」


 フェイは怒りながらも笑っていた。


「うん、じゃまず東の森まで競争だ!!」


 ボクはそう言うと森を疾走する競技用ドローンのように天まで届くような大樹の森をフェイを置き去りにして走りさった。



「ヒロ、ズルい!! おいてかないでよーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

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