おっさんウサギ男は、女勇者を嫁にしたい!?

九重七六八

プロローグ

第1話 おっさんは語る

 男が女を好きになる。

 女が男を好きになる。

 人が生まれて以来、ごく普通の感情だ。

 最近は男が男を、女が女をというケースもあるが、好きになるのは自由だ。

 何の問題もない。

 オーソドックスなケースで話を進めよう。

 ある男がある女を好きになった時、男はどう行動するか。

 まず男は女に告白する。

 女も男が好きならば交際が始まる。

 そして、交際期間がある程度に達すると男は女に結婚を申し込む。

 女がそれを受け入れれば、2人は夫婦になる。

 人間なら誰でも知っていることだ。

 なお、結婚を申し込むことを日本語では「求婚」。英語では「プロポーズ」という。プロポーズの語源は辞書によると、英語「propose」から外来語として日本語に定着した言葉だ。さらに遡ればラテン語で「前に置く」という意味の「proponere」がフランス語で「propose」となったとされる。

「前に置く」という意味から、「提案する」「提出する」という意味が生まれ、そこから「申し込む」「求婚する」となったと考えられる。

 そして簡略することで広く人々の間で広がっていく現代日本語の進化の中で、様々な言葉が生まれた。「告白する」が「こくる」となった。ついにはプロポーズを「プロポる」というらしい。

「プロポる」

 言葉は軽いがその行為は、決して軽くはない。数ある行為の中で、これほど神経を使い、真摯な気持ちで行うものは数少ないだろう。どんな人間でも「プロポる」ためには、そこに至るまでの段取りと相手に対する信頼、そして揺るぎない愛情があってこそだ。

 プロポるとは、人生で最大の出来事であり、人生全てを賭けて行うことなのだ。

 多くは男が女に向かって行うこの『プロポる』という行為。

 そこには様々なドラマが生まれる。

 時にはハッピーエンドになり。

 時にはバッドエンドとなる。

 そして時には喜劇に悲劇にもなる。

 ある男は1年間同棲した彼女にプロポった。

 男は勝利を確信していた。

 給料の3か月分の指輪を買い、さらに給料1か月分で夜の東京をヘリコプターで遊覧した。そして100本のバラの花束を手に片膝をついてプロポった。

 100%オッケーの返事がもらえると思っていた男はまさかの結末を迎える。

「気持ち悪い。お断りします」

 残酷な黒歴史となった。

 自然界においては、時にはそれが死に直結することにつながることもある。

 オスにとってはまさに命をかける行為でもあるのだ。

 カマキリ然り、クモ然り。失敗すれば、そのまま、メスに捕らえられ食われてしまう。まさに人生を賭けたサバイバルの集大成。それが「プロポる」。

 しかし、オスは自らの死を賭けても果敢にプロぽる。

 自分の子孫を残すためにメスにプロポる。

 それによってその身が滅びようとも。

 それがオスたる男の存在意義なのだ。

この物語は、怪人ウサギ男にされた一人のおっさんが、命をかけて、最強で最凶の女勇者を嫁にし、結果的に魔界の平和を取り戻そうとする物語なのである。


 何事においてもスタートダッシュほど重要なものはない。プロローグで人を惹きつけなければ、物語はそこで終わるものだ。

                    ウサギ男ヤマダのひとりごと1

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