最終話

1063年11月15日。戦勝パレード。


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ラムラス王国、首都ラムス。中央広場。


「それでは最後に英雄、マクシミアン様!ご登壇お願いします!」


宰相がそう言うと1人の男が立ち上がり、ゆっくりと向かって行く。

人々はその姿を見て歓声を上げ、王族すらも敬意を表していた。

そして、男は姿勢を整え、ついに話しはじめた。


「どうも、ご紹介預かったマクシミアンと言います宜しくお願いします」


男が話し始めると先程までの喧騒が嘘のように静かとなった。

続けて。


「今日皆様に集まっていただけたのは感謝しかありません、本当にありがとう」


そう言う男のその声に嘘偽りは無く、人々はその次の言葉に胸を躍らせる。


「この戦い、勝てたのは私だけの力では有りません。勝てたのは兵士の皆様方、そして支えて下さった市民である皆様方のおかげです」


その言葉に民衆は感動し、涙を流す者までいた。民衆は思う、なんて謙虚で高潔な人なんだろうと。


「しかし、今回はなんとか勝てたに過ぎません。すぐに第2、第3の戦いが始まります」


そう言う男の言葉に民衆は恐怖する。それは男がなんとか勝てたに過ぎないという言葉と第2第3の戦いが起こるという言葉。既に民衆は不安と恐怖で胸が一杯になっていた。しかし。


「ですが、次も勝つと宣言しましょう!」


あぁ!何という男だ!その一言に民衆は希望を感じ、全て信頼する事にした。


「そのためには兵士が必要です!それも多くの兵士が!」


その一言の次の言葉を、民衆われらは待っている!そして、今!


「私は!きたる聖戦に備え!英雄を募ろう!人々よ!私の下へ集え!そして戦うのだ!」


民衆はその一言に沸いた!我等の英雄が我等を必要としている!その事実は民衆の心を強く揺さぶった!


「私は誰も拒まない!少年少女に紳士淑女よ!私と共に栄光を掴み取ろう!」


その一言でどれだけの子供達が動かされただろうか、自分では役に立たないと考えてた子供達も英雄となれると強く思い、そして彼の!英雄の下へと集う!


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そして数年後、英雄マクシミアンは大陸統一を果たした。

彼の下には幾万もの英雄が集い、そしてその全員がたった1人の夢を支えたのだ。

この偉業を果たしたマクシミアンは後世にて謙虚で高潔で人々の光となった聖人と伝えられている。



しかし、聖人マクシミアンが暗殺に死んだ後。その幾万もの英雄は次々と死んでいった。

生きる理由が無くなったから、自分達の夢が消えたからだ。

夢の一つでも有れば生きようと思えたのだろう。しかし、そんな物など彼等には無い。

もしかしたら有ったのかもしれないが長い戦いで忘れたのだろう。


少年兵は夢を亡くした、故に自分をも亡くした。


かつての少年も、夢を忘れてそして死んだ。


故に、今はこう言い伝えられている。


少年兵よ、夢を見よ。


それはかつて夢を見なかった友人と最後に会う、そんな夢を持った片足の老人の昔話。


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