第28話 楓のお兄ちゃん観察日記①
最近のお兄ちゃんは何だか可笑しい。
悪い意味じゃ無くて、いい意味で変わった気がする。
この間お兄ちゃんが公園にいるのを見かけた。
小さな女の子が転んで泣いていたら起こして土をはらってあげていた。
「お兄ちゃんありがとう」
「偉いね、泣かないなんて」
「うん、お兄ちゃん今一人なの?」
「そうだけど?」
「だったら、遊んで」
可笑しいな?
お兄ちゃんは子供に嫌われる容姿なのに...
昔のお兄ちゃんなら兎も角、小さな女の子とはいえ、女の子が今のお兄ちゃんを好むとは思えない。
気持ち悪いって石を投げられる位なのに。
「そうだな、なら肩車してあげようか?」
「うん」
お兄ちゃんは女の子を肩車すると走り出した。
「こんな感じでどうかな?」
「お兄ちゃん、高くて速い、速い~ すごーい」
あの子顔を赤らめている様にしか見えない。
ああいう顔している子供は、相手の男の子が好きになっている時だ。
「それは良かった? 今度はなにしようか?」
「それじゃ、ブランコに乗りたいな...あとお兄ちゃん、はいこれ」
ブランコって言っても箱型ブランコで向かい合って座っているし、飴まで貰っている。
小さな女の子って結構残酷だし、大人が知っているよりませている。
醜くて嫌いな男の子は平気で傷つける。
逆に好きな男の子には、大切なおもちゃやお菓子をあげて尽くす。
大人の女の子よりある意味質が悪い。
態々お菓子まであげて、ブランコで正面に座るって事は随分気に入られてたって事だよ...
だけど、なんでだろう?
多分、あの子の顔は好きな男の子を見る女の子の目だ。
身内の私なら兎も角、どう考えても可笑しい。
初めてあった、あの姿のお兄ちゃん相手にあんな顔するものだろうか?
しない筈だよ...
暫く私が見ていると、母親らしき人が声を掛けてきた。
【これは不味いのでは?】
そう思った。
だって、気持ち悪い不審者が自分の娘と遊んでいたら、最悪通報される。
そうなりそうなら出て行こう。
そう思っていたら...
「娘と遊んでくれていたんですね? 有難うございます」
「いえ、丁度暇していましたから」
「そうですか、ほら麻衣もお礼いいなさい」
「お兄ちゃん、遊んでくれてありがとう」
「どう致しまして」
「そうだ、麻衣がお世話になったから、ジュースをご馳走してあげる、今買って来るから待ってて」
あれは明らかに心を許している感じがする。
デブの気持ち悪いオタクが子供と遊んでいたら...あんな行動取らないよ。
「お待たせ、どれが良いかな?」
「先に麻衣ちゃんからどうぞ?」
「お兄ちゃんから選んで、麻衣は全部好きだから大丈夫」
「それじゃ、コーラ頂きます」
「どうぞ」
これも可笑しい...今あの子のお母さん、態々缶を開けてから渡していたよ。
しかも、お兄ちゃんとベンチに座って話し始めた。
会話が良く聞こえないけど...手を口にあてがって笑っている。
完全ににこやかだ...
確かにお兄ちゃんは変わろうとしている。
だけど、それは家族位しか解らない筈。
何が起こっているのかな?
京子ちゃんに久美子ちゃんも様子が可笑しくなっちゃうし...
どうしちゃったのお兄ちゃん?
訳が解らないよ...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます