第24話 何かが変わり始めたかも知れない①

鶴橋を倒した事で俺の日常は変わった。



「おはよう!」


「...天城くんおはよう」


「...天城くんおはよう」


クラスの皆が普通に挨拶してくれるようになった。


だが、凄くぎこちない。


最初は、俺に対して「様」をつけて呼び出したが止めて貰った。


だが、鶴橋の事で恐怖を覚えたのか、皆は勝手に「くん」をつけて呼んでくる。


これはこれで凄く寂しい。


五所川原は辞めてしまったので、代わりに上司という先生が担任になった。


まぁ副担任が担任に繰り上がった。


そんな感じだ。



上司先生は今は剣道部の顧問をしている。


実際は五所川原が顧問をしていたが、辞めてしまった(笑)からだ。


実は剣道に興味があり、話をしたのだが


「天城君、暴力的なのは先生はいけないと思います」


そう言われて見学を避けられてしまった。


いや、俺は元騎士だし、本当に興味があっただけなのに...


少し食い下がったら、


「お願いだから、お願いだから、やめて下さい...剣道部の誰かが虐めに荷担してたのかも知れませんが...先生暴力で解決するのはいけないと思います」



「いや、違うんだが、もういいや」



「そうですか、先生ほっとしました」


いや、俺そんな物騒な人間じゃないぞ。


ただ、自分の居場所を作りたくて頑張っただけなんだが...やり過ぎたのか?


まさかこの世界の人間が此処まで弱いなんて知らなかったんだ、仕方ないだろう。



このまま、真面な学校生活が送れない様な気がして仕方ない。


ただ、勉強は凄く楽しい。


こんな生活に必要ない事まで学べるなんて...こんな経験はこちらに来なければ無かっただろう。



退屈だな...


家族以外に挨拶以外で話してくれるのは、茜さん位だ。


後の人間は遠巻きに見る位しかしてこない。


正確には京子ちゃんと久美子ちゃんも居るが...これは茜さんに付き合っての事だ。


違う。



授業は楽しいが、それ以外は殆ど会話も無い。


このまま、俺は友人や恋人が作れるのだろうか?



考えろ...俺...変わる事は出来ない。


なら、これからは騎士だった頃を思い出せ。


少なくとも縁談の話は幾つもきたんだ...嫌われているのは多分今だけだ。


挽回のチャンスはある筈だ。




学校が終わり何時もの様に公園に寄ると茜さんがいつも様にいた。


「翼さん、大丈夫だった...平気?」


「どうしたんだ、そんなに驚いた顔をして」


「いえ、昨日連れていかれて、大丈夫かなと思って」


《何で無傷何だろう...相手世界チャンピオンなんだよ》



う~むなんて言おうか?


弱かったとか言うとなんだかショービジネスを馬鹿にしたみたいだ。


クルーガーは強い、それは酒場では当たり前。


態々騎士や冒険者は否定はしない。



「いや、あんなグローブをつけて殴り合っても怪我なんてしないぞ」


《そうか、幾ら馬鹿でも怪我する様なことはしないよね、重いグローブならそんな大怪我しないよな》



「そうか、そうだよな、だけど今の話だと翼さん、素手の殴り合いの経験があるみたいですね」


「ああっ少しだがあるな」


《どこがオークマンだよ、ステゴロ経験まであるじゃねーか、寧ろ、紅の翼とかの方が似合うんじゃね?》


「うふっ凄いですね、昨日の喧嘩は...あっボクシングはどうでした?」


「二人とも結構強かったけど、どうにか勝てたよ」


夢を壊しちゃいけないよな...


《スゲーじゃん、ボクサー、それも世界チャンピオン相手に勝つなんて凄いな》


「凄いな、翼さんって、そう思うだろう、京子、久美子」


「...そうだね」


「うん」



《可笑しいな...今一瞬オークマンが...凄くカッコ良く見えた》


《あれ...なんでかな王子様...》



「どうしたんだ? 京子、久美子?」



「あはははっお姉ちゃん、何でもない」


「私も何でもない...です」


「変な奴だな」



「そうだ、昨日約束した通り飯でも食いに行かない?ただ、そんなに金は無いからファミレスで良ければだが」


「良いんですか?」


「ああ良いぞ」


「おい、お前等挨拶!」


「「御馳走になります」」



そうか...三人分、まぁ手持ちでどうにかなるだろう。



4人でファミレスにむかった。


相変わらず、皆の視線が俺に集まる。



「あの人、誰なのかな? 俳優なのかな?」


「カッコいいな? 握手とかしてくれるかな」


「まるで物語から飛び出て来た人見たい....」





「あのお姉ちゃん、ちょっと先に行ってくれない?」


「あっ、私も」



「あー別に良いけど、直ぐ来いよ! それじゃ翼さん行きましょう」


「そうだな」




【京子、久美子SIDE】



「なぁ、さっきオークマンが凄い美形に見えたんだだけど、気のせいじゃないよな?」


「京子ちゃんも見えたんだ、私も見えたよ...それでこれ」


何て事は無い、周りの女性が翼の事が美形に見える、そういう話が聞こえてきたからちょっと話を聞こうとしただけだ。


「あの...もう行って良いですか?」


「ああ、いい怖い思いさせて悪かったな」



どういう事なんだろう...あの子が見ていたオークマンの姿は、まるで王子様だったとの事だ。


さっきからチラチラ見えるオークマンの美形の姿こそがあの子達に普通に見えている姿だった。


「あの京子ちゃん、これって」


「恐らくは、翼様の本当の姿は、あの姿なのかも知れない...」


「もしかして、呪いとか掛けられているのかな」


「非科学的と言いたいけど、見ちゃったからね」


「そうだね」


「それで久美子はどうする?」


「どうするって」


「いや、あの姿が本当の姿なら、私は、お姉ちゃんと争っても欲しい」


「茜さんと...マジ」


「だってリアル王子だよ? あの見えた姿が本物なら、さっさと行きつく所までいって既成事実つくってヤンママって良くない?」


「あはははっ、そこ迄は考えないけど、私だって付き合ってみたいよ」


「なら、調べてみない」


「そうだね」


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