【石のやっさん旧作】勇者に全てを奪われた俺は勇者の代わりに高校生になりました...こっちの方が幸せかも知れません。

石のやっさん

第1話 【異世界篇】努力は俺を裏切らない

俺の名前はセレス、スタンピート


剣の名家、スタンピート伯爵家の三男に生まれる。


上の兄たちはジョブやスキルに恵まれていたが、悲しい事に俺は恵まれなかった。


長男は聖騎士のジョブを持ち、次兄はクルセイダーのジョブを持つ中、俺はまさかのジョブ無し。


つまり、何の恩恵にも預かれない存在だった。


本来なら、子供の時に捨てられても可笑しくない存在だったが、家族はとても優しかった。



おじい様は俺にいった。


「お前は確かに恵まれていない、だが剣はジョブやスキルだけではない、努力を重ね技を工夫し実戦を重ねれば、その差を埋める事は出来る」


僕には何もない、だから、剣の名家スタンピート家に恥じない様に生きる為には、死ぬほど努力をするしかなかった。


暇さえあれば剣を振り、それ以外の時間は学問にあてた。


勿論貴族としての立ち振る舞い、マナー全てを完璧にこなす為の努力も惜しまない。


そう言う点では俺は凄く運が良かった。


ジョブやスキルは貰えなかったが、家族は優しく、本当の天才である、兄二人は惜しみなく剣を教えてくれた。


父もおじい様も剣の稽古をつけてくれる。


おじい様は今でこそ引退したが元は王家指南役だ、王家指南役に聖騎士、クルセイダーが手ほどきしてくれる。


そんな恵まれた環境で剣が学べる人間は居ない筈だ。



勉強やマナーは貴族だから本は幾らでもある。


そして母であるマリアーナは今の王妃のご学友だったので完璧なマナーを知っている。


厳しくもそれらの知識を鞭を振るいながら教えてくれた。



努力は俺を裏切らなかった。



出だしこそジョブ持ちに何も敵わなかった物の、知らないうちに剣技が身に付いていった。


兄二人の様に斬鉄までは出来ないものの斬岩位まではどうにか出来るようになった。


これはスキル【上級剣士】を持っていても努力しなければたどり着けない境地だ。


学園に通い勉学も死ぬ程努力した、【ジョブ無し野郎】そう言われ無いようひたすら頑張った。


ジョブは無くても血がある、そう言われ【ブラッドオブスタンピート】と言う字がついた。


努力は俺を裏切らない。


その言葉を頭に刻み、努力に努力を重ね。


オークは勿論の事、オーガですら倒せる実力が身についた。


スキルもジョブも無い、だが死ぬ程の努力は身を結んだ。


学園の卒業の時はトップの証である、赤いマントを羽織る事が出来た。


このマントは成績が1番の証で卒業式で1名のみが羽織れる物だ。



学園を卒業した俺は一人前として扱われる。


学園での成績が優秀だった事もあり、直ぐに俺は騎士の試験を受け合格した。


つい最近までは平和だったのだが、学園を俺が卒業する時期と重なり、魔王が人類に宣戦布告。


今や戦乱の時代、魔王軍との戦いが熾烈を極め各地は戦場となっていた。


平和なのは王都周辺のみ、騎士の資格があり、剣の名門、スタンピート家の俺は戦う義務がある。


一旦軍に所属したらもう暫くは帰ってこれない、それ故、卒業後の休みの間に、婚約者を決めて、戦に旅立つ必要があった。


「喜べ、セレス...お前の努力が認められて王族から婚約の話が来たぞ、相手はなんとジョセフィーナ姫だ」


父から聞いた時一瞬耳を疑った。


ジョセフィーナ姫は末姫だから王家に生まれたが家督の序列は低い。


だが、その美しさは王国一と言われ近隣諸国にまでその名は知られている。


【王国のルビー姫】と呼ばれる程だ。


「それは本当ですか?...信じられません」


「本当だ、お前は全てに置いて努力をした、その結果だ誇っていいぞ、ジョセフィーナ姫もそんなお前の姿に惹きつけられ、姫自ら王に頼んだそうだ」



「報われた、全てに」


「おいおい、まだ此処からだ、王族を妻に娶るんだ、まだ終わりで無いぞ、このまま精進しろ」


「はい」


俺が戦場に向うまでの猶予は半年...慢心せずに剣の腕を磨き続けた。


魔法が一切使えない俺には【剣技】【体術】それを極める以外に道は無かった。


それを極め続ける為に訓練に明け暮れる。


そんな俺をジョセフィーナ姫は見に来ていた。


婚約者と言う事でお互いに行き来が許された。


「セレス、本当に貴方は凄いわね」


「姫、どうかされたのですか?」


「いえ、所作振舞い、全て凛々しく見えますよ、しかもこれで学問に剣術全てが一流なんですから」


「それを言うなら姫はこの世の物とも思えない美しさ...それに貴方といると凄く癒されます」


「それは本当ですか? ならば私達きっと良い夫婦になれますわね」


「はい、俺は貴方に相応しい男性に成れるようこれからも努力し続けます」


「ならば、私はこれからも貴方を癒せるような女性で居られる様に自分を磨きます」


それから時間が過ぎた。


幸せな日々も今日で一旦終わりだ。


これから俺は戦場に行かなくてはならない...この国を世界を守るために。



【聖教国】


「魔王軍が活発に活動して魔王が宣戦布告した今、勇者を召喚しなくてはならない」


「それでは教皇様、勇者召喚をするのですね」


「そうです、今がその時です、さぁやりましょう」


こうして、聖教国が古に伝わる勇者召喚を行う事になった。


そして伝説に伝わる光の勇者の召喚にて、天城 翼が召喚された。



「おおう、勇者よ来て下さるとは..」


「...」


「勇者よもし....我々の代わりに魔王を討伐して下さるなら、討伐時には望みの物を差し上げましょう」


「そうか、女神の言う通りだ...ならばこの、天城翼が魔王を倒してやろう...」


「はっ宜しくお願い致します、勇者様」



世界は大きく変わろうとしていた。


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