第20話 家族でお出かけ
「ごめんね、裕子ちゃん今日は家族でお出かけするんだ...恵子ちゃんにも伝えて置いてね!」
これは嘘..だけどこれから本当になるんだから良いよね?
だってね、お兄ちゃんに掛かっていた魔法が溶けかけているんだ..
今日の朝から..
さっきまで、私はお兄ちゃんに「魅了の魔法を掛けられているんじゃないかな?」そう思っていたんだ。
だって嫌いな筈のお兄ちゃんが何故かカッコよく見えてくるし...何よりもうちのクラスの美少女2人があんなになっちゃったんだから..
勇者になると外見が醜くても魅了の魔法が掛かって美形に見えるっていうあれ...
でも違っているような気がするんだよね!
魅了の魔法なら、そのままの姿形が綺麗に見えるだけだからさ..
今の私にはお兄ちゃんが状況によって二つの姿に見えるの..これは多分兄妹のとっても深い絆のせいだと思うの。
私とお兄ちゃんは兄妹...だからきっとこそ、両方の姿が私には見えているんだと思うの。
勇者に成る前の、お兄ちゃん、オタクで自分勝手でどうしようもないお兄ちゃん。 (← こっちが多い)
王子様みたいで物凄ーくカッコ良くてうん、まるで物語の主人公みたいなお兄ちゃん。(← 偶に見える)
多分、私は家族だから..認識をずらす様な処置をこっちに来る際に神様がしたんじゃないかな?
その証拠に、元のお兄ちゃんを知らない裕子ちゃんや恵子ちゃんには、王子様みたいなお兄ちゃんが見えていたみたいだし..ズルいよね!
妹だからって..さぁ..
意識を集中したり、カッコ良いな..なんて思っているとさぁ..本物のお兄ちゃんが見えてくるんだ。
うん、凄くカッコ良い...
多分、異世界とこっちでは時間の進み方が違うんだろうね..私が過ごした1日が向こうでの何年になっているんじゃないかな?
だって、そう考えないと可笑しいもの。
あんな我儘で年上なのにガキみたいだったお兄ちゃんがだよ...凄い大人になっているんだもの...。
いま考えれば、お母さんに「いい加減馬鹿なこと言うのは辞めなさい」って怒られてプチ家出した時があったけど、あの時に転移したんじゃないかなと思うの。
そして厳しい世界で生き抜いて帰ってきたんだ..お兄ちゃんは..
だから、多分お兄ちゃんには妹成分が足りないと思うの...
よく考えれば、少し前からお兄ちゃんの目が昔と違って凄く優しい目になっていたし、何とも言えない顔で私を見ていた物。
多分、私にとっての数日間の間にお兄ちゃんは何年もの月日を異世界で過ごしてきたんだよね..そして、お母さんや私に逢えなくて寂しかったんじゃないかな?
だから、お母さんや私に凄く優しいお兄ちゃんになったんだと思うの。
だから、今日は...
「お母さん、偶には家族で何処か出かけない?」
「えっ! そうね翼が良いんだったらいいわ..」
《昔のお兄ちゃんなら此処で確実に断るよ..忙しいとか、勝手に行けばとか言ってさぁ》
「そうだね、せっかくまひるが誘ってくれたんだから出かけるか! 何処に行こうか?」
「....」
《ほらね、やっぱり違う、お母さんのあの顔面白いの! 絶対に断ると思ったんだろうね》
「そう、だったらお母さんこれから支度するわね..翼はどこにいきたいの?」
「特に無いから、お母さんかまひるが決めて!」
「だったら、デパートに行かない、お母さんどうかな?」
「デパートね良いわね、翼もそれで良い?」
「うん、任せるよ!」
《この世界の事は余り知らないから、何処でも楽しそうだ》
前の世界では家族で気軽に出かける事は少なかったな..
「どうしたの翼ったら変な顔をして..」
「いや、母さんが運転する車に乗るの久しぶりだなと思ってさ..」
「そうね、こうして翼と車に乗るのは久しぶりかしら」
「お兄ちゃんは誘っても一緒にお出かけしてくれないからね!」
「そうだったかな?」
「そうだよ!」
「うわ、凄いな」
《何なんだこの巨大な建物はたしかに知識にはあるけど...ここ全部が商品売り場なのか? 王城よりでかいぞ!》
「うん、どうしたのお兄ちゃん?」
《久しぶりだから感動しているんだ..良かったねお兄ちゃん》
「どうしたの翼、大きな声をあげて」
「何でもありません」
「そう、なら良いわ」
やっぱり、お兄ちゃんは変わった..荷物を持ってくれたり、レストランでは椅子を引いてくれたり..
お母さん驚いているよ..
だけど、お兄ちゃんに私なりにお願いがある。
難攻不落のあれに挑戦して貰いたいんだ..
「ねぇ、お兄ちゃん、お兄ちゃんは射撃とかは得意?」
「射撃かーどっちかと言えば弓の方が得意だよ!」
「翼、弓なんて出来るの?」
「少しだよ、あくまで少し」
「流石に剣みたいに使えないでしょう」
「うん」
《お兄ちゃんは弓も使えるみたい..》
「お兄ちゃん、屋上に射撃があるからやってみせて」
「そう、いってみようか?」
「いらっしゃい、1回500円で玉は5発だよ..頑張って
この射撃の最高の景品はSUMOCHI、つまりは高級ゲーム機だ。
だがズルい事に当てて落とした人は居ない..随分前に景品がブレーブステーション3だった頃に何万円も使って前側に落とした人がいたけど、後ろじゃなくちゃ駄目だと貰えなかった。
それ以前に、これ弾を連射で当ててもなかなか動かない、絶対に採れない..つまりズルだ。
「おじさん、これって後ろに落としたら確実に貰えるんだよね!」
「おっ嬢ちゃん詳しいね..そうだよ、前は駄目、後ろに落とした場合のみしか上げられない..と言う事はお嬢ちゃん過去に挑戦したことがあるね」
「うん、採れないからお人形に変えた キデーピーの人形に」
「あっ思い出した、大きな人形をとった嬢ちゃんだ..大きくなったな..これはおじさんピンチだ」
「お兄ちゃん、あのゲーム機が欲しいな」
「まひる、幾らお兄ちゃんでも取れないわよ?」
「頑張ってねお兄ちゃん!」
翼は家族に結構酷い事してたみたいだ..それなのに妹も母さんも凄く優しい..
偶には良い所を見せても良いだろう..
「それじゃやってみようかな!」
「はいよ500円」
500円渡すとコルクの玉を5発貰った、これをこの銃に詰めて撃てば良いんだな。
《必中》のスキルを使った、普段は狩を楽しむために使わない、これは弓や銃で相手を確実に仕留める時に使う技だ。
弾は確実にゲーム機の頭に当たった..だがゲーム機はビクともしない。
「惜しかったな兄ちゃん!」
白々しいな、これ絶対に取れないだろう..
「これ本当にとれるのか?」
「そう簡単に取れたらおじさん、破産しちゃうよ」
明かにズルだな..ならこっちもズルをしよう
《必中、貫通》
必中は狙った所に確実に当てる技だ、貫通は人を貫通させる程の威力で何でも打ち出す。
壊れるといけないから箱の上部を狙う。
「それじゃ、行くよ」
僕が引き金を引くと、まるで本物の銃のように弾がはじき出される..そして弾はゲーム機の上に当たりそのままゲーム機を弾いた。
勿論、しっかりと後ろに落ちた。
「そんな..馬鹿な..」
「これは確実に貰えるわよね..」
「ああっそうだな..だけどその銃を見せてくれるか?」
「何も細工なんてしてませんよ」
「本当だ..そのゲーム機は兄ちゃんの物だ...持っていけ」
「流石、お兄ちゃん凄いしカッコいい..」
「まだ弾は三発あるんだが」
「あっ、そうだな」
「ゲーム機は置かないのか?」
《流石にもう一度は無いだろう》
「兄ちゃんまだゲーム狙うのか..よしおっちゃんと勝負だ」
《必中、貫通》
「そーれと..」
「嘘だろう、また取りやがった..」
僕はゲームに興味ないし、母さんとまひるの分は取ったこれで良いかな。
「兄ちゃん、二台も取られるなんて考えてないからもうゲーム機はないぞ」
もう要らないな..そうかゲームで遊ぶならソフトが必要だな..
その後、二発の弾を使ってスーパーマルコシスターズとトラコクエストをとった。
「はい、これも母さんとまひるにプレゼントするよ」
「ありがとうお兄ちゃん!」
「母さんは余りゲームはしないけど、せっかくだから頂くわ..」
後ろからおやじの泣き声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。
後日談だが二台ともSUMOCHIは壊れていた。
だけど、保証書で修理できたとまひるが喜んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます