第127話 二人の成長度合い


「能力はどうだった? 上がっていたか?」

「これは……どうなんですかね? 上がっていると思うんですけど……どうなのかが分からないです」

「俺も上がっているけど……。凄く上がっていると言われれば上がっているし、あまり上がっていないと言われれば上がってない」

「なんだその曖昧な回答は。ちょっと見せてくれ」


 まずはヘスターの冒険者カードを受け取り、能力の確認を行う。

 前回の数値はあまり覚えていないが、確か魔力が図抜けていて、他は俺の基礎能力値とどっこいどっこいだった印象。



―――――――――――――――


【ヘスター】

適正職業:魔法使い

体力  :28

筋力  :18

耐久力 :21

魔法力 :118

敏捷性 :24


【特殊スキル】

『魔力回復』


【通常スキル】

『魔力暴走』


―――――――――――――――



 やっぱり強いな。

 能力の上昇も万遍なく上がっているし、魔力は更に図抜けている。

 仮に有毒植物がなかったとしたら、俺は絶対に勝つことのできない能力上昇幅だ。


「どうですかね……? 強くなっていますか?」

「ああ、強くなっていると思うぞ。前回の能力判別時よりも、全体的に二倍近くまで上がっているんじゃないか?」

「そうですね! 能力に関しては、全体的に二倍以上は上がっていると思いますね!」

「コンスタントに依頼をこなして、魔力の練習も怠たらなかったもんな。目に見える数値が出て、俺としても良かった」

「ありがとうございます! 全てクリスさんのお陰です!」

「全ては流石に言い過ぎだろ……。次はラルフのを見せてくれ」


 若干嫌がる素振りを見せているラルフから冒険者カードを預かり、すぐに能力値を確認する。

 前回はほとんど能力値で上回られていたからな。

 今回は全てにおいて、上を行きたいところだが……。



―――――――――――――――


【ラルフ】

適正職業:聖騎士

体力  :61

筋力  :46

耐久力 :82

魔法力 :23

敏捷性 :32


【特殊スキル】

『神の加護』


【通常スキル】

『神撃』『守護者の咆哮』


―――――――――――――――



 よしっ!

 魔力以外は全ておいて俺が上回っている。


 ……ただ、やっぱり強いな。

 俺は有毒植物で半分ズルのような行為をして能力を上げているのに、ラルフも必死に食らいついてきている。


 筋力に関していえば、俺が126でラルフが46と圧倒的な差がついているが、それでも三倍くらいの差だからな。

 耐久力でいえば、かなり肉薄しているし……上級職だけあって本当に強くなってきた。


「ラルフも本当に強くなったな。やっぱり上級職だからか?」

「本当か!? ……クリスに競っているか?」

「迫っているとは思うが――残念ながら、俺の方がもっと強くなってる」

「むぐぐ……! それはそうだよな! オークジェネラルもヴェノムパイソンもグリースも……全てクリスが倒しているしよ!」

「俺は植物の力があるからだ。有毒植物がなければ本当に悲惨だぞ。見てみるか? 俺の能力」


 俺は冒険者カードを取り出し、二人に見せた。

 プラス値の能力、それからスキルに驚きを見せていたが……やはりそれ以上に、基礎能力の低さに驚いている様子。


「能力ってこんなに上がらないものなのか? 俺達以上に強い魔物と戦って、倒してきたよな?」

「ラルフがさっき挙げていましたけど、確実に私達よりも難敵と戦って、倒してきているはずです」

「まぁ、これが『天恵の儀』で授かった職業差というものだな。【毒無効】がなく、自力で能力あげなくてはいけないとなっていたら……目も当てられないだろ」

「……そうだな。これだけの戦いを積んできて、この能力しか上昇しないとなると――。確かに戦闘職じゃなきゃ、冒険者としてやっていくのは無理だと思ってしまう」


 ラルフのこの言葉が物語っているように、自力だけで能力を上げなくてはいけないとなっていたら、人生が何回あったとしてもクラウスに届かないと思う。

 ワンチャンかけて毒殺を狙うみたいなことはしたかもしれないが、現実的ではないしな。


 それほどまでに『天恵の儀』が悲惨で、それと同時に【毒無効】のスキルを授かることのできた『天恵の儀』の凄さが伺い知れる。

 

「とりあえず、全員順調にここまでは来れていると分かっただけで良かった。……だからといってこの結果に満足せず、これまでと同じよう二人共に努力してくれると助かる」

「……満足? 全然満足なんて出来るか! クリスにこれ以上置いていかれないよう、これまで以上に努力を重ねるぜ! ――だから、これからもよろしく頼む!」

「私もです! 二人の能力を見させて頂きましたが、私の取柄は魔力一点のみです。長所が魔力しかありませんので、とにかく魔法を使って使って使いまくって――もっともーっと上を目指しますよ!!」


 二人はギラギラとした笑顔でそう宣言してくれた。

 ……本当にこの二人をパーティに選んで良かったな。

 俺の高すぎる目標にも、決して文句を言わずに高みだけを向いてついてきてくれる。


「それは本当に心強い。……明日からはゴールドランクの依頼を受ける予定でいる。その覚悟をしておいてくれ」

「ほー! いよいよゴールドランクの依頼か! シルバーランクも今のところ失敗なしだし、ゴールドランクの依頼も失敗なしを目指そうぜ」

「ですね! 土をつけないように全力で当たらせて頂きます!」


 副ギルド長に冒険者の能力値を聞いてからになるだろうが、二人にも伝えた通り明日からゴールドランクの依頼を受ける予定でいる。

 今日の能力を見る限りでは、二人ともゴールド適正ぐらいの能力はあると踏んでいるからな。


 依頼等は明日、実際に掲示板を見て決めるとして――。

 今日は明日に向けての準備に移ろうか。

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