第42話 選定
魔導書を購入した翌日。
今日ははぐれ牛鳥狩りは行わず、久しぶりの買い物や教会にて一ヶ月ぶりの能力判別を行う予定。
そして午後はヘスターの魔法練習に付き合うという、完全な休養日となっている。
ちなみに、熊型魔物に襲われたあの採取後のステータスなのだが……。
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【クリス】
適正職業:農民
体力 :11(+12)
筋力 :6 (+8)
耐久力 :7 (+8)
魔法力 :1
敏捷性 :4
【特殊スキル】
『毒無効』
【通常スキル】
なし
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――と、ペイシャの森で直食いしたお陰で、プラスの能力値がかなり上昇していた。
更にここから、ペイシャの森でせこせこと作ったレイゼン草とゲンペイ茸の天日干しを、この一ヶ月間で完食し切っている。
はぐれ牛鳥狩りでは攻撃を受けることなんてないため、体感では何も変わっていないようにしか思えないのだが、どうなっているのかはかなり楽しみ。
そして今日は続けて、ずっと温存していた新種の植物識別も行っていこうと思っている。
まずはレイゼン草とゲンペイ茸でどれだけの能力が上がったのを確認してから、一度宿に戻って新種の植物を半分食べてまた識別。
なるべく今日中に全種類の識別を行ってしまいたいが、オブラートという秘密兵器があれど、腹に入る限度は決まっているため難しいだろうな。
一日の予定をおさらいしてから、教会が開くまでの間に買い物を済ませるため、俺は珍しく表通りへと向かった。
今日買う予定の物は、新しい剣と防具。
剣は大事に使っていたのだが、掘り出し物置き場に置かれていた品なのと、軽い解体作業までこの剣で済ませてしまっていたため、早くも切れ味が落ちてきてしまっていた。
それでも押し斬るように無理やり使っていたのだが、流石にもう替え時だ。
防具の方も血生臭さがこびりついてしまっているため、そろそろ替えないと周りの目が痛い。
皮の鎧はそう大した値段ではないため、防具に関しては気楽に替えることができる。
問題なのはやはり剣なのだが……。
はたしてどれぐらいのランクの剣を買うか、ここ数日間ずっと頭を悩ませている。
掘り出し物のあの剣も別に使い勝手は悪くはなかったし、今はまだあの程度の剣でいいような気もするが、長期的にみると良い剣を買って大事に長く使った方が、質の良い物が手に入る上に安上がりとなる。
それに熊型魔物のこともあるし、いつ何が起こるのかなんて誰にも分からない。
今は手持ちの金に余裕があるし、質の高い剣を買えるなら買うのがいいのが正解だと思っているのだが、ラルフの治療費を考えると今は安く済ませる方が重要なんじゃないかとも思うのだ。
結局、武器屋に着くまでに決めきることはできず、一通り剣を見てからどうするか決めることにした。
まずは店の外に置かれている、“一律銀貨六枚”と書かれた掘り出し物置き場の中から漁っていく。
前回はここで今まで使用していた剣を見つけたのだが、やっぱり質の高いものは置かれていないな。
中でも幾分かマシなものを一本だけ選別し、念のため手に持ってから店内へと入った。
刀掛けに掛けられているものから、ガラスのショーケースに入っているもの。
それから、紙に情報だけが記載されていて店頭には置かれてすらいないものなど、かなりの種類の剣が取り揃えられている。
もちろん剣だけでなく、槍やハンマーに弓から杖と、多種多様な武器も取り揃えられているのだが、まともに扱えるのは剣だけだし他の武器の検討は一切する気がない。
一通り全ての剣を見て、質の高いものではなくコストパフォーマンスが高いものを中心に選んでいこうと思う。
刀掛けに掛けられているのは手に取れるため手に取って見て、ショーケースに入っているのは様々な角度から観察。
店頭にすら置かれていないものに関しては、値段が高すぎるため省いて考える。
一時間ほどの検討の結果、刀掛けにあるもので目に留まったのは、レイピアに近い細見の鋼の剣と、柄に十字架が象られているアンデッドの魔物にも攻撃の通ると書かれた鉄製の魔法剣。
ショーケースに入っているもので目に留まったのは、ミスリルの剣にドラゴンの牙が練り込まれた真っ赤な刀身の剣。
値段でいうと細見の鋼の剣が一番安価で、ドラゴンの剣が一番高価。
コストパフォーマンスでいうなら、ドラゴンの剣が一生もので一番良いと思うのだが……今の俺が手を出せるレベルの額ではない。
一番惹かれた剣であり名残惜しさもあるが、無理やり断ち切って三本の中から選ぶことに決めた。
細見の鋼の剣か十字架の象られた鉄の剣、はたまた掘り出し物から選んだ若干錆びた鉄の剣。
三本の剣を見比べながら俺は……細見の鋼の剣に決めた。
三者三様で利点があるのだが、これからも積極的に戦っていくだろうはぐれ牛鳥を主として考えた時、一番良いのは鋼の剣のように思えた。
アンデッドにも攻撃が通るのは魅力的だが、アンデッドと戦う時以外はただの鉄の剣となってしまう十字架の象られた剣は、まず除外。
錆びにさえ目を瞑ればなんとか使える鉄の剣も、毎度の手入れをするための金額や労力を考えたら、やはり使い勝手が悪い。
となると、細見なのが若干気になりはしつつも、鋼で作られた剣が一番長持ちすると考えた。
頭を悩みに悩ませたが、ようやく購入する剣を決めた俺は細見の鋼の剣と鞘を金貨四枚で購入。
更にやっすい皮の鎧も購入したところで、予想以上に長居してしまった武器屋を後にした。
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