擬似デスゲームVRMMO【ラボアピナ】

無計画長男

新人冒険者

1.チュートリアルその1


 西暦3000年。

 AIが発達し、人間はAIに仕事を任せて娯楽に生きるようになっていた。

 ゲームでさえAIが作るようになり、ついにはVRMMOを作るに至った。


「ラボアピナ」


 曰く、もうひとつの現実。

 曰く、1度死んでしまうとログイン出来なくなる。

 曰く、記憶を現実に持って来れない。


 曰く、クリアすると願いが叶う。


 もちろん、それを信じてる訳では無いが、興味はある。願いが叶うなら良し、叶わないとしても楽しめるなら良し。

 所詮、ただのゲームだ。そう思っていた。


 実際にログインするまでは…。



 ♢♢♢



 VR機器を付けてラボアピナにログインした私は、まずその光景に驚いた。

 穏やかな風、気持ちのいい太陽、あまりにも完璧な草原だ。


「ここは…」


「チュートリアルへようこそ!」


「わっ」


 後ろから元気な声が響いてきてびっくりした。振り返って確認してみると、妖精がいた。


「…妖精?」


「ピンポーン!ボクはチュートリアル役のレピィ!短い間だけよろしくね!」


「よろしく」


「じゃあ早速だけど、このゲームの基本を説明するね?」


「うん」


「この世界にはステータスって言って、自分の格を確認することができるんだよ!」


「格?」


「簡単に言うと、どれくらい強いかっていう数値だね!ステータスって心の中で考えてみて!」


 言われた通りに考えてみると、半透明なパネルが見えた。


 ―――ステータス―――

 N:not set

 J:not set

 LV:1

 HP:10/10

 MP:10/10

 B:1

 STR:10

 INT:10

 AGI:10

 DEX:10


 SKILLS

〈ステータスLV1〉

 ―――――――――――


「数字がいっぱいある…」


「LVっていうのが格、つまりは強さの目安だよ!他のステータスが一定の基準を満たした場合にLVが上がるんだ!」


「このNとJは?」


「Nは名前だね!自分の名前は何とかだ!って強く思うとその名前になるよ!1度名前を付けたら変えることは出来ないから気を付けてね!」


 名前か。私の名前は、そうだな。せっかくのゲームだし、リルにしよう。


「Jは職業!これは自分で勝手に名乗ることは出来ないんだ…。同じ職業の人から認めてもらうことで、設定できるようになるんだ!」


「じゃあ私は無職…?」


 現実でも無職は人聞きが悪い。AIに仕事をさせるようになっても、形だけでも仕事をしていることにしないと落ち着かないのだろう。


「無職は可哀想だから特別に、ボクが職業を授けてあげよう!キミの職業は…冒険者だ!」


「ありがとう?」


 別に私は無職でも良かったんだけど、貰えるものは貰っておこう。


「他のステータスは実際に体を動かしながら説明するよ!まずはスライムを殴ってみよう!」


 レピィが指を鳴らすと、目の前にスライムが現れた。青色のぷにぷにした体はとても弱そうだ。

 言われた通りに殴ると、ぶにゅんと抵抗を感じた。


「違和感があったよね?それがステータスのB、バリアだよ!攻撃に対してダメージを一定で吸収してくれるんだ!STR、力が上がるとより倒しやすくなるよ!」


 何回か殴るとスライムは消滅した。白い煙を出して残ったのは、小さい青色の石だ。


「それが魔石だよ!冒険者ギルドに行くとお金に換金出来るからちゃんと集めようね!」


 とりあえず魔石をポケットに入れたけど、魔石を入れる袋を買わないとだな。


「さて、残ってるステータスはHP、MP、INT、AGI、DEXだね。キミはHPとはなんだと思う?」


 ヒットポイント、体力の略称だろう。つまり、生命力的なものだろうか。


「生命力?」


「ぶっぶー!この世界のHPはちょっと特別でね!HPが満タンだろうと死ぬし、逆にHPが0になっても死ぬわけじゃないんだ!」


「じゃあHPってなんなの?」


「説明が難しいんだけど、簡単に言うならコンディションみたいなものかな。HPが減れば減るほどパフォーマンスが悪くなっていくんだ!ステータスの値が下がったりするから、HPが減ると死にやすくはなるんだよ!」


「難しいね」


「ところが!冒険者の職業を持っていると、スキル〈直感〉で自分のHPの減り具合とかが感覚的に分かるようになるんだ!しかも、職業を変えてもスキルは残るんだ!」


「すごいね」


「もっとボクを褒めてもいいんだよ?あっはっはー!」


 レピィは分かりやすく上機嫌になった。


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