第9話:担任教師西新という男
俺と担任教師、西新は教室に戻った。たまたま午後イチの授業が西新の担当である教科国語だったのだ。
(ガラガラガラ)「おらー! 全員席につけー!」
西新のデカい声で蜘蛛の子を散らす様に生徒たちが自分の席に戻る。
俺は、不貞腐れ顔で自分の席にゆっくりと戻った。当然、いつもの様に前髪はおろしていて表情は見えにくくなっている。
「神庭、以後くれぐれも注意しろよ!」
予定通りに西新が俺を注意した。
「うっせぇ」
一応控えめに憎まれ口を叩いたが、西新はこれに反応せず次の話題に移った。
「
「なんすか?」
安彦が不機嫌そうに返事をした。
「先日、井口の頬を殴ったらしいな。わざとか⁉」
「ち、違います!」
安彦が俺の方に視線を送って、怯えるように答えた。
「ちゃんと井口に謝ったか? まだなら、ちゃんと謝れよ!」
「あ、はい……」
「なんだ、まだ謝ってないのか? ちゃんと井口のところに行って謝って、許してもらえ」
「……」
もっのすごく、不機嫌そうだけど安彦が自分の席から遥の席まで移動する。途中、俺がずっとにらみを利かせていたからか、あからさまに遠回りして遥の席のところまで行った。
「ご、ごめん」
「ええ」
安彦は遥ではなく、俺の方を見ていた。
「ん、んん!」
俺は咳払いをした。
「井口さん、ごめん!」
今度はちゃんと遥の方を見て謝ったようだ。
安彦がその後、自分の席に戻るまでクラスのほぼ全員が安彦に注目していた。これだけ全員の前で謝罪させられたのだから、今後しばらくは静かにしているだろう。
俺が気になっていたのは、みんなが安彦を見ている時に、遥かだけは俺の方を見ていたことだ。
半眼が俺を無言で責めていた。
あの目は、「あなたでしょ!」という疑いのない断定の目だ。
俺はその追及を逸らす術を知らないので、目をそらして無関係を装った。
「よーし、じゃあ、授業に入るぞー」
一転、爽やかな口調で授業に入る西新。
俺との約束を果たしたし、なんか上司から褒められたらしいし良かったのだろう。俺も「教師に注意される悪いヤツ」という印象をクラスのヤツに与えられたので、若干ではあるが、無事イメージダウンを図ることができた。
もうしばらく、西新との「奇妙な協力関係」は続きそうだ。
俺が、無事イメージダウンを図ったと思ったのに、翌日 教室の空気が一気に変わる。
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