あの日壊れたものを直す方法を知るには俺たちはまだ若すぎた

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

第1話:周囲から避けられるようにしていたのに


「てめえ! なんか文句あんのか!?」


「いっ、いや! なんでもないよ! ごめん! 神庭かんばくん!」



 昼休み、特に理由はないけれどクラスメイトと目が合ったので、胸倉を掴んで威圧してみた。時々は、こんなことでもしないと周囲を威圧し続けるのは難しい。段々と人が慣れていくからだ。


 もうこんなことを続けて1年以上が経つ。1年、2年と同じクラスなので、俺に話しかけてくるやつなど誰もいない。


 昨日、ある情報を手に入れた。そこでそいつを呼びだすことにした。



「田中ぁ!」


「は、はいっ!」



 俺はクラスメイトの男子、田中を呼んだ。教室の中の空気が固まった。


 田中は俺に呼ばれるとビビりあがりながら俺の席まで走ってやってきた。


 俺は立ち上がるとガッシリと田中の肩を組んで低い声で言った。



「お前、鈴木をSNSでいじめてるらしいなぁ」


「そっ、そんな いじめなんて……」


「鈴木ぃ!」


「はっ、はいいい!!」


「こっちこーい!」



 鈴木もダッシュでやってきた。



「スマホ見せろ!」


「は、はい!」



 鈴木は田中に視線を一瞬送ったけれど、俺に睨まれてスマホを机の上に出した。

 そこには、精神的に追い詰める様な陰湿ないじめの証拠がそこにあった。


 こんな時のために、俺は前髪を垂らしていて、睨み付けるとドスが利くようにしている。その目で田中を凝視し、相手が十分ビビりあがっているのを確認した。


 俺は肩を組んだまま田中に言った。



「鈴木は俺がいじめるんだよ! お前が手ぇだすな!」


「は、はいぃ!」


「もう、行け」



 俺は田中を開放した。



「鈴木ぃ!」


「はははいいぃ!」



 鈴木はビビりあがっている。



「こっちこい!」



 俺は鈴木の襟首を掴んで廊下に引きずり出した。そのまま廊下を通り、屋上に続く階段をのぼった。


 屋上への扉がある階段の踊り場。鈴木は既に半泣き状態。俺は鈴木に近づくと、1歩1歩後ずさり壁に当たると座り込んでしまった。


 俺は顔を近づけて小さい声で言った。



「つまんない いじめになんてあってんじゃない。SNSの田中の友達登録は消せ。何か聞かれたら俺に消されたって言っとけ」


「?」



 鈴木がキョトーンという顔をしている。



「あと、教室に帰る前にシャツを片方すそを出して、片足引きずりながら戻れ」


「え? えっと……」


「俺と二人で出て言ったのに、普通に戻って行かれたら俺のいじめっ子イメージが崩れるんだよ。ボコられたっぽくして戻れ」


「それって、僕は殴られないって……こと?」


「なんで俺がお前を殴るんだよ。なんも恨みとかないわ」


「俺が先に戻るから、お前は少し後から足を引きずって戻ってこい」


「はっ、はい!」



 クラスにいじめとかあったら気分悪い。しかも、俺の「いじめっ子キャラ」が目立たなくなってしまう。せっかく苦労してここまで積み上げて来たのにそれが水の泡になるわ。


 俺は、「ふん」と鼻を鳴らしながら教室に戻りドカリと席についた。



「……」



 無言だけど、明らかに何か一言言いたそうな女子、井口いぐちはるか


 当然、俺は何も言わない。腕を組んで席についたままだ。


 少しして、さっきの鈴木が足を引きずりながら教室に帰ってきた。


 うん、中々 役者だな。



紀一郎きいちろう、ちょっと……」



 結局、遥に呼びだされてしまった。

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