幻想
皐月ゆず
プロローグ
…どうしてこうなったんだろう。
いくら考えてもわからない。いや、わかってはいるがわかりたくない、と言うべきだろうか。
「…よって、被告人を死刑に処す」
無機質な声が響く。
ああ、俺は死ぬんだな。なんとかして死を回避できないか…
まわりを見渡す。どこもかしこも人だらけだ。
全員、俺の首が刎ねられるのを見にきたらしい。
しかし、こうも人が多いと逃げられそうにはなさそうだ。
受け入れたくないが、受け入れるしかないのだろう。
台の上に寝かされ、首を固定される。観客は俺
をワクワクしながら見つめている。
その大勢の中にあの人がいないか探してしまう。もういないとわかっているのに。
「もう一度会いたかっ…」
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