第58話

 現在。俺はロッテに『魔力譲渡』をする為に抱きついているのだが──


 何故かマイ、ティナ、アリアは俺に抱きついている。


 四方おっぱいだ固めだッ!


 帰宅した俺はミーティングで魔力回復ポーションが品切れだったと伝えた。


 薬が作れなくなる事を懸念し、皆の雰囲気が暗くなった。そこで俺が「魔力を回復させる手段がある。俺の加護で魔力譲渡が行える」と言うと──


 皆が賞賛してくれたが、通常は簡単に魔力譲渡が出来ない事を知っている為、少し疑っていた。


 そこで俺は論より証拠だと即座にロッテを抱きしめる。


「ふぇ? え? 回復してる?? 凄い……」


 すると、「「「ずるいッ!」」」と他の3人が俺に抱きついて今に至るわけだ。



 とてもフローラルな匂いが心地良い──


 そして何より柔らかくて包まれてる感じが気持ち良い。


 これぞ、癒しだ……。


 こんなハーレムなら大歓迎だなッ!


 これでヤれたらもっと嬉しいがなッ!



 そんな俺にマイが俺に囁いてきた。


「エルク様が魔力譲渡を行えるのはわかりました。これからは分身でやって下さいね?」


「え? 何で?」


 マイから死刑宣告を受けた気がした。


「分身体を見る限り──本体でなくても加護が発動しているみたいなので、エルク様はやらなければならない事を優先して下さい」


 なんだってぇぇぇぇッ!?


 だが、マイの口元は笑っているのに目が笑っていない。


 おそらくこれが──1号がマイ達に逆らえなかった理由なのかもしれない。


 逆らえば俺は大変な目に合う気がする。


「……わかった……」


「良い判断です。本当はエッチな事がしたいんですよね? だから私達がこれからサービスしちゃいますね♡」


 しばらく、スリスリやパフパフなど色々とサービスしてくれた。


 あそこが暴発寸前の所でやめられた俺は超不完全燃焼だったが……いや、醜態を晒す前に終わって助かったかもしれないな……。




 俺は夜中に『病魔』カインを探す為に孤児院を抜け出す。


 皆には貴族街を捜索すると伝えている。


 1人の方が動きやすいのだが、信用が無いのか、「えっちぃお店ダメ」とティナから連呼された……。


 お陰でティナも連れて行く事になった。


 他はロッテの護衛を頼んだ。狙われているし、襲われる可能性もあるからな。


 あと、ロッテの魔力回復役は多めに魔力を分けた分身にした。1号は自我があるので、却下した。


 信用してないわけじゃないが、分身は魔契約が発動しない。仮に過ちが起これば──


 凄く羨ましいじゃないかッ!


 という理由だ。




 俺とティナは黒いフードを被って、夜の街に繰り出す──



 しばらくすると、貴族街に到着する。


 ここまで来るまで街の様子も見たが、出歩く人はほとんどおらず閑散としていた。


 貴族街も同じだ。


 俺は分身体3体と1号を出して、ティナと共に手分けして捜索を開始する──



 ────


 ────────


 ────────────



「エル兄、こっちは手掛かりなし」


「そうか、こっちもだ」


 今の所──怪しい人影はない。


 【深淵】はロッテの居場所を探っているはずだが、【絆】を警戒して慎重になっているのかもしれない。


 ラウンズであるアリアが動いたのが仇になったか?



 さて、既に日付けも変わっている。


 これ以上の捜索は無意味かもしれんな……。


 とりあえず、【祝福ログインボーナス】してから帰るか……。


『鑑定』から前みたいに情報貰えないから、これで何か示唆してくれるとありがたい。



 ピコンッ


『失礼なッ! 今派手に動いたら上司にバレるだろッ! 仕方ない──情報をやろう。お前にはご都合展開が待っている。ってか上司来たわ! またな!』


 忙しい奴だな……危ない橋を渡るなよ……。


 ご都合展開か……これは期待出来るかもしれんな。



祝福ログインボーナス】を使用すると目の前に文字が表示されて箱が出現する──


[アドバイス付き【祝福ログインボーナス】くじ引き]


 おぉ!? こういうの今求めてた!


 神様さすがだぜッ!



 俺は箱に手を突っ込む──



 願わくば──敵を発見出来るスキルか──今度こそ戦闘スキルを────


 ご都合展開ならこの2つの内、どちらか当たるだろうッ!



 中にある紙を引っこ抜き中身を見る──



[病気が流行っているので『健康』スキルで予防しましょう]


 …………いや、確かに流行ってるけどさ……ここまでの流れがご都合展開だったとかないよな?



 その時──頭の中に声が聞こえて来た。


(本体ッ!)


 ん? 分身体から連絡って事は1号か?


 まさか【深淵】を発見したのか?!


 ……って、画面確認したら──ロッテの魔力補充用に置いてきた分身じゃねぇか……こいつも自我に目覚めたのか?


(なんだ?)


(ロッテのおっぱい超柔らかいッ!)


 ……こいつは何を報告してるんだ?


(……そっちの状況は?)


(変わり無しだな。『魔力自動回復』スキルがあっても魔力の補充が間に合わない。そろそろ俺の魔力が切れて消えるから戻ってきてくれ)


 魔力が切れそうだから自我に目覚めたと信じたい……。


 おっぱいが気持ち良くて自我に目覚めたとかじゃないだろうな?



(了解──)


 とりあえず、帰るか──


「ティナ帰るぞ──!?」


「──エル兄、当たりを引いたっぽい」


 勘違いではないみたいだな。この感じ──敵だ。


「そう、みたいだな……ここでるぞ」


「任せて」


 俺達は近付いてくる気配の方を見詰めると──


 男の姿を視認する。


 殺気を撒き散らしているくらいだ。確実に【深淵】だろう。


 口元を三日月状にして話しかけてくる──


「お前ら──【絆】だよな?」


 冷や汗が出る──


 俺はこれでも修羅場を潜り抜けてきた自負がある。


 だが、こいつは裏社会で出会ったどの敵より確実に強い事がわかる。


 この裏の雰囲気は──久しぶりだな。


 間違いなく『病魔』だろう。こいつだけは確実に仕留めなければならない。



「そういうお前は【深淵】だろ? 『病魔』カイン?」


「ふん、そんな事はどうでも良い。誰であろうと殺す。ロッテとかいう女を横取りしたのはお前らだな? どこにいるか教えろ」


「俺達に勝てれば教えてやるよ」


「中々、威勢が良いじゃねぇか。さっさと教えないと──殺すぞ?」


 カインは一瞬で俺に近付く──


 手にはナイフを持っている。



 ナイフが当たる──


「エル兄ッ! ──ちッ」


「──?! ティナッ!?」


 ティナは俺を庇って腕に怪我を負う。


 くそッ、初めから『身体強化(極)』を使っていれば良かった。


 こんな初歩的なミスをするとは……。


 それにティナが攻撃を弾ききれなかった事も予想外だ。


 これが【深淵】か……。


 だが、こちらも負けてはいない。なんせティナは『無音サイレンサー』だからなッ!


 ティナよりは間違いなく遅いのは確定だ。



「……確実に胸を貫いたと思ったが──やるじゃねぇか……初手が避けられたのは久しぶりだ」


 カインは再度構える──



「ティナ動けるか?」

「……キツい……あのナイフに毒塗ってある……」


 マジかよ……。


「何の毒かわかるか?」

「麻痺毒」


 とりあえず、致死性の毒ではないなら安心だ。


「わかった。ティナは見学しておけ」

「……了解」


 不服そうにティナは頷いているが、従うという事はかなりキツいのだろう。


 しかし、格好つけたが──


 準備無しで俺がなんとか出来るレベルじゃねぇんだよな……。


 だが、ここでこいつを殺せば事態は丸く収まる。


 俺が実戦で『幻影魔法』を使いこなして殺すしかねぇな──


 俺は『幻影魔法』を使用する──

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