第53話
「──とまぁ、そんな事が冒険者ギルドであったんだ。ライクさんいなけりゃポックル草を買い取って貰えなくてヤバかったわ」
現在、俺は冒険者ギルドから帰り、マイ、ティナ、アリアとミーティングをしているところだ。
とりあえず、今日あった事を話したんだが──
「ちょっと、散歩してくる」
「あ、私も」
「私も気になる事を聞き込みをしてきます」
ティナ、マイ、アリアの順で席をスッと立ちながらそう言われた。
「ちょっと待とうかッ!?」
「「「ん?」」」
「お前ら絶対、闇討ちするつもりだろ!? 今はそんな事よりも今後どうするかの方が重要だ」
「「「……」」」
沈黙は肯定と取るぞ?!
俺の為に動こうとしてくれるのは嬉しいものだが──
何故、俺の周りには物騒な連中しか集まらんのだ?
「さて、アリアの方はどうだった? 『病魔』の足取りは掴めたか?」
「……『病魔』の足取りは掴めずです。この街にいるかどうかも不明ですね……」
「そうか……──他に何か情報があれば頼む」
「──既にかなりのスラムの住民が石化病に感染していました……症状が進んで動けなくなっている人達がいた事から既に感染から数日は過ぎている可能性がありますね……重症者を優先して手持ちの薬は既に配っていますが宜しかったですよね?」
マジか……そこまで酷い状況とはな……。
薬が余っていれば、ライクさんに譲りたかったんだがな……既に無い──か……。
「あぁ、構わない。フランから追加の薬はいつ届く?」
「……おそらく──5日後には届くかと思います……エルドラン国王も本日、国内及び周辺国に警戒と要請をしたようなので近いうちに薬は入るかと思いますが……感染状況を考えるに王都の住人のほとんどに感染が拡がる可能性があります……」
一応、国としてもちゃんと動いているようだが──
ライクさんに渡すのは間に合わないか……初めからアリアから貰っておけばよかったな。
薬が届くまでに被害が大きくなるか……。
「そんなに感染しているのか? 王都の薬師ギルドが襲撃されたと言っても、薬は供給出来るんだろ?」
「……念の為に薬師ギルドを調べましたが、石化病の薬を作るのは相当困難な状況のようですね……一応、作れる人は何人かいるようですが、人数が足りないらしいです。宮廷薬師も動いていますが──ポックル草を集めたところで作り手がほとんどいないので供給出来るかどうか……」
完全に詰んでるじゃないか……。
『病魔』は愉快犯だと聞いているが、これは計画的な犯行だ。
──もう1人敵がいる可能性が高いか? それとも『病魔』はかなりの切れ者か?
アリアが探しても見つからない以上はこの街にいるのかも不明だ。いや、いたとしても【深淵】のメンバーだ。そう簡単に見つからないだろう。
この現状を今から覆すのは不可能だろう。
「よし──今後の方針を少し変える。ポックル草の採取は続ける。材料が無ければ薬は作れないからな。マイとティナは俺の分身体と共に緊急依頼をこなす」
「「はい……」」
マイとティナは返事をする。
「アリアは今日と同じく、情報収集及び、裏の情報網を使って【深淵】の足取りを追ってくれ」
「わかりました」
3人の表情は暗い。
こんなどうしようもない状況からなんとか出来るとは思っていないのだろう。
「皆、そんな顔をするな。諦めるにはまだ早いぞ?」
そう、俺は最悪の想定はしていた。
俺が敵なら──
どうするだろうか?
──とは考えていたからな。
奴らの目的はロッテだ。
だが、ロッテは国王の隠し子だ。国王に匿われている可能性もあるから、そう簡単に手が出せないだろう。
『マップ』にはまだ反応がある事から生きているのは間違いない。
奴らはロッテを探しているはずだ。
俺もロッテを探せば敵の尻尾が掴めるかもしれない。
となれば、俺のやる事はロッテを探し出して敵が現れれば──
──殺す。
仮に取り逃しても、ロッテは宮廷薬師だ。薬を作って貰えばスラムの人達や街の住人にも薬を供給する事が出来るだろう。
──と言っても、被害を最小限にするぐらいしか出来ないだろうがな。
『調合』スキルが手に入れば別だが、当たるかどうかもわからない物に頼るよりは出来る事をして足掻くッ!
他人に頼ってもどうにもならない。そんな甘い考えはスラムに入ってから捨てた。
だが、今は頼れる仲間がいる。
後は、行動をするのみだ。
「エルク様はこのどうしようもない状況をどうにか出来るんですか?」
アリアが聞いてくる。マイとティナも本当になんとかなるのか不安そうな顔をしている。
「そうだ。俺1人では出来ないが──力を合わせれば成し遂げられると思っている。これは想定の範囲内だ。被害は出るかもしれないが、最小に抑える為に動くべきだろう。まだ──始まったばかりだぞ?」
俺の言葉に皆が強く頷く。
「明日からは忙しくなる。今日は早めに休むようにするぞ」
「エルク様は明日以降はどうなさるんですか?」
マイとティナは俺と別行動をするのに不満がある感じだな。
「──俺はこの状況を覆す為にやる事がある。お前らは強い──だが、それだけでは今回はどうにもならないだろう。失敗は許されないのはわかるな? 適材適所で各自が行動する必要がある」
遠回しについてくるなと言ってみる。
「「……」」
まだ、不満そうだな……。
まさか、この状況で俺がエロい店に行くと思ってないよな??
一応、念押ししておくか……。
「俺は決してエロい店に行くわけではない。約束しよう」
「わかりました」
「なら良い」
……ここまで言わないとダメなものなのか?
俺って、そんなに信用ないのか!?
ピコンッ
『そこは、ほら──普段の行いが悪いからな。絶倫王(極)だし』
そんな事ねぇよ!?
最近、股間が破裂しそうなぐらいは痛くないから、前みたいに娼館に行こうとしてないぞ!?
俺達はその後、明日からの各自の行動を確認してから解散して宿屋に戻った──
なにやら、3人でこそこそ話していたが声が小さくてあまり聞こえなかった。
『抜け駆け禁止』というワードだけは聞き取れたが……おそらく、自分勝手に行動しないという事を話していたのだと思う。
ピコンッ
『明日が楽しみだなぁ』
なにその反応!?
◇◇◇
次の日の朝──
股間が破裂しそうなぐらい痛くて飛び起きた。
パンツとズボンにあそこが押さえつけられて余計に痛い。
更に言えば、マイは俺を抱き枕にして寝ており、おっぱい俺の顔は埋もれている。
そして、ティナは俺のふとももの間におり、足を絡ませてスリスリしている。
女の子特有の柔らかい感触で股間の痛さは倍増されている。
更に言えば、2人は何故か裸なので余計に俺の理性を破壊してくる。
とてもムラムラする……襲いたい……。
たぶん、これ普通に襲っても大丈夫なやつだと思うんだよな……。
でも、襲えば終わるからな……。
最近はこんな事なかったのにな……俺の賢者モードは終わったのかもしれない……。
今度からは部屋を別々にしてもらおう──
◇◇◇
俺達は朝飯を食った後、行動を開始した──
俺の作れる分身体は最大5体だ。
その内、4体をマイとティナにつけ採取させる。
同じ人物が4人いたら不自然なので、『幻影魔法』で姿を誤魔化して採取する予定だ。マイとティナは周辺の魔物を狩って護衛する係だ。
もう1体はアリアを尾行させる事にした。
なぜ尾行させたのか?
アリアは【絆】では精鋭だが、ガチの戦闘向きでは無い。【深淵】のメンバーは戦闘狂の精鋭だから──
『病魔』カインと接触した時にフォローに入れるようにこっそり尾行させている。これは本人に伝えていない。
敵がカインだけとは限らないからな。
最悪、戦闘になれば──アリアを撤退させて顔を見れれば問題ない。
顔がわかっていれば『マップ』でマーキング可能だからな。
後で始末する為にも必要な事だ。
「さて、俺も行くか──『マップ』起動──」
探すのはロッテだ。
どこにいるのか確認し、薬を作ってもらう為に連れ去ろうと思っている。
スラムに供給する薬は確保したいからな。
王城にいたとしても俺の力なら問題ない。
もう手段など選ばない──
俺はロッテの反応がある場所まで向かう──
場所は王都の中だ。ただ、気になるのは貴族街ではなく、商業区に反応がある事だ。
こんな所にいれば簡単にターゲットにされそうなもんなんだがな……。
ピコンッ
『わくわく』
いや、何が?!
「──ここか?」
目の前の建物にロッテの反応があった。
ここは──
奴隷商なんだが?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます