好きな人のためなら、全力でいくよ

@oriental

第1話

 大学1年生の夏、年上の女性と知り合い、生まれて初めて恋して、その恋が唐突に終わった。

 私は傷心のまま2年生になり、夏を迎える頃には、再びその女性との出会いをを思い出し、心が傷んだ。


 このままでは、何もできないうち今年の夏が終わってしまうと感じ、何かに没頭しようと思った。


 ちょうどその頃window10が発表され、ディスクトップパソコンが欲しいと思っていたこともあり、ひと夏アルバイトに明け暮れようかと考えた。


 両親に相談したところ、父親が知り合いのつてをたどり、温泉旅館のアルバイトを、紹介してくれた。

 その温泉旅館は、老舗で和風建築、見た目は古いけど内装は完全リフォームされ、 夏から秋にかけては、たいへん混雑するということでだった。


 さっそく面接を受け、知り合いの紹介で採用ということで即採用され、7月下旬から9月中旬頃まで、大学のほぼ夏休みいっぱい、アルバイトをすることになった。


 待遇は、住み込みで三食付き、時給は実働時間から換算すると千円ほど、予約状況を見て平日が休みとなり、土日祭日とその前後、お盆、それに花火大会などの、イベントの前後は休めない。


 嬉しいのは、車の免許がない私に配慮してくれたのか、休日はそのまま自室に泊まってもOKで、食事も出してくれるらしい。


 仕事の内容は、午前中は、お客様が朝食を摂っている間の、布団の片付け、チェックアウト後の部屋と館内清掃、午後は大浴場の清掃、お客様が夕食を摂っている間の、布団引きだが、その合間合間に雑用もある。


 初日は、

「私は、大沢勇樹と言います。大学2年生で20歳、まだ世間知らずなので、よろしくお願いしますと挨拶した。

 その後、お客様への挨拶の仕方を教えられ、作務衣のようにユニホームを着て、 旅館内を案内された。


 案内してくれたのは、旅館の跡取り娘という22歳の、美人で上品な千晴さんで、

 今春大学を卒業したばかりとのこと。

 モデルの長谷川潤さんと目鼻立ちは似ているなと思ったけど、千晴さんは若くて、

 もう少し和風美人な感じ、身長は私より少し低いから165cmほどかな、そしてスレンダーなモデル体型で、何を着ても似合う感じだ。


 千晴さんは、ちょっとハスキーな声で、声量も多く、お客様を迎える時も良く声が響き、笑顔も綺麗なためか、見惚れるお客様もいたほどだ。


 裏方さんのチーフは、50代の女性で、その人の指導を受けながら、布団の上げ下、

 部屋の掃除、大浴場を含めた館内の清掃などを覚えていった。

 私が慣れるまで、チーフが一緒に作業し、3日後、千晴さんが私の仕事ぶりをチェクし、合格をもらうことができた。


 その後、初めての休日となった。

 休日は何もすることがないので、部屋にこもってスマホをいじるか、従業員食堂兼休憩室のテレビを見るか、旅館の周囲の大自然を散策するか、そして、遠くへ行くには自転車を使うしかない。


 そんな時、千晴さんが私の部屋に来て、

「勇樹くん、町に行くけど、一緒に行く?」

 と聞いてきた。


 どうやら、町のスーパーまで買い物に行くから、暇している私を誘ってくれたらしい。

 あまりにも暇で、しかも美人のお誘いに対し、即座に、

「お願いします」

 と答えた。

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