◆在るべきところへ◇2話◇四人の人間の話 ①

◆在るべきところへ◇2話◇四人の人間の話 ①



 息の根を止めた砂ミミズを食料用に捌こうと、インティスは水の精霊ライネと再び砂漠を歩いていた。

 嵐が来そうな気配はまだない。風で辺りの砂が巻き上げられると厄介なので、片付けるのなら今のうちだ。


 ……とはいえ。


「……さっきのやつ、何なんだろ」


 インティスが思わず呟いたのは、賢者を探してやって来たあの銀の髪の男のことだ。


「わかんないけど、でも変なやつじゃないみたい」

「本当?」


 水の精霊の案外しっかりした内容の返事に、インティスは思わず聞き返した。


「あの人、風の精霊と契約してるわ。周りに精霊の気配がするもの。ちゃんと魔法を使えないとできないことよ」

「へえ……」


 それは意外だった。魔法が使えるなら、一般人とは何かしら違うのではないだろうか。砂ミミズに追いかけ回されることなどないと思ったのだが。


「まあ、契約してても精霊は現地調達だから、国が変われば言うこと聞かないかもね」

「そういうことか」


 結局便利そうに見えて不便じゃん、なんて思い、インティスは溜息をつく。


 そういえば、魔法を教えて下さいってレイを訪ねてくるやつもいたことを思い出す。

 わざわざ苦労してまで精霊を操ろうとする理由が、インティスにはよくわからないでいた。

 自分には剣があるから、余計そう思ってしまうのかもしれない。小さい頃から使っているので今も役に立っているのだが、何か一つできることをと考えて、魔法を選ぶ連中の多いこと。


「ごめんね、あたしが水の精霊で。ここは火山が近くて炎の精霊が強いから、みんな炎の魔法を使いたがるでしょ」

「別に、魔法を使いたくてライネといるわけじゃないし」


 魔法に対して素っ気なく返すのは、心底興味がない何よりの証拠だった。


「……ふふ」


 ライネはくすくす笑った。これが魔法を使いたがる人間だったら、どうしてお前は炎の精霊じゃないんだと何度も言われているだろう。

 けれどインティスはそもそも魔法に興味がなく、水がもたらすものを目当てにしているわけでもない。

 その関心のなさが、逆にライネにはいい居心地になっていた。だから彼と行動を共にしているのだ。

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