◆在るべきところへ◇1話◇予兆 ④
◆在るべきところへ◇1話◇予兆 ④
レイはフェレナードの様子で察すると、インティスにはわからない言葉で話し始めた。
「こちらの国の言葉は話しにくいでしょう。あなたの国の言葉でいいですよ」
「申し訳ありません、ありがとうございます。確かに、預かった伝言はカーリアンからです」
レイとフェレナードが流暢に会話を始めたと思うと、途端にインティスにはその内容がわからなくなってしまった。
「レイ、砂ミミズを捌いてくる」
「わかったよ、気をつけて」
レイはずっと自分と暮らしているのに、違う国の言葉を器用に喋るなと思いながら、インティスはもう一度村の外へ出て行った。
その後ろ姿を見送って、レイがフェレナードに視線を戻す。
「妹から伝言とは……魔法陣ですか?」
「はい、こちらです」
そう言うと、フェレナードは外套の下に背負っていた荷物から、ブーツほどの長さの筒を出した。
それを受け取ったレイが筒の蓋を開け、入っている紙を取り出してテーブルに広げる。
テーブル一面を覆うほどの紙には絵や文字が様々な書式で緻密に描かれていたが、少しするとその上に女性の姿が浮かび上がった。
金色の髪に青い目、誰からも美人として映る彼女は、目の前の賢者の妹で、フェレナードの魔法の師でもある。
「レイ、久し振り。インティスは元気?」
女性が声をかけても、かけられた彼は次の言葉を待ち、黙って幻を見つめていた。
女性も特にその仕草に反応しないことから、どうやらもたらされる情報は一方通行のようだ、とフェレナードは理解した。テーブルに広げられた魔法陣というものは、魔法を扱う人間の中では、フェレナードは彼女しか扱える人間を知らない。自分も彼女から魔法の類を教えられて研究はしているが、伝言として使われる機会はあまりないので珍しい。
女性の表情が一気に深刻そうになった。
「お願い、インティスにも関わることだから、これを聞いたら今すぐこっちに来て」
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