夏短編
@ryunen
ナゲット
ねえ、ナゲット食べる?
キッチンに明さんがいた。
油の揚がった、いい匂いがしてる。
そういえば、事件が起きてからもう2時間
ポテトもそのまんまに、殆ど何も食べてない。
もう夕飯の時間。お腹が空いている。
恵さんも、どうぞ。
もう、今日は人来れないから、まかないってことで。
じゃ、いただきます。
わたしもお腹空いて来ちゃった。
僕にも小皿にのせて差し出された。
お礼を言って、そのまま手で掴み、かじる。
カリッと揚げたて。
肉汁が出てくる、ちょっと熱すぎるぐらい。
一つ、口にいれると唾液が出てくる
いい材料ではないんだろうけど、
やっぱり出来立ては何でもうまいや。
一個食べたら、お腹がすいてきた。
ふたつ、みっつ、よっつと食べた。
明さん、それをにまにまと見つめてくる。
なにかついてますか?
うーん、君、おいしそうに食べるね。
なんか、母性が刺激されるかも。
おいしいです。
めっちゃおいしいってわけではないけど。
胃に食物が満たされるおいしさ。安心する。
明さんは手を伸ばしてくる、白くて綺麗な手のこう。
爪は暖色系でまとめて、グレー。そのままクルっと腕が回る。
若い肌の透明感に見とれる。綺麗。
320円。
一番食べた、流君のおごりね。
えっ、ちょっと待ってください、
吐き出します。
うそうそ、あはっ、吐き出すってなに。
おかしいね。恵さんが気に入るわけだ。
明さん、ブチギレてるのは見てたけど、
こんな気さくに笑うんだ。ちょっとドキドキする。
なに、見つめて。
わたしにも、ついてたりする?
もしかして
ナゲットの、殻とか。
わたしも320円払えないから、
吐き出さないと。あっは、流君みたいに。
そんなに笑わなくても。
やっぱ苦手だ。
ねぇ、家来ても吐き出したりしないでね?
恵さん、ほんとに心配そうにしてる。
冗談ですよ。
ねね、じゃ家に来る?
うち、吐いてもいいよ、それに一人暮らし。
だから、二人っきりだよ。
320円払えない者同士帰ろっか。吐く時は外ね、あは。
めっちゃくちゃ行きたい。
やっぱり好きかも。
だめだめ、流君来るから用意してたの、
いらっしゃいのごちそうあるから、ダーメ!
恵さんちょっとムスッとしてる。
恋愛ゲームみたいには行かないな、明さんは諦めた。
緑川家に帰ります。
ごちそうにまけたか、やっぱり、
もうちょっと、胸大きくないと釣れないなあ。
鶏肉食べると、胸、大きくなるんだっけ。
ナゲットたべないと、あっは。
ごちそうさまでした。
明さんどうやらツボに入ってしまったみたいだ。
僕達は、キッチンを後にした。
夏短編 @ryunen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。夏短編 の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます