第3話 幼少期編3 不思議な光
生まれてからどれくらいたったのだろう?
相も変わらず、寝ておきて、乳を吸って、おしめを変えてもらう生活。
そんな生活のなかにも少しずつ変化が訪れていた。
寝返りを打てるようになった僕は、そのままハイハイ歩きに挑んだ。しばらくは難しかったが、じきにできるようになった。
この頃になるとなんとなく、母やメイドの話すことがわかるようになってきていた。といっても簡単な言葉しかわからないけど。まだ、話すのも難しい。
変わってるような変わってないような微妙な変化。
だけど3ヶ月前から明確にかわったことがある。
「グレイ」
聴き慣れた母の声。
母が僕を抱いた。金色の髪が肌を撫でて、少しくすぐったかった。
精神的にある程度成熟したはずなのに、この幼なげな母親に抱かれ、彼女の匂いに包まれるととても安心する。
それがなんとはなしに恥ずかしかった。赤子の本能のようなものなのだろうか?是非ともそうであって欲しいものだ。
心うちの葛藤をよそに、僕は母にねだるのだ。
いつかの夜。あの日から始まった習慣である。
「あー、うー」
「グレイは本当にこれが好きね」
呆れたように、されど慈しむように微笑んだ彼女はいつものごとく人差し指を天に向ける。
「*****、***」
すると、小さな花火が部屋を灯すのだ。
僕はそれを食い入るように見つめる。どうやってやってるんだろう。それが不思議でたまらなかった。
世界に溶けるように、光が消える。僕は母の手を掴んで彼女をみた。暖かく、細い手。されど、今の僕よりずっと大きな安心する手だ。
「うー、うー」
「ふふ、しょうがないわね」
母が微笑んで、もう一度指を天に掲げた。
その時だった。ピリッと体を電流が走ったような気がした。思わず瞬いたその瞬間。
――母の体を真っ白な光が包んだ。
白色の光は母の体を伝って、彼女の指の先へと集まっていく。
「*****、***」
母の言葉に呼応して、光が大きく膨れた。白色の光が、指先で円形に広がり、幾何学模様を象っていく。
それはまるで、魔法の陣のようで――。
花火が上がった。小さな小さな、僕の見慣れた花火。だけど、明らかに今までとは違うものが見えた。
今の真っ白な光は、魔法の陣は、何だったんだろう。
呆然としている僕に母が不思議そうな顔をした。
その後、何度かやってもらったけど、同じような光と幾何学模様は消えることがなかった。
この時を境に。僕の目には不思議な光が映るようになった。
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