星と煌めきの空
香坂
始まりの物語
第1話
それはとても美しい鳥だった。
夜空の星々を散りばめたような光り輝く羽。柔らかなそれは触れることを躊躇われるほどであり、目にした誰もが感嘆のため息を漏らすだろう。
しかし実際に漏らされたのは困惑をあらわにした声だった。
「死んでる……?」
少年は怖々手を伸ばした。鳥を触ったことがなく、手を伸ばしはするもののどうしたらいいのかわからない。ぐったりと横たわった鳥の周りを手が右往左往するばかりだ。
木々が生い茂る森の中に流れる川のせせらぎを聞きながら、持っていた釣り道具を置く。今日は釣りをしようと思っていた。いつも通り川へ向かうと対岸に何やら光るものを見つけたのだ。
夏の日差しが降り注ぐ日中に、川の水はさほど冷たくはないことを知っていた彼は、膝ほどの深さの川へ履き物のまま入ると、生暖かい感触をかき分けて進む。見つけたそれが鳥の形をしていることに気がついたのは、川をもうすぐ渡り切るところだった。
そろそろと指先だけで羽に触れてみる。柔らかさを想像したそれは触れている感覚がないほどに、ふんわりと彼の指をかすめた。
一度触れればあとは大丈夫と言わんばかりに、今度は手のひら全体で鳥の体を確かめ始める。どこか怪我をしていないか、そもそも生きているのか死んでいるのか、慎重に手を動かした。
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