第8話
「待っていたよ」
そこにいたのは、真っ赤な笠のキノコ、ベニテングタケだった。奥には、女王様が見える。
「キノコ者?」
「こちら側にも魔法使いは複数いる」
よく見ると、ベニテングタケの後ろに一人いた。何のまじないか、前脚をしきりに動かしている。あれが敵の魔法使いだろう。
「ミミズには参ったよ」
「あれで仕留められないのは誤算だった。魔法使いも巻き込まれてしまった」
「それで君が最後の砦というわけか。女王様を返してもらうよ」
女王様の前には数人の兵隊がいたが、特別強そうというわけではない。ベニテングダケを倒せれば、後はなんとかなるだろう。
「おいらに任せて」
スターが前に出て、ひらひらと回転した。幾筋もの白い光が飛び出して、ベニテングタケに向かっていく。ただ、いつもよりもその勢いは弱々しかった。
「こんなものか」
ベニテングタケは、ふうっと息をふいた。光が霧散していく。
「魔法、使い切っちまったかも……」
ここまでスターには負担をかけてしまった。魔力も大量に消費したはずだ。しかしこうなると、こちらには攻撃する術がない。
「突撃しよう」
ウズラが盾を構えて、姿勢を低くした。そのまま突っ込むつもりなのか。あまりにも無謀だ。
「時間を稼いでくれ。頼めるか」
「もちろん」
「スターは休んで少しでも回復して」
「わかったぜ」
ベニテングタケが、こちらに向かってくる。両手から、黒い霧のようなものが生じる。魔法かと思ったが、どうも違う。
「毒だ!」
ウズラが盾を押し出す。投げられた一つ目の黒い霧が、はじき返された。しかし二つ目は、天井に当てられた。跳ね返ってきた霧が、ウズラの頭上を押そう。
「うわああっ」
叫びたかった。助けたかった。けれども僕には、すべきことがあった。
「ウズラ……耐えてくれ……」
スターも歯を食いしばりながら見守っていた。
「キノコに毒はつきものだよ。ボクだって耐えられる!」
タマゴタケは見た目に反して毒がない。それでもウズラは自らを奮い立たせ、ふらふらになりながらベニテングタケに突っ込んでいった。
「すまない。俺は回復は無理だわ」
そして、スターもそれを追って走った。魔法の使えない彼には、特別な攻撃手段はない。それでも、向かっていった。
「すまない……二人とも……」
ベニテングタケは、二人をなぎ倒した。力も強いようだった。
万策尽きた、と相手には思われたかもしれない。
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