長万部 三郎太

奇跡が起きて

2022年のどこかの街、

どこかの飲み屋。



「ゴホッ、ゴホッ……」


「なんだおめぇ、風邪か?」


「いや違うんだ、久々に昨日観戦したんだ」


「……感染した?」


「声は出してねぇんだが、人混みでやられたのかな」


「今朝電話したときには、打ったって言ってただろ?」


「ああ、長打が出てな。3回打った」


「さすがに3回目ともなると長蛇ができるか。で、咳はどんなだ?」


「席? さすがにガラガラだったよ」


「おい、おめぇ今日は無理して喋らなくていいぞ」


「いやいや、昨日は熱かったんだ。

 正直、もうダメだと思ったけど奇跡が起きてさぁ」


「ええっ、飲み会に来てる場合じゃないだろ??」


「久々に会ったのに、冷たい奴だな……」


「お前こそ出歩いていい状況じゃないだろう!?」


「……あ、注文いいですか? えーっとコロナビール」

「俺もそれで」


「で、今は体調大丈夫なの?」


「うん、いいけどなんで??」





(嘘実話シリーズ 『渦』おわり)

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長万部 三郎太 @Myslee_Noface

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