第5話 主要キャラを支えるサブキャラクターを考えよう!〈キャラクターづくり③〉
みなさま進捗どうですか?
私は芳しくありません。
みなさまお疲れ様です。電気石八生と申します。
キャラクターづくりもいよいよクライマックス!
彼らがいれば10万字相当の物語を動かすには困らない、という“あと4人”を設定して参ります。
【編集者岡田の一言メモ】
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キャラクターは物語を動かしていく大事な存在です。物語に合わせて配置していくことで、彼らのもつ役割が見えてきます。ここでは「神話の法則」に合わせた「キャラクターアーク」で、その役割を見ていってみましょう。
主人公・鷹羽 → 英雄
相棒・御郎 → 相棒・仲間・語り部
はな → ヒロイン・賢者・変身する者
主要キャラクターはこのように配置されるでしょう。ここに、サブキャラクターも加わっていきます。
菖蒲 → トリックスター・ライバル
ちよ → 使者・トリックスター
鼠窮/きぬ → 老賢者・影
それぞれのキャラクターがもつ、ストーリーを動かす要素についても注目していきましょう。
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初手は鷹羽と御郎の後輩キャラをもうひとり。
●
女形の修行をしていた元役者。いわゆる男の娘。一座が解散してしまったところで江戸ホストの噂を聞いて町へやってくる。女形をやっており、見目も所作も女の子のようで可愛いが、本人は男の中の男に憧れている。御郎の相棒役として穏やかで思慮深い言動を取るが、たまに男らしさを取り違えて素っ頓狂になる。
男っぽさとは対極のキャラクターとなります。
言ってみれば”男の娘”なわけですが、女形はなにせ江戸の華ですし、アイドル化が進むホストの現状を映す人物像にも当てはまるので、おもしろいかなと。
物語的には、男らしくなりたい気持ちと有り様のギャップで事件を起こすこともあり。エピソード的にもメリハリがつけられる(書き手側として)利点がありますね。
続いて、江戸ホストを取り巻く人々。
●ちよ
おはなの家の女中。地味で目立たないが、時折おかしなことを高速で語り出す悪癖(オタムーブ)がある。鷹羽に「江戸ホスト」を提案するのが彼女。実は江戸へトリップした現代人OLで、結構深刻な地下系ドルオタだった。追いかけていた地下ドルがホストになったことから、少々ホスト業界にも詳しい。
読者が共感できる現代人目線がひとつ欲しいなということで設定したキャラクターです。
地下地上問わず、芸能界でどうしても芽が出ずにホスト業界へ踏み込むイケメンは稀有ではありません。
そのあたりの知識を元に、江戸ホストの形を作る伝道師になってもらうのと同時、「会いに行けるアイドル=ホスト」が演じる擬似的なそれとは別角度からの恋愛劇で活躍してもらいたい意図を込めてあります。
――なのですが。
このままだと弱いというか、ご都合主義的な気がしています。
最初は『スー女(相撲好き女子)で歴女』の設定もしていたのですが、あまりにご都合が過ぎるのでカットしたのですよね。
うーん、悩ましい。
●
新進気鋭の戯作者。雅号に反して丸々太った禿頭の小男(医者に間違われることも)。自分の創作のための取材として鷹羽のもとに通う。人当たりがよく、大らかな性格だが、商売となれば容赦なく利益を追求する。御郎の弱さを指摘し、先へ導く導師的な存在。
●きぬ
声色師を名乗る娘で、鼠窮の相棒。声真似ではなく、様々な役柄を演じ分けて物語を語る、言わば声優である。サバサバとした姉御肌で、切れ長の目が特徴的な美人だが、くせっ毛であることがコンプレックス。江戸ホストの話を演じ、江戸の娘たちに伝える広告塔役となる。
こちらのふたりは主に江戸ホストを外側から支えるキャラで、鷹羽やクラブへ絡みつつも、向こう見ずな御郎を抑える情理、ぐじぐじしがちな菖蒲をすぱんと蹴りつける原動力として機能します。
元々別に考えている作品のキャラなのですが、出し惜しみするよりそれはそれとして使ってみようということで引っ張ってきました。どちらも職業が引きになる特徴的な人物ですしね。
特徴的と言えば。
おきぬさんは声色師という、江戸ホスト同様この時代になかった職業をしてもらっています。
最初の発想は、日本特有の声優文化を江戸に引き込んだらおもしろいのでは? でした。
こいつは斬新だぜぇと自画自賛したものですが、実は江戸時代、素浄瑠璃(すじょうるり)という、人形を用いず太夫(物語の語り手)と三味線で行う浄瑠璃が存在します。もちろん現在も技が引き継がれ、上演されていますよ。
また、声色屋などと言われる、言わばモノマネ系の方々もいました。歌舞伎役者のマネや、ひとりで相撲の取り組み(当時の女性は相撲観戦を禁じられていましたので、そうした需要があったのです)を演じるのが定番です。
もちろん講談や落語もありますので、こうしてみると声色というジャンル、日本の伝統芸ですねぇ。
……独自性の難しさを痛感するわけですけども、ともあれ純粋な演技を聞かせるものとしています。
これで作品の初期に置くべき7人が決まりました。
本来は江戸ホスト側に“モテたくてホストを志す優男”、“見目はいいが相当な小男”を置きたい気持ちはあったのですが、商売が成り立ってからのほうが動機づけが明確になるかということでやめています。
そんな小話はともあれ、キャラクターづくりで注意したのは、創作術から学んだ「キャラクターの人間性(魅力)を深めるもの」を盛り込むことです。
キャラクターは物語の中で最重要だとする創作術の本は多くあります。私自身も賞の応募作を拝見する際、設定(ネタ)と同じく最重要視する項目ですので、その目にかなうよう考えたつもりなのですが。
それも結局は書く側の思惑、言ってしまえば「これでよかろう」という皮算用に過ぎません。
なにせこの企画は新人賞を受賞できる作品を実際作ってみようという代物ですからね。この程度じゃあ弱すぎるってもんです。
ですので一端、海千山千の敏腕編集者へ預け、その意見を踏まえた決定稿を次回、ご披露したく思います。
キャラクターがどのように整理され、変化するか? あるいは省かれたり加えられたりするか? それを見ていただくのは書き手としての恥を晒すことと同義であるものかと思いますが、赤裸々でなければ参考になりませんものね。私も覚悟を決めて参りますよ。
それではよろしくお願いいたしますー。
【編集者岡田の一言メモ】
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キャラクターは物語の中で、作者から役割を与えられているわけですが、記号的になってはいけません。「生きているキャラ」「キャラが立っている」というふうに感じさせたいなら、サブキャラクターでも「物語の主人公になれる」ポテンシャルを持たせたほうがよいと感じます。それをふまえると、ここにいる4人のサブキャラは、全員が主人公になれるのではないでしょうか。
とはいえ、ポテンシャルがある分、扱い方には注意しなければならないでしょう。特に「ちよ」は、「彼女を語り部にして「江戸ホスト」を展開したほうがよいのでは?」と考えてしまいました。それほどに「実は現代人」は強い設定です。「ホストを江戸に持ち込む」の説得力を出すために、作者の都合で入り込んでしまった感が否めません。
物語の中に説得力を持たせるのは大事ですが、作者の都合をどこまで適用するかのバランスが難しいですね。ここで出てきたキャラクターたちも、プロットの内容次第で変っていくでしょう。
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