友達になりたい
「それ、五十内さんのことが気になってるとか、好きになったってことなんじゃない?」
「えっ!? 女の子同士だよ!?」
「いや今時普通だよ。同性でも好きになるときもあるって」
「そういう事もあるの?」
「そういう事もあるの。なんなら私の姉ちゃん最近女の人と付き合いはじめたって話してたし」
五十内さんと出会った次の日の朝、友人の
「話を聞く限り時雨は五十内さんと仲良くなりたいと思ってるんでしょ?」
「うん」
「それで五十内さんの事を考えると胸がドキドキするようになったと」
「うん」
「多分時雨は恋愛経験が少ないからわからないのだろうけど、やっぱり五十内さんに恋しちゃったと思うんだ。時雨は中学時代友達多かったらしいし、高校でももう友達結構作ってるけど今まで友達にドキドキしたことあった?」
「……言われてみれば無い……。じゃあ私は五十内さんが恋愛的に好きってことになるのかな……」
「少なくとも恋愛的に気になってるってところまでは行ってるだろうね。これは確実だと思う」
そうなんだ……でもこういうときどうすればいいのか私にはわからない。楓華ちゃんに聞いてみることにする。
「それで……こうなった時ってどうすればいいの……?」
「んー……とりあえず友達からってのがいいと思うよ。すぐに告白するってのは五十内さんも困ると思うし。あ、ちなみに五十内さんは四組だったはず。綺麗な子がいるって誰かが話題にしてた。」
「ありがとう楓華ちゃん……あれ、でも別のクラスだし今すぐ友達になるのはちょっと時間かかるかもなぁ……」
「あー確かに。時雨は友達作るの上手いみたいだけど昨日初めて会ったばかりの別クラスの人だからねぇ……あ、でも」
「何かいい案あるの?」
「勇気を出して連絡先交換してみたら? 会話できる機会を増やせば時雨ならきっとすぐに仲良くなれると思う」
楓華ちゃんの言う事に納得する。スマートフォンを貰ったのが高校入学時だったので思いつかなかった。まだ話を聞きたかったが、朝の予鈴が鳴ってしまう。
「あ、ホームルーム始まるし席戻らないと……じゃあ、頑張ってねー」
そう言って楓華ちゃんは自分の席に戻って行った。善は急げと言うし、早速今日の昼休みのご飯食べ終わった時間帯あたりに四組に行ってみようかなと思った。
♢♢♢
昼休み。弁当を食べてやることもないので適当に勉強をしていたらクラスメートが二組の女の子が私に用があるらしくて来てると言われた。誰だろうと四組前の廊下に向かったら昨日私を助けてくれた霜里さんがいた。
「あ、五十内さん。こんにちは……」
「こんにちは、霜里さん。昨日はありがとう。それで今日はどうしたの」
「あ、あの……えっと……」
「……、……」
何か言いづらい事なのだろうか、彼女はかなり言い淀んでいる。
「とりあえず場所変える? 人少ない所行こうか?」
「あ、いや大丈夫。それで要件なんだけど……私と友達になってほしいです!!!」
友達。人付き合いは大変だろうが、霜里さんは根っからの善人だし、彼女が時を止められる事にも興味がある。流石に友達が全くいないというのもこの先大変だろうから、私は時雨と友達になってみようかなと思った。同じクラスじゃなくて、別のクラスの子だけど。
「まぁ……うんいいけど……クラス違うし連絡先とかもよければ交換しようか?」
「……! うん! ありがとう!」
彼女は屈託ない笑顔でそう返し、スマホを取り出す。連絡先を交換したが、さっき妙に挙動不審だったのは何故だろうか。少々申し訳ないと思いながらもまた彼女の心を軽く覗いてみる。
(やった!大好きな五十内さんと友達になれた!)
心の中からそんな第一声が聞こえた後、読心を続ける。
ええええええぇぇぇ……私の知らない間にそういうことになってたのか。おのれ昨日の仮眠中の私。いやでも今更どうしようもないし、これからどうしようか……なんて考えてたら授業五分前の予鈴が鳴る。
「あ、授業始まるからまたね! 五十内さん!」
彼女は笑顔でそう言って二組に帰っていった。私もとりあえず戻って授業の準備しよう……
その日の夜、ゆっくりお風呂に入りながら今日の昼休みの事を考える。彼女はとりあえず友達付き合いから始めたいらしいし、彼女は恋愛経験がないらしく、本当は一時の勘違いで私の事が恋愛的に好きじゃない可能性もあるかもしれない。未来の事は未来の私に任せて、とりあえずは霜里さんと友人関係を築いていこうと頭の中で考えを纏めた。もしいつか告白された時は、告白された時の私に任せるしかないか。タイミングはある程度わかるだろうし。でもそれって、いつになるんだろう。
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