カノジョが寝取られているのを知った俺、学年一の美少女とエッチする

さい

第1話

 たまたまだった。

 もしも見なくていいのだったら見たくなかった。

 ずっと知らずに幸せにいたかった。

 まるで天から地に叩きつけられたような感触に落ちてしまった。

 それは高校二年生の五月下旬の放課後のことだった。


「ここじゃダメだよ……」

「うるせえ、こういうところの方がスリルがあって気持ちいいんだよ」

「バレたら……」

「そいつも混ぜればいいだろ、穴二つあるじゃねえかよ」

「……意地悪っ」


 俺、桐谷慎太郎はふと立ち寄った男子トイレからそんな声が聞こえたのだ。


 ……うわ、最悪だ。

 変なタイミングで来てしまった。

 他のトイレに行くとするか。


「ほらほら脱げよ……。しっかし彼氏がいるのに俺とヤるとかお前最低だよなあ」

「先輩が言ってきたじゃん」

「まあ、そうだけどよお? あっ、やべゴム忘れたわ……」

「えっ!?」


 NTRかよ。

 一番最悪重なシチュエーションに出くわしたな。


 そんな思いと同時に。


 女の方、聞き覚えがある声な気がするのだが。

 気のせいか?


「悪い悪い、まあ生で」

「ダメ、万が一があったらさ」

「しっかり外で出すしよ? 安心してくれ」

「仕方ないなあ〜」


 聞き覚えがあるとかのレベルじゃない。


 違う、そんなはずないだろ。


 唾を飲み込む。

 冷や汗が流れる。

 はあはあと息が荒れる。


 違うだろ、違うに決まっている。


「んじゃあ、挿れますか〜」

「痛いから濡らしてからにしてよ〜」


 なんでだよ、なんで彩花の声がするんだよ!  

 似てるだけだよな? そうだよな?


 桜木彩花、幼馴染であり中学二年生から三年間付き合っている恋人だ。

 

 俺は最低だ声が似ているからって勝手にそうだと思ってしまうのだ。

 それに似ているだけなのに。


 喘ぎ声が聞こえる。


 彩花の淫乱な姿を想像してしまう自分がいるのだ。

 

 俺は慌てて開いていた個室に飛び込み鍵をしてズボンを脱ぎ座る。


「おい、誰かきたぜ」

「一旦……や、やめて……」

「……うるせえ、おい誰だよ。混ざるかあ?」


 …………。


 混ざりたい、まだ行為どころかキスすら俺は彩花としたことがないのだ。

 シたいに決まっているだろ。


「無視かよ、せっかく彩花のは国宝級なのになあ〜」

「ちょっ……な、……な、名前は言わないで……よ?」


 ああ、本当にそうなのか。

 そうだよな、こんなに同じ声なんてあるはずないもんな。

 

「クハハハ、すまんすまん。まあいいじゃねえかよ」


 耳を塞ぐ、けれど聞こえてくる彩花の声。


 やめてくれ……。

 やめてくれ………。

 やめてくれ…………。

 やめてくれ……………。

 やめてくれ………………。

 やめてくれ…………………。

 やめてくれ……………………。

 やめてくれ………………………。

 やめてくれ…………………………。

 やめてくれ……………………………。

 やめてくれ………………………………。

 やめてくれ…………………………………。

 やめてくれ……………………………………。

 やめてくれ………………………………………。

 やめてくれ…………………………………………。

 やめてくれ。


 目からは勢いよく溢れ出す大粒の涙たち。

 鼻からは鼻水が流れ出し口がしょっぱくなる。


 ふと彩花との思い出が頭の中に走馬灯のように流れ出す。

 夢のような時間が次から次へと流れていく。


 あの日の、大好き、は。

 嘘だったのかよ。


「シンタローのこと好きだけどやっぱり、身体だけなら先輩の方が好きいいいいいいい──っ!」

「俺も彩花の身体、好きだぜ」


 何も考えられない、恨みとか憎しみとかそんな感情が絶望によって消えていく。

 ただただ身体がどんよりと重くなるだけだ。


 数分が経つと鍵が開く音がして二人がさっていく。


 彩花、行かないでくれ。


 なんでトイレなんて来てしまったんだ。


 俺は下腹部に手をやり。


「ああああああああああああああああああ──!」と喉が焼けるほど思いっきり叫んだ。

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