第2話「勉強が好きなのかな・友達なのかな」
「キンペー!」「キンペー!」
「はーい、今の僅差でアタシー」
「えー、マナのがちょっと早かったよぉ! ――ミナぁ、判定ぃ!」
「さあ。モモナっしょ」
「スマホいじっててテキトーだよぉ! なに見てんのぉ、見せてぇ――と見せかけてえいっ!」
「ジョンウン!」「ジョ、ジョンウン!」
転校翌週、昼休み。さっきから2ギャルが隣国の元首を男友達みたいに呼び捨ててる……。なんか謎の・最近のパーティーゲームで、山札からカードをめくり合って名前つけてどうとか。……でもなんで国家主席に総書記なんだ。ほかにもジョーとかウラジミールとか言ってるけど。
「…………」
こうして黙って机に突っ伏してると、みんなまあうるさい。
このクラスの代表格3ギャル2チャラは当然として、3軍のソシャゲ勢も割とにぎやか。同じ3軍でも女子のほうは僕並に空気、2軍は男女とも準1軍といっていい2軍+が元気。
土日をまたいで転校生フィーバーはもう終わった。右隣の東くんだけまだ話しかけてくれる。東くんは2軍-で3人グループ。僕のことを仲間にしたがってるような気がしないでもない。けど悪いけど友達は要らないんだ。せっかくだけど・すぐ横だけど昼ごはんも一緒に食べない。
僕以外に男子のぼっちはいなかった。だけど女子のぼっちはひとりだけいた――すぐ横に。窓際美人さん、巡条花恋さん。ルックスでいえば確実に1軍なのに、どこの軍にも入ってない。休み時間は黙々と自習かなにかしてる。この長い昼休みもこの次の眠たい5時間目終わりも。
「…………」
できることならこんなむなしい寝たふりじゃなくて、綺麗な・熱心な横顔を眺めてたい……。
授業中は隙が・暇があればチラチラ見てしまう。3ギャルに言わせれば『きもぉい』だけど。毛先でまとめた髪は左に流してるから顔がよく見えて、口の端のほくろも僕(右)側にあって。色は白くて・頬は丸くて・瞳は大きくて、鼻の頭・唇・顎先で直線が引ける。美顔の証拠だ。
「…………」
勉強が好きなのかな・友達なのかな。まさか才色兼備すぎてソロなのかな・エロなのかな。
誰にでも絡むし3ギャルにはよく絡む前隣の前田(2チャラのひとり)さえ相手にしない。いじめられてはいないはずだけど、みんなも巡条さん自身も互いに避けてるような感じがする。彼女には妙な違和感・存在感があって、誰もが頭の片隅に意識してる――そんなふうに窺えた。
「…………」
ぼっちは苦じゃない、退屈が楽じゃない……。
◎
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます