第107話 これがキーアイテム???

黒の塔を順調に攻略していくユウキ達。塔の中が予想以上に広く、探索するのに時間はかかっているが、特に苦戦することなく、魔物は倒せているし、宿泊アイテムのコテージは99個そろえているから準備も万端だった。


そして、7階を探索している時にそれは起こった。塔の中の一つの部屋の中で宝箱を発見した。


そこまでは今までと同じだったが、その宝箱には白い羽が生えており、宙に浮いていたのだ。


「ねぇユウキ?あれって宝箱よね?」


「そうだな。羽が生えてるし、宙に浮いているけど宝箱だな。」


(いかにもキーアイテムが入ってます。って感じの宝箱だな。だけどどうしたらいいんだ?普通に捕まえて開ければいいのか?)


「捕まえればいいんだろ?アタシにまかせてよ。」


ニーチェが空飛ぶ宝箱に近づこうとすると、近づいた分だけ宝箱は離れていった。


「なっ!?あの宝箱、近づくと逃げていくぞ。」


「ニーチェ待て!とりあえず鑑定してみてくれ。むやみに追いかけるとそのまま逃げられて中のアイテムが取れないかもしれない。」


「ん。わかったよ。」


ニーチェは空飛ぶ宝箱を鑑定した。


【名前】空飛ぶ宝箱アルファ

【特徴】重要なアイテムが確定で入ってる宝箱。近づくと逃げる為、入手難易度は高い。小さなメダルが大好きなので、小さなメダルを床に置いて近づいた所を捕まえるのが一般的な宝箱の開け方。


「わかったよ。マスター。小さなメダルを床に置けばあの宝箱は近づいてくるらしい。」


(小さなメダルはここで使うのか。いやでもそれならここまででけっこうなメダルを手に入れたぞ?そんなに使うとは思えないからやっぱりどこぞの王様が集めてる線が濃厚だよな。宝箱に取られないよな?メダルってけっこう集めるの大変だから1枚でも貴重なんだけど・・・)


ユウキはしぶしぶ小さなメダルを袋から出して、床に置いた。


すると・・・


離れていった空飛ぶ宝箱は小さなメダルを見つけてユウキ達がすぐ傍にいるにもかかわらず、小さなメダルに近づいてきた。


空飛ぶ宝箱は小さなメダルを見つけると、羽と思っていたモノが小さなメダルを掴み、両手で前に掲げていた。


「あれって羽じゃなくて手だったのか?で、今は見つけた小さなメダルを目の前で眺めてるって感じなのか?てかどこに目があるんだ?」


「そんな事より、今のうちに宝箱を捕まえましょ。」


ジュリアは小さなメダルを眺める宝箱を捕まえた。すると、開けることなく、宝箱は自動で口を開いた。中身を吐き出した空飛び宝箱は、小さなメダルを握ったまま、空をふらふら飛んで離れていった。


「ああ~。俺の小さなメダルが・・・」


遠ざかる空飛ぶ宝箱に向かって、ユウキが呟いた。

小さなメダルが1枚なくなったことにショックを受けていた。


「いいじゃない。メダルの1枚や2枚ぐらい。何に使うかもわからないのに。それよりもあの宝箱に入ってたモノなんだけど・・・」


(小さなメダルはきっとどこぞの王様が珍しいアイテムと交換してくれるはずだ。いやそれより宝箱の中身は何だったんだ?キーアイテムってなんだ?)


ユウキはジュリアが持つアイテムを確認した。


それは・・・



白いドラゴンが映る写真だった。


「えっ!?写真?」


「ええ。この写真が入ってたの。これって地下にいたホーリードラゴンよね?」


「ああ。」


(なんだこれ?写真?ダークドラゴンの前に出せば、興味を引いてその隙に攻撃しろって事か?これがキーアイテム?)


ユウキは写真を鑑定した。


【名前】ホーリードラゴンのプロマイド

【特徴】ドラゴン界のアイドル、ホーリードラゴンのプロマイド。入手困難の激レアアイテム。


※よくわかったわね。そうよ。このアイテムをダークドラゴンの前に出せば、ダークドラゴンの気が逸れるわ。その隙に攻撃すればダークドラゴンなんてただの蜥蜴と一緒だわ。でもまあ必ず使わないといけないって訳じゃないから、ユウキがほしいなら持っていてもいいわよ。激レアで非売品だからもう二度と手に入らないわよ。


ユウキは鑑定結果を全員に伝える。


「ホーリードラゴンってドラゴン界のアイドルなんですね?」


「そうみたいだな。というかドラゴン界なんてあるのか?そっちの方が興味あるけど・・・」


「まあこの写真はユウキに渡しておくわ。使うかどうかはユウキが決めて。」


「ああ。」


(ドラゴンの写真なんかもらっても・・・。そもそも性別すらわからないし。たしかに白いドラゴンは綺麗だけど、どっちかっていうと、ドラゴンだからカッコいいって印象なんだよな。それに使っても効果ないなら持っててもしょうがないし・・・。)


「もしかしてその写真があればダークドラゴンも仲間になったりしてね。」


「それはないだろ?写真なんかなくても本人捕まえてるんだから。」


「それもそうね。ホーリードラゴンを何日も待たせるのもかわいそうだし、最上階を目指しましょ。」


入手したキーアイテム。ホーリードラゴンのプロマイドの事は一旦忘れて、ユウキ達は最上階を目指して攻略を再開した。そして、ようやく最上階にたどりついたのだった。


ちなみに、ホーリードラゴンのプロマイド以外のキーアイテムは見つからなかった。空飛ぶ宝箱が見つからなかった事にユウキ以外は残念そうにしていたが、ユウキは小さなメダルが減らなかった事に安堵していた。





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