第26話 何故、亜神に?

魔王討伐から2ヶ月が経った。この間にアステルト・フィルハーリが行方を眩ませて問題となったが、1か月後に大荷物を担いで帰って来た事で何とか事態は収まった。彼に対する現実改変も魔法の効果を無効化されて、かなり焦ったが。

そんな騒動もあって、今日がシルレーナ嬢との初デートの日となった。


デートはとても順調であった。だが、帰りの馬車の扉が閉められた瞬間に彼女の纏う空気が変わった。

「貴方はこの世界にどんな価値を見出していますか?」

喋り方まで変わっている。

「・・・・・・」

「貴方がこの世界に実験場以上の価値を見出せずに、ただこの世界にある無数の命を見捨る罪悪感から逃れる為に亜神になるのなら、私は貴方について行く事は出来ません。そうであるなら貴方はいずれ世界をないがしろにするでしょうから。むしろ、貴方が亜神になる事を止めなければならなくなるでしょう。」

相当な覚悟を持っての質問だ。こちらも全てを話す事にしよう。

「信じても、信じなくてもどちらも構いませんが、私はここより発展して平和な別の世界で人生を歩んでいました。しかし、神によって実験台に選ばれた瞬間に一度目の人生を終えて、この世界にやってきました。シルレーナ嬢は神からこの世界が実験場であり実験を終えた事だけを伝えられたようですが、その実験の内容は、前世の記憶を引き継いだまま別世界に魂を移動させられるかどうかを実際に確かめるものだったのです。各世界の発展を促すために世界間の交流をさせる事を目的とした実験の一環として実施されたようです。」

一息ついて、

「神々は世界の管理が面倒くさくなってきたらしいです。そして、その神々がこの世界を捨てる事を決めました。規模が違い過ぎて、人の命などそこらの塵芥に等しいのでしょう。だからこそ必要だと思いました。神と人との間に挟まる存在が。私はこの世界が神と人を繋ぐ架け橋だと思っています。」

(人間視点で)無責任な神に腹が立ったために、神々の支配から少しでも脱却したい事も理由(6割)であったが言わぬが花というものだろう。何せ根底にあるのは怒りなのだから。

「そうですか。、、、着いたようね。今日はありがとう。楽しかったわ。」

「こちらこそ。付き合ってくれてありがとう。」

結局のところ、さっきの回答が合格だったかは分からなかった。その不安が表情に出ていたからだろうか

「ああそれと、これからもよろしくお願いね。」

と優しい笑顔でそう言われるのだった。


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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。



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