第23話 神の慈愛またの名をご都合展開(アステルト視点)
仕事を抜け出す回数が日に日に増えている。それほどまでに、彼女に会いたい自分が居た事に驚いている。しかし冷静に考えると、彼女視点では少し優しくしたら惚れられたという事になる。その上、生きる時間も違うときた。
「、、、会ってどうするんだ?」
最低でも、自分も超常の存在にならなければ意識さえしてもらえない。今までの自分の考えの甘さを自覚させられた。
それからは兎に角、超常の存在に至る方法を調べた。記録に残る限りでは二つの方法があるらしい。まずは、魔女の弟子になる事。これは一番の近道だが、そもそも魔女に会える事など非常に稀で現実的ではない。二つ目は、秘境の奥地での神の試練に受かる事らしい。原初の魔女が魔女になった方法で、本人がその方法を広めたらしい。勿論そんな話を聞いた人間はその秘境の奥地を訪れようとするが、独自の進化をした動物達を前に手も足も出なかった。入った者で生還した者は今の今まで誰もいないらしい。そんな事実を知ってなお、諦めきれない自分がいる。ゼロに等しい確率に全てをベットしようと思ってしまう。我ながら狂っている。
真夜中、家から抜け出す。この数か月、読心魔法を駆使して準備を進めてきた。家族からの心配も何もかも承知の上で秘境に向かう。
「ここか」
明らかに異質な空気が身を包む。読心魔法を発動し動物が感じている事を読み取る。そうして、縄張りや力関係を頭に詰め込む。戦闘になった瞬間死が確定するため、ゆっくり時間をかけて進んでいく。
「ハア、、ハァ」
常に動物達の様子を窺う必要があるため、消耗が激しい。一睡の暇さえ命取りなのだ。入ってから3日目にして、限界を感じつつあるがそれでも歩き続ける。
「ハハ、、嘘だろ。」
そして見てしまった。立派な神殿とその前に佇立する巨大な熊を。アレこそが何人もの人が帰らぬ人となった原因だろう。こちらがアレの存在を確認できた以上、あちらも自分を認識しているはずだが、ただただ佇立するだけである。
「脅威にすらならないか。」
振る舞いを見ただけでも、自然を超越した存在であることが分かる。しかし、だからこそ出来る賭けもある。
熊を挟むようにして神殿の入口の前に立つ。そして、予備のナイフを投げると同時に読心魔法を発動する。熊はナイフを弾きながら突進してくる。熊が攻撃に入る前に前転する。瞬間自分の立っていた空間が鋭利な爪によって抉られた。背後に回った瞬間に読心魔法で次の行動を読み取る。
(裏拳か)
タイミングを見計らい、拳の甲を、真後ろに飛びながらナイフで受ける。そんな事をすれば吹っ飛ばされるがそれでいい。自分の後ろには神殿の入口があるのだから。
「ガッ、、、ガハァッ、、、、」
ドアを突き破り、壁と衝突し、吐血する。痛みを堪えながらドアの方を見る。
(はは、賭けに勝ったか)
神の領域たる神殿には、縄張り的な意味で入らない事に賭けたのだ。
(それとも神の慈愛か?まあどちらでも良いが。)
そんな事を考えていると突如白い光に包まれた。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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